 Canon EOS 10D+EF75-300mm(f4.0-5.6), f5.0, 1/250s(絞り優先)
ボンゴっていいよね! 何の前触れもなく、突然そんな問いかけを投げられて、とっさに答えられる人は多くないと思う。100人のうち3人くらいは、ああ、あの茶色の鹿みたいなやつ? と答えるかもしれない。5人くらいは、マツダの? と問い返し、4、5人はラテンの太鼓みたいなやつだっけ? などと言うだろうか。大部分の日本人は、ボンゴを100字程度で説明するなんてことはたぶんできないだろう。 ボンゴ、それは中央アフリカの森林に点在するウシ科の動物で、ケニアボンゴとも呼ばれる。 ジャイアントパンダ、コビトカバ、オカピと並んで世界4大珍獣とされているのを、知ってる人は知ってるし、知らない人は知らない。私は写真を撮って、こいつについて調べてるとき初めて知った。動物園で見たときは知らなかった。金網越しの瞳が印象的だったので、軽い気持ちで撮っただけだ。珍獣だと知っていれば、もっとちゃんとした気持ちで撮ったのにと悔やまれる。ただ、珍獣かどうかは別にしても、とても雰囲気のある美しい生き物であることは感じたのだった。 現地ではこのボンゴのことを、密林の貴公子とか魔女の生まれ変りだなどと呼んでいるらしい。森の奥深くで出会って、対峙したときのことを思い浮かべたら、その呼び名は大いに共感できる。 美しい栗色の毛並みに白い縞模様、堂々と伸びた角と静かな瞳、その姿は薄暗い森林の中でこそ神々しい。動物園の中では残念ながら、その魅力は輝きを失っていた。静けさをたたえた瞳以外は。
ボンゴはアフリカ山地の森林で暮らしている。通常オスは単独で、メスは少数の群れを作って行動している。 体長は頭から尻まで2メートルちょっと、高さが1.5メール弱、体重は200キロから300キロ、シッポの長さは25センチくらい。ウシの仲間というより、鹿をひとまわり大きくしてがっちりさせたような感じだ。 オスもメスも角があり、オスの方が長くて立派で、80センチにもなる。写真のボンゴは半分折れてしまったのかなくなっていたけど、もう一本は存在感があった。 白い縞模様もよく目立ち、12〜15本くらいある。人から見たら縦縞だけど、ボンゴから見ると横縞。これは森林でのカモフラージュではないかと考えられている。 ちょっと変わっているのは、茶色の毛並みは元々がこの色ではなく、分泌された色素で染まっているだけだとういうことだ。だから雨に濡れると色が落ちてしまうんだとか。雨の日に動物園へ行って一度見てみたい。 もうひとつの特徴として、高いジャンプ能力があげられる。助走なしで2メートル以上の柵も軽く越えるという。スポーツテストの垂直跳びでは向かうところ敵なし。バレーボールのネットさえ飛び越えることができる。川合俊一など子供扱いだ。 食べ物は見た目通り植物性。木の葉や草、花、果実、樹皮など、アフリカの森の中では食べるものに困ることはない。
ボンゴが何故珍獣と呼ばれるかは、発見されたのが19世紀末で、野生の生息数が100頭以下と、絶対的に数が少ないからに他ならない。暮らしている場所が高地の密林の中ということもあり、くわしい生態もよく分かってないという。 日本に最初にやってきたのは1972年、上野動物園だった。しかし、この年はタイミングが悪かった。なにしろ、世界のアイドル、パンダのカンカンとランランがやって来た年だったからだ。あまり話題になることなく、ひっそりと忘れられた。 現在は、東山動物園、横浜の金沢動物園、富士サファリパークの3園でしか見ることができない。そういう意味でも貴重な動物だから、もっと一般的に有名になってもよさそうだけど、ボンゴの性格からしてあまりメジャーになるのは望んでないだろう。
密林の奥深く、木々の間から光がシャワーのように降りそそぐ中、こちらを向いてじっとたたずむボンゴ。赤茶色の毛並みが太陽光線に照らされて、美しく輝いている。こちらがもう一歩近づこうとしたとき、ザザっという音を残して走り去り、あっという間に姿は森の木々の中にかき消される。もはや木々のこすれる音さえしない。今見た一瞬の光景を現実のものとして信じることができるだろうか。幻か、森の魔法にかかったと思っても不思議ではない。 ボンゴは確かにアフリカの森にいる。今この瞬間も森を駆け回り、木々の間を飛び跳ねている。一生出会うことはないけど、動物園にいたボンゴと目があったことで、私はその幻を確かに見た気がした。
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