現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
屋根より高い鯉のぼりは絶滅危惧種に指定間近 2006年5月5日(金)
2006年05月06日 (土) | 編集 |
5月5日は鯉のぼり

Canon EOS 10D+EF28-105mm(f3.5-4.5), f4.5, 1/400s(絞り優先)


 5月5日、鯉のぼりを探して車でうろつくこと30分、ようやくいいポジションの鯉のぼりを発見して、ありがたく写させていただいた。いい具合に風も吹いていた。
 しかし、30分も探さないと鯉のぼりを見つけられないとは、時代も変わったものだ。屋根より高い鯉のぼりなんてのもめったに見られなくなった。
 私たちの世代は、昔から伝わる伝統的な行事をギリギリ見ることができた最後の世代となるかもしれない。50年後、果たして街中で鯉のぼりは見られるのだろうか?

 黄河上流に龍門と呼ばれる急流があり、それを登ることができた鯉だけが龍になったという伝説から生まれたのが登龍門という言葉、その流れをくんで鯉のぼりが生まれた。
 端午の節句は、奈良時代から行われている古い行事で、端午というのは5月の初めの午(うま)の日という意味で、必ずしも5月5日と決まっているわけではない。
 当時の端午の節句に鯉のぼりはまだなく、宮廷行事として軒に菖蒲(しょうぶ)やよもぎを飾ったりして厄よけを願うものだった。それが鎌倉時代になると武家が菖蒲と尚武をかけて、この日を祝う風習が生まれ、江戸初期には幕府の行事として定着し、中期以降はだんだん町人の風物詩の色合いを濃くしていき、現在へとつながっている。
 江戸時代から戦前までの鯉のぼりは和紙に絵を描いたものだったので、雨の日はしまわないといけなかった。現在のようなナイロンやポリエステル製のものが作られるようになったのは戦後の昭和30年代だそうだ。
 5月5日が祝日になったのも戦後というから、鯉のぼりの習慣というのは意外と古くて新しいものなのだった。

 鯉のぼりのそれぞれの意味は、歌にもあるように大きな真鯉はお父さんで、小さな緋鯉は子供たちだ。ん? お母さんはどこへ行った? 家出したか? いや、やっぱり赤いのはお母さんで、小さいのが子供たちだろう。じゃあなんで歌詞に登場しないのかという疑問が残るけど、それはこの際置いておこう。子供が3匹なのは、3という数字が縁起がいいと言われてるからのようだ。
 吹き流しにもちゃんと意味はあって、あれは魔よけなんだそうだ。吹き流しには五色のものと、写真のようなものと2種類ある。五色のものは、古代中国の五行説(ごぎょうせつ)に由来していて、それぞれの色は万物の基本要素である、木・火・土・金・水の五つを表している。一方写真のようなのは雲竜吹流しといって、鯉が竜門の滝を登り終えて竜になった姿を表してる。家紋を入れる場合はこちらにするそうだ。
 それから、一番上で回ってる矢車も魔よけの意味を持っているらしい。
 意味が分かったところでいっちょ試しに買ってみようかなと軽い気持ちで考えていると痛い目に遭う。一番高い7点セットなんか50万円以上するのだ。しかも、ナイロンで2〜3年、高価なポリエステルでも5〜6年すると色あせてしまうというではないか。なにー! 鯉のぼりって一度買ったら一生ものじゃなかったのかー!? 五月人形に鎧兜まで、フルセットで揃えた日には大変なことになってしまう。うちではこんなもの買ってもらったことはなかった。せいぜいちまきを食べたくらいだった。

 鯉のぼりの歌というと、屋根より高いというやつより、いらかの波と雲の波ってやつの方が印象に残っている。あれはメロディーがよかった
 ♪甍の波と雲の波 重なる波のなかぞらを
 橘薫る 朝風に 高く泳ぐや こいのぼり♪
 一体どういうこと? 子供の頃もさっぱり分からなかったけど、大人になってもよく分からない。まず甍って何ってところでつまずいてしまう。
 調べてみると、こんな意味だった。甍というのは屋根瓦のことで、民家が並んでいる様を波にたとえて、雲の波模様を背景に、屋根の間からのぞく鯉のぼりが波の間を泳いでいるように見える。
 うーむ、なんて文学的な表現なんだ。って、こんなもの小学生に理解できるわけないぞ。
 その次の橘というのは、ミカン科の木で、5月に香りのいい白い花を咲かせるってことで、ここに登場している。古くは古事記にも登場する尊い木なんだとか。松尾芭蕉も「橘や いつの野中の 郭公(ほととぎす)」とうたっている。私は実物を見たことはない。
 5月5日というと、ちまき食べ食べの歌も思い出す。あれも歌詞の意味は分かりづらい。
 ♪柱のきずは おととしの 5月5日の 背くらべ
 粽(ちまき)食べたべ 兄さんが 計ってくれた 背のたけ
 きのうくらべりゃ 何のこと やっと羽織の 紐のたけ♪
 昨日と比べれば何のこと? って私に訊かれても困る。昨日から今日にかけてそんなに急激に伸びたのか!? やっと羽織の紐の丈、やっとってどういうことだろう?
 これも分からず調べたら、要するにおととしつけた印は羽織の紐のあたりだった、わー、こんなに伸びていたんだ、驚いた、という意味だった。昨日比べりゃってのは、昨日計ったということだった。なんだそれ、今日計れよ、今日。5月4日に計ったことを事後報告した歌だったなんて思いもよらないぞ。分かりづらすぎ。

 そんなこんなで5月5日も平穏無事に過ぎた。端午の節句の意味もだいたい分かったし、当分鯉のぼり7点セットを買う予定もないし、まずはめでたい。鯉のぼりの歌詞も理解できてすっきりもした。もし、今日鯉のぼりの写真を撮ることが出来なかったら、こうして5月5日を深く知ることもなかっただろう。写真の家の人には感謝したい。鯉のぼりが少なくなったこの時代だから特にありがたかった。
 私も世のため人のためになるように、来年は鎧兜を身にまとって、近所を走り回りたいと思う。ガシャンガシャン音を立てて、ゼェゼェ言いながら走ってる落武者のような私を見かけたら、写メールでも撮ってブログで紹介してください。

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