現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
町の川の小さなドラマと思い出の話 2005年11月11日(金)
2005年11月12日 (土) | 編集 |
川原の小さなドラマ

Canon EOS D30+SIGMA28-80mm(f3.5-5.6), f5.6, 1/90s(絞り優先)


 ふらりと川原へおりてみると、そこにはいろんな人がや生き物を見ることができる。写真のように、MBXでパフォーマンスの練習をする少年、ベビーカーの小さい子供に話しかける若いお母さん、カメラを持ってうろつく男(私のこと)、泳ぐカモに飛ぶコサギ。他にも、学校の部活でランニングさせられてる学生、サッカー練習の親子、歩くおじさんに走るおじさんに寝るおじさんなど、夕暮れ時はとくににぎやかだ。
 とても身近なのに縁のない人にとってはまったく縁のない町中の川。犬を飼ってたり、ジョガーだったりしなければほとんど訪れることもないだろう。通勤通学で橋を毎日のように往復していても、わざわざ用もなく川原まで降りていくことはあまりないんじゃないだろうか。
 私も最近写真を撮るようになって出向くようになったけど、釣りをしていた小学生以来、長い間川とは無縁の生活を送っていた。

 川原には小さなドラマチックがいくつも転がっている。それは橋の上からでは見えないものだ。
 作業着姿のおじさんが川べりに体操座りをして遠くを眺めていたり、橋の欄干にもたれておばさまがハーモニカを吹いてたり、メガネをかけた小さな女の子が食パンの耳をハトにあげてたり、スーツ姿のサラリーマン風の若い男が橋の上から下をじっと眺めていたりして、人間模様の断片を見せてくれる。
 海ほどではないにしろ、川には人を少しだけセンチメンタルな気持ちにさせる力があるのかもしれない。汚れた川でも、町中よりはマイナスイオンがたくさんあるだろうから、そのせいもあるのだろうか。

 川原の一番の思い出というと、高校生のときほんの短い間だけ流行った川原ゴルフが思い出される。お金がないからコースはもちろん、打ちっ放しさえ行けない私たちは、夏休みの早朝に毎日のように集まってゴルフをやっていた。
 最初はアイアン(鉄のクラブで100メートルとか150メートルしか飛ばないやつ)でおとなしく打っていたのだけど、ある日友達のテッチャンがおもむろにこんなことを言い出した。
「ドライバーで打ってみようかな」
 ドライバーってのはコースで最初に打つ一番よく飛ぶクラブだ。そして一番難しいクラブでもある。私はやめておいた方がいいだろうなと思いつつ、あえて忠告はしなかった。
 4度、5度と入念に素振りをしたあと、テッチャンは思い切りよくフルスイング。
 真っ直ぐ飛び出した球は、途中で気分を変えたのか、右へ大きく曲がり、200メートルほど先で「パシッ」という軽快な音を残し、いずこかに消えた。
 しばしの沈黙の後、「ヤバイ」と言い残して駆け出すテッチャン、それを追う私。
 土手を上り、そこで私たちが見たものは、綺麗に丸く穴の開いた民家の窓ガラスだった。
 顔を見合わせて約3秒。最初に言葉を発したのは私だったかテッチャンだったか。
「逃げる?」
「うん」
 逃げ出すふたり。青ざめるテッチャンと、笑う私。
 逃げるが勝ちと昔の人も言っている。

 次の日、遠くから様子を眺めに行ってみると、窓は白い段ボールで応急処置が施されていた。あれは笑った。
 って、笑い事じゃない。ただ、少なくとも、部屋で寝てる人の頭をかち割ったのではなさそうだったことにふたりは大いに安堵したのだった。
 そのことがあってゴルフはしばらく自主封印という形になり、そのまま川原ゴルフ・ブームは去ることになる。
 しかしそれくらいで懲りる私たちではなく、今度はゴルフコース早朝忍び込みプレイがブームとなるのだが、それはまた別の話。

 町中の川は両岸をコンクリートで固められた風情のないものとなってしまったけど、川べりを歩いてみると思いがけないドラマに出会う楽しさがある。カメラを持っていれば、被写体もけっこう多い。
 もしかしたら、土手の向こうから金髪のお姉さん二人組がジョギングしてくるかもしれないし、たくさん人のいるところで大きな声で「さんねーん、びーくみー!」と叫でみれば、「きーんぱーちせんせーい」とこたえてくれる可能性がなくもない。
 もし誰もこたえてくれたなかったときは、川岸で平べったい石を拾って、肩が壊れるまで水切りをすると良いでしょう。目指せ、水切り世界記録の38ジャンプ。

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