現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
猫は人のために、人は猫のために 2006年1月14日(土)
2006年01月15日 (日) | 編集 |
こりゃいい野良だ

Canon EOS D30+EF75-300mm(f4-5.6), f4.5, 1/90s(絞り優先)


 いい猫に出会った。天白公園の池のほとりでひなたぼっこをしていたこいつは、私の好みにぴったりだった。明るい茶色の毛並みにむくむくの体、そしてあくまでもどこまでも丸い顔。加えて口のまわりの泥棒メイクが最高のチャームポイントとなっている。ここさえ白かったら家猫になれたかもしれない。思わず笑ってしまった。写真を何度見ても笑える。表情がまたいい。
 この野良との出会いは、私をとても幸せな気分にさせてくれた。ありがとう。お礼にカリカリを投入だ、と思ったら人が歩いてきて逃げてしまった。また会いに行かなくては。

 天白公園はとても猫の多いところだ。市内の公園でも猫の多いところと少ないところというのが確かにある。すべての公園にもれなく猫がいるというわけではない。主な原因は、近所に猫好きで世話好きの人がいるかいないかだろう。もしくは、反対派の力が強くないところと言い換えてもいい。大都会の路地裏で生活してる猫なら残飯で生きていけても、郊外の街中ではそうはいかない。今どき小動物なんてそんなにいないから、人からメシをもらうしかない。もらえないところには居つかないし、もらえるところは増えていく。
 個人的には、猫は大好きだけど、あまりにもエサを与えすぎるのもどうかと思ったりもする。増えすぎた猫は必ずしも幸せな道をたどれないから。無責任に猫の世話をする人を非難する人の気持ちも分からないではない。ただ、基本的には野良くらいいてもいいじゃないかと私は思う。社会的にもそれくらいの気持ちの余裕があっていい。野良猫を外で飼っておく余裕もないようなぎりぎりの社会では寂しい。迷惑をかけるということにおいては、猫も犬も人間も他の動物も同じだ。社会生活の中で許し合っていくしかない。

 野良猫について書かれた内田百痢覆Δ舛世劼磴辰韻鵑汎匹燹J源化けしてないだろうか)の『ノラや』という本がある。とても悲しくて、笑えて、愛おしい作品なので、猫を大切に思うすべての人におすすめしたい。猫嫌いの人は受け付けないだろうけど、猫好きの人がこれを読めば、野良に対する思いはずっと深くなるんじゃないかと思う。
 作家内田百里70歳近いとき、親子猫がふらりと家に迷い込んできて、子猫を託して母猫は去ってしまう。偏屈じじいの百寮萓犬任呂△襪韻鼻△海譴呂修里泙泙砲靴討けないと、ノラと名づけて仕方なく世話をすることにした。そのノラが晴れた春の日、いつもとは違う方に走っていったかと思うとついに帰ってこなくなってしまった。それ以来、百寮萓犬詫茲詁も来る日もノラを探し回り、泣き暮れる日々を送ることになる。風呂にも入らず顔も洗わず、「迷猫」の新聞広告を打ち、折込チラシを配り、連絡があれば夜でも駆けつけてはがっかりして帰っていく。そんなめそめそした毎日を書いているだけの日記が何故これほどまで胸に迫り、悲しくも愛おしい気持ちになるかといえば、それはやはり内田百里箸い人の魅力に違いない。
 この本でしか百里里海箸鮹里蕕覆た佑蓮70の憐れな泣き虫じいさんにしか映らないかもしれないけど、作家百里鮹里訖佑砲箸辰討海痢悒離蕕筺戮枠鷯錣亡恭歓爾い發里ある。夏目漱石晩年の弟子で、芥川龍之介とは兄弟弟子で友達だった。非常に偏屈で頑固なじいさんで、家に訪ねていくと玄関にこんな貼り紙が貼ってあったという。
「世の中に 人の来るこそうれしけれ とはいふもののお前ではなし」
 家の中に入ると、戦後何年も経っているのに電灯に灯火管制の黒いカバーがかかっていたらしい。でも、その中で文鳥なんかをたくさん飼っていたというから、やはり生き物に対する細やかな愛情はあったのだろう。
 黒澤明監督の遺作となった『まあだだよ』はこの内田百里箸修涼膣屬燭舛鯢舛い榛酩覆覆里如∨椶醗貊錣亡僂討澆襪里發いぁ私は大好きな映画なのであわせておすすめしたい。

『ノラや』を読むと、猫というのは人間のために作られたものかもしれないなと思う。もちろん、猫は人間がいなくても地球に誕生して生きていただろうけど、人が生まれたことで猫は人のためのものになった。幸か不幸か、好むと好まざるとに関わらず。猫がいなければ生きていけないような人も世の中にはいるし、もし猫がいなくなったらこの世界はずいぶん味気ないものになってしまうだろうと私なんかは思う。
 この作品を読んだのはもうずいぶん前のことになる。10年以上は経ってるだろう。それでもいまだに私の心の中にはノラがいて、百寮萓犬醗貊錣砲覆辰董▲離蕕筺▲離蕁△斑気靴討い襦そして、ノラの好物だった出前の寿司の卵焼きを見ると、ちょっとだけ泣きそうになるのだ。

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