現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
この季節のケリは目を血走らせて警戒警備中 2006年5月6日(土)
2006年05月07日 (日) | 編集 |
飛ぶ姿はきれいなケリ

Canon EOS 10D+EF75-300mm(f4.0-5.6), f6.3, 1/320s(絞り優先)


 田んぼの真ん中あたりからケケケケケッと声がして鳥が飛び立った。あわてて望遠レンズに交換して、連写しまくって、偶然撮れたのがこの一枚。完全なまぐれ当たり。振ってけ、振ってけ! 振らないと当たらないぞ! という少年野球のヤジがこんなところで役に立つとは。確かにそうだ、バットを振らないとボールには当たらないし、シャッターを切らないと写真は撮れない。誰だって一眼レフを使えばそれなりの写真は撮れるものだ。逆に言えば、プロ野球選手も少年野球のバットでホームランは打てない。
 鳥が降り立ったあたりをファインダー越しに見てみると、えーと、ハトしかないような? ええー!? もしかして、キミがさっきの白黒ツートンの鳥さんですか? そこにはドバトとキジバトの中間のような地味な灰色をした鳥がたたずんでいたのだった。初めてお目にかかります。キミのことは図鑑を見て知ってましたよ、ケリさん。
 それにしても、地上にいるときと飛んでいるときと、こんなにもギャップがある鳥も珍しい。飛んでる姿はこんなにもきれいなのに、地面にいるときは、足の長いハトくらいにしか見えない。

 日本最大のチドリであるケリは、一応留鳥という扱いになってはいるけど、分布にはけっこう偏りがあるようだ。中部地方に多く生息し、その他は少なく、四国、九州ではあまり見かけないらしい。中国の東北部にも多少いるようだ。北の方のものは冬になると南に下っていく。
 繁殖地も限られていて、中部地方を中心とした太平洋側に多いようだ。基準は暖かさでも寒さでもなく、地域も飛びとびなので、ケリの基準はよく分からない。
 大きさは35センチくらいで、ハトを細くしたようなサイズ。翼を広げると70センチ以上になるから、飛んでる姿はけっこう大きく見える。
 頭から上半身は灰色で、胸が黒、腹が白、背中は茶色、クチバシと足は黄色。長い足と赤い目も特徴だ。オスメス同色。
 水田や河原なんかにいて、昆虫や草の種なんかを食べている。ときにはカエルも。

 留鳥なのに夏、冬は目立たなくてこの時期よく目にするのは、春が彼らの子育ての季節だからだ。3月から6月にかけて、子供を産み、育てる。そのときすごくケンカ腰になるから目立つ。写真を撮ってるときも、ムクドリやツバメを追い払い、犬にケンカを売り、私を威嚇し、通りかかる人々にも食ってかかっていた。マドンナに群がってくる男どもを蹴散らしまくっていた若き日のショーン・ペンみたいだった。
 一夫一妻で地面のくぼみに巣を作り、3〜4個の卵を産む。オス、メス交替で卵を温め、体が空いてる方は巣周辺の警戒警備に当たる。少しでも近づくものがあると、けたたましく鳴きながら威嚇し、追いかけまわす。カラスにだって負けはしない。自分より強い犬とかの場合は、わざとケガをしてるような演技をして(擬傷)、自分に注意を向けさせて巣から引き離すなんて高度な行動もする。なかなか賢いやつだ。
 ケリのもうひとつの、というか最大の特徴は、ヒナにエサを与えないことだ。といっても意地悪をしてるわけではない。生まれてすぐに自立させて、自力でエサを捕らせるのだ。その間、親たちはヒナを守るために更に警備を強化して、警戒を怠らない。ときには仲間のケリまで警戒態勢に加わったりもする。
 そういうわけで、この時期にケリは非常に目立つ。気が立っているから、目も赤く血走っている(一年中赤いけど)。田んぼのあぜ道を通るときなどは、なるべく刺激を与えないようにしようと思う。

 名前の由来は、鳴き声がケリッケリッというところから来ていると言われている。私にはケケケケケっと鳴いているように聞こえた。その場合、名前はケケケになる。ケケケのケ太郎と個人的には呼ぶことにしよう。メスの場合はケリー・チャンだ。
 今日こそあいつとけりをつけるといった使い方をするけりは、このケリとは関係ない。和歌や俳句の末尾は「けり」で結んでいるものが多いところから、結末をつけるとか、片づくとかの意味でけりをつけるという言葉ができたそうだ。今は昔、竹取の翁といふものありけり、のように。

 森にいる夏鳥を撮るのは難しいけど、気をつけて探していれば撮れるやつもいる。ツバメもちゃんと撮りたい。
 最大の目標としては、今年もまたオオルリというのは変わってない。まだ見たことさえない憧れの青い鳥だ。本気で撮るつもりなら、朝一で出かけていくくらいの意気込みが必要なのかもしれない。
 婚姻色の亜麻色になったアマサギも撮りたい。田植えが終わった頃の田んぼにいるんだろうけど、名古屋あたりではなかなか見かけない。
 ケリのヒナも撮れるものなら撮りたい。撮りたいものがたくさんあるっていいことだ。たとえ、そのほとんどを撮れないとしても。

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