 Canon EOS 10D+TAMRON SP 90mm(f2.8), f3.2, 1/200s(絞り優先)
タニウツギなんて聞くと、女子ソフトボール日本代表の宇津木監督とヤワラちゃんのダンナ谷選手の顔が同時に浮かんで困る。いや、すごく困るわけではないのだけど、ふたりのイメージとこの花の可憐さとのギャップが大きくて、脳の中での処理が追いつかなくて少し困る。宇津木監督のチームにもし私がいたら、確実に泣かされてしまうであろうことを想像してつらい気持ちになったり、谷選手ってなんて偉いんだろうと思ったり。 それはともかくとしてタニウツギ。残念ながら漢字では谷宇津木ではなく谷空木と書く。枝の内側が空洞で、谷によく生えることからその名がついた。田植えの時期に花を咲かせることから、タウエバナと呼ぶ地方もあるそうだ。更に、早乙女花(サオトメバナ)という別名もある。言われてみると早乙女愛っぽい気もする。もちろんそこから付けられた名前ではないけれど。
分布は日本、朝鮮半島、中国で、日本では日本海側に多いという。確かに名古屋近郊ではあまり見かけない。ただ、まったく自生してないというわけでもなく、海上の森にあったところをみると、気をつけていれば意外と身近なところにもあるのかもしれない。公園や民家にあるものは人の手で植えられたものだ。 木の高さは、30センチから2メートルくらい。このあたりでは5月頃に咲く。花色はつぼみのときが濃いピンクで、花が開くと淡いピンクになり、そのグラデーションがいい。遠目で見るとそれほどでもないけど、近づいてみるととても魅力的な花だということに気づく。花の大きさは3センチくらい。 花が一斉に咲き乱れる5月に咲くので、あまりもてはやされることはないけど、これがもっと早い春先に咲く花だったらありがたがられていたんじゃないだろうか。たとえば3月の中頃だったら、春の訪れを華やかに知らせる花として人気者になっていた気がする。この色合いは、人の心を浮き立たせるものがある。 白い花を咲させるシロバナタニウツギもあるそうだ。
 こちはらツクバネウツギ(衝羽根空木)。花の形が似ているし、どちらもウツギと名前が付いてるから仲間だろうと安易に考えると痛い目に遭う。このふたつのウツギを並べると、がぜん話はややこしいことになるのだ。 まず、普通のウツギ(空木)という花があって、これは上の2つとは種類が別のユキノシタ科ウツギ属に属している。それに対して、タニウツギはスイカズラ科タニウツギ属で、ツクバネウツギはスイカズラ科ツクバネウツギ属になる。 すでに話がややこしいけど続けると、タニウツギ属には、ウコンウツギ、ニシキウツギ、ヤブウツギなどがあり、ツクバネウツギ属にはオオツクバネウツギ、コツバネウツギがある。なんだか、とても脱力感を覚えるのは私だけではないだろう。どこの属でも族でも自分には関係ないもんね、と知らんぷりをしたくなる。しかし、おまえ何中だ、と訊かれたら出身中学を答えるのが人の道というものだろう。 話がそれた。とにかく、ウツギにもいろいろあるということだ。それだけは心にとめておきたい。 ツクバネウツギは、プロペラのようなガク片の形が、羽根突きの衝羽根(ツクバネ)に似てるところから名づけられた。これが5枚ならツクバネウツギで、1枚小さかったり4枚だったらオオツクバネウツギと分かる。 よく似た白い花で、道ばたなんかに植えられているアベリア(ハナツクバネウツギ)は、中国産のシナツクバネウツギとユニフローラとを掛け合わせて作られた園芸種だそうだ。 本州から四国、九州の丘陵帯の日当たりに良いところに分布している。北海道はピンクのタニウツギがお馴染みで、本州から九州に住んでいる人はこちらの方をよく見かけると思う。 ピンクで華やかなタニウツギと白くて清楚な花がふたつ並んで咲くツクバネウツギ、どちらもそれぞれによさがある。
野山の花との出会いは、偶然の要素が大きい。今日はあれとあれを見つけようと思って行っても、それと出会えるとは限らないし、まったく狙ってなかった花が見つかることもある。同じ季節、同じ場所に行っても、出会う花は人によって違ってくる。特に海上の森のように広い森となると尚更だ。歩く場所によって咲いている花も違う。下ばかり見て歩いていて上に咲いているものに気づかなかったりもするし、知識によって見えたり見えなかったりということもある。 あるいはそこには何らかの必然はあるのだろうか? 花が人を呼ぶというようなこともあるのか。 おーい、どこにいるんだー、私を呼び寄せてくれー、と心の中で森に向かって呼びかけてみることがある。たいていはそんなことで見つかるわけもなく、ついには見つからずがっかりして帰ってくる。まだまだ勉強不足ということを痛感して。でも、ほんのたまに、あきらめかけた最後の最後で出会えることがある。そんなときは、花が自分を呼び寄せてくれたような気がする。 花も森も生きている。人と花の間にも共鳴や共振というのはあるのかもしれない。
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