
Canon EOS D30+SIGMA28-80mm(f3.5-5.6), f5.6, 0.7s(絞り優先/三脚)
生きているんだかいないんだか判断に悩む、去年買った苔玉。 おーい、生きてますかぁ? 買ってからほどなくして緑色から茶色に様変わりして、以来ずっとこんな感じが続いている。ときどき気まぐれに水をやったりしてるけど、さっぱり変化がないからまるで張り合いがない。これはやはり枯れてしまったと判断すべきか。 苔玉からニョキッと出てる葉っぱは、確か胡蝶蘭だったと思う。でも花はおろかつぼみさえ見たことがないので確信は持てない。一見元気に見えるかもしれないけど、これも新芽が出たと思うとすぐに力なく枯れてしまい、もう駄目なんだと思うとまた新しく出てくるというのを繰り返している。左奥の葉っぱはもう取れかけている。 根本的に何かが間違ってるような気がする。私の世話の仕方。
苔はたぶん世界のいろいろな場所に生えているのだと思うけど、わざわざ育てて愛でて喜んでるのは日本人くらいなんじゃないだろうか。それとも私が知らないだけで、世界苔愛好家協会なんてものがあって、毎年コンテストが開かれたりしてるのか? オー、イッツ・ア・トレメンダス・モス! などという会話が行き交うシーンが世界のどこかで展開されてるのかもしれない。苔のためなら金に糸目をつけないアラブの石油王だっていないとも限らない。 ……やっぱりいないかも。 日本人はいつから苔好きになったんだろう? 京都あたりの庭園を造った頃が始まりなのか、それとももっと古い歴史を持っているのか。 「君が代」で「さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで」と出てくるところをみると、思っている以上に昔から日本人は苔好きだった可能性はある。
日本人の美意識というのは世界的に見てとても変わっている。四季がはっきりしてるからというだけでは説明できない特異性があると思う。 花鳥風月に相当する言葉を持つ国はどれくらいあるんだろう? 季節の花や生き物たち、年中行事に風物詩、後付けのイベントなど、世界の中で日本人ほどみんなが集まって同じことをする国民はたぶん他にはない。 桜が咲けば花見をし、夏になれば潮干狩りや海水浴、花火を楽しみ、秋には紅葉を見に行く。冬はスキーやスケート、雪合戦。 忘年会に新年会、年賀状に成人式。 大晦日にお正月、節分、桃や端午の節句、七夕、盆踊りにお墓参り、十五夜のお月見。 それだけではまだ飽きたらず、クリスマスにバレンタインデー、ホワイトデー、母の日、父の日。文化祭に運動会に修学旅行。 とにかく年がら年中何かのイベントに浮かれてる国民と言えるだろう。そして、おそらくどの国の人よりも多くの自然や風習を愛でる習慣がある。なんて面白い国民性だろう。
私は国粋主義じゃないから、日本人が特別優れてるとは思わない。悪いところもたくさんある。ただ、いいところも間違いなくたくさんあるから、そういうところを積極的に見るようにして、自分もその部分で生きていきたいと思っている。占いのいいところだけ信じるみたいに。 日本に生まれて、日本人であることの楽しみを、斜に構えず、しらけて見せたりせず、みんなと一緒に喜び共有したい。 年と共に少しずついろんなものを愛せるようになってきたのが嬉しい。これからもひとつでも多く愛でるものを増やしていきたいと思う。
しかしこの苔、どうにかしてまたあの頃のような緑色にならないもんだろうか。やっぱり無理なのかな。白髪を染めるみたいに緑に染めるわけにもいかないし。 だとしたら、せめて胡蝶蘭だけでも見てみたい。えーと、最初あった茎がポキンと折れてしまったんだけど、あれってまた生えてきますか? と誰にともなく訊ねてみる。あれがないと花は咲きようがないと思うけどどうだろう。 きっと元気になるにはもっと応援が必要なはずだ。だから、太い声で「ランちゃーん!」と毎日声援を送ってみることにしよう。キャンディーズの親衛隊のように。

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