現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
藤の風情はどこをとっても日本人好み 2006年5月9日(火)
2006年05月10日 (水) | 編集 |
御作ふじの回廊

Canon EOS 10D+EF28-105mm(f3.5-4.5)+C-PL, f4.5, 1/30s(絞り優先)


 つどいの丘のキリシマツツジを見たあとは、御作町のふじの回廊を見に行くというのが定番メニューと言えるだろう。キリシマツツジは単発、ふじの回廊は散策や山歩きと組み合わせることができるから、セットメニューとしてもちょうどいい。
 419号線を北上して、「役場東」交差点を右折、そのまま33号線をキープして10分ほど走ると、ふじの回廊に到着する。橋を渡ったあたりに看板も出ていて、次の信号を越えた右側に無料駐車場となる広場があるので見落とすことはないと思う。
 今年はやや遅れ気味だった藤も、5月7日ではさすがにちょっと遅すぎた。だいぶ花も散って寂しい感じになっていた。見頃としては、毎年4月と5月の境目あたりになるのだろう。
 しかし、ゴールデンウィーク明けということもあって、訪れる人も少なく、のんびり歩きながら藤を楽しむことが出来たのはよかった。甘い香りをかぎながら、回廊をゆっくり歩いて回る。
 ここの藤は、御作小学校の生徒や関係者の人たちが世話や管理をしてるようで、なかなか手入れが行き届いていている。マイナーな場所だけに観光地化もされてないから、近所の人にはおすすめしたい。ただ、木自体はまだ若いのか、やや小ぶりで、藤のボリューム感も有名どころのようにはいかない。
 370メートルほどの回廊に、紫三尺、八重黒竜、シロバナ藤の4種類が植えられている。写真のこれは紫三尺だろうか。最盛期は過ぎていたとはいえ、なかなかいい感じだった。藤はあんまりモコモコになっているものよりも、少しはかないくらいの感じで垂れ下がっているものの方が私は好きだ。

 日本にはフジ(ノダフジ)とヤマフジの2種類があり、中国にはシナフジ、欧米ではアメリカフジなどがある。
 花を近くから見ると、マメ科特有の口唇状の形をしていることが分かる。その小花が房にたくさんついていて、根本の方から順番に咲いていく。
 藤ととえば藤棚を思い浮かべるのが一般的ではあるけど、野生にも案外たくさん咲いている。山の方を走っていると、とりとめもなくあちこちにちらばって紫色の花が咲いているのを見かける。
 あれはたいていノダフジ(野田藤)の方だ。本州、四国、九州と広い範囲に自生していて、つるが右巻きという特徴がある。野田というのは大阪の地名で、昔から藤で有名なところで、そこから名前が付けられたそうだ。
 もうひとつのヤマフジの方は、本州の西部から四国、九州にかけて分布している。人の手で植えられたものはあるのだろうけど、野生のものを見たければ西日本に行くしかない。これはつるが左巻きなので区別がつく。
 どうして藤棚にするかというと、藤はつる性で他のものに巻き付いて伸びる性質があって、横向きに伸ばすことできれいに花を垂らさせるためだ。勝手に伸びるままにさせておくと、野生の藤のように雑然として感じになってしまって美しくない。

 藤の名所としては、世界遺産になっている春日大社の砂ずりの藤や、天然記念物に指定されている藤島の藤(岩手県仁昌寺)、熊野の長藤(静岡県行興寺)、牛島の藤(埼玉県藤花園)、黒木の大藤(福岡県素盞鳴神社)、宮崎神宮のオオシラフジ(宮崎県宮崎神宮)、曼陀羅寺の藤(愛知県曼陀羅寺)など、全国にたくさんある。
 愛知県では、曼陀羅寺と津島の天王川公園が二大有名スポットで、ゴールデンウィークは毎年大勢の人が押し寄せる。名城公園の藤回廊もそこそこ有名だろう。
 樹齢1,000年を越える古木の藤もあるそうで、いつかそんな藤も見に行きたいと思う。今年に関しては、とりあえず御作のふじの回廊でたっぷり見ることができたからもう満足した。曼陀羅寺にも行きたいような気はするけれど。

 古くから日本人は藤を大切に思い、愛してきた。その色合い、姿、風情、香り、どこをとっても日本人好みの、日本を代表する花のひとつであることに間違いない。古典文学にもよく出てきているし、和歌にもたくさん詠まれている。『源氏物語』に登場する藤壺もその象徴と言っていいだろう。
 藤は平安時代がよく似合う。鎌倉や室町に藤は似合わない。江戸時代は桜がいい。平安時代に心惹かれる人は、藤も好きなんじゃないだろうか。
 私も来年のゴールデンウィークには、平安貴族の衣装に身を包んで、曼荼羅寺の藤棚の下で蹴鞠に興じたいと思う。一緒に蹴鞠をしてくれる人を若干名募集します。十二単でそれを見守ってくれる方も歓迎です。ただし、衣装は自前でお願いします。曼荼羅寺で待っているでおじゃるよ。

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