現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
ふたりの時間と距離とアフリカゾウ 2006年5月15日(月)
2006年05月16日 (火) | 編集 |
アフリカゾウの前で

Canon EOS 10D+EF75-300mm(f4.0-5.6), f5.0, 1/160s(絞り優先)



 ゾウを撮ろうと一歩下がったら、そこには小さなドラマがあった。ふたりの時間と距離感といったようなものが、私に、ああ、という言葉にならない感情を呼び起こし、映像だけが残った。
 そんな人間模様を何年にもわたって見続けたゾウたち。彼らは狭い世界から人間たちの姿を通して、人生というものがどういうものなのかを学んでいるのかもしれない。とても賢い生き物だから。
 共に生きるということは、見つめ合うことではなく横に並んで同じ方向を向くことだ。時間が作り出した小さな距離感は、むしろ確かな絆に思えた。人は不安なときほど身を寄せ合おうとするものだから。

 陸にすむ哺乳類で最大の生き物が、このアフリカゾウだ。21世紀まで生き残った最後の巨大生物、もっとも恐竜の面影を残す生き物と言ってもいいかもしれない。しかし、ゾウにとって今の地球は決して暮らしやすい場所ではなく、他の多くの動物たちと同様、絶滅へと向かっている。環境破壊と乱獲によって。
 ゾウは大きく分けてふたつのグループがある。アフリカで暮らすアフリカゾウと、アジアにいるアジアゾウと。かつてはオーストラリアと南極をのぞくすべての大陸にゾウの仲間はいたと言われている。遠くはマンモスだったり、日本にはナウマンゾウがいた。
 アフリカゾウは、写真のサバンナゾウと、マルミミゾウがいる。マルミミゾウは珍しくて、日本では旭山動物園と徳山市立動物園でしか見ることができない。
 アジアゾウは、インドゾウ、セイロンゾウ、スマトラゾウ、マレーゾウの4亜種に分けられるのが一般的だ。
 現在の生息数は、アフリカゾウが約76万頭、アジアゾウが約5万頭くらいと言われている。
 アジアゾウの方がやや小さく、背中が丸まっているのに対して、アフリカゾウは大きく、背中もまっすぐに近い。耳の大きさで区別するのが一番分かりやすいだろうか。アジアは小さく、アフリカは大きい。

 ゾウはとぼけた顔をして動作ものんびりしてるので、鈍いやつだと思いがちだけど、それはジャイアント馬場を弱いやつと思うのと同じくらい間違った思い込みだ。実際は、強くて、速くて、器用で、賢い生き物なのだ。
 鼻は一度に10リットルの水を汲み上げたり、自由自在に動かしてピーナツのような小さなものまで掴むことができる。歯も丈夫で、腕くらい太いカシの木も大きな四つの歯でバリバリにかみ砕いて食べてしまう。
 足も見た目からは想像できないほど速く、スピードに乗れば時速40キロまで出せる。遠くのものまで匂いをかぎ分け、目と耳と記憶力もいいから言葉も理解して、自分に危害を加えたことがある人間を覚えていて襲ってきたり逃げたりもするという。足の裏で低周波まで読み取るというからすごい。
 この巨体ゆえに他の生き物から襲われることもなく、メスを中心とした小さな群れで平和に過ごしている。リーダーは最年長のメスで、それが分かるということからしても知能はかなり高いと言えるだろう。オスは繁殖期以外は単独で行動してることが多い。
 巨体ゆえに安全なゾウではあるけど、その巨体がもたらす困ったこともある。それは食事の量の問題だ。とにかく大食いで、一日に100〜150キロのメシを食べるというから動物園ではダントツにお金がかかる動物となっている。牧草、にんじん、りんご、乾燥エサなどで一日1万円もエサ代がかかってしまうのだ。
 それから水。飲んだり水浴びしたりするために一日100リットルの水を必要とする。
 動物園ではエサ代のことを言われることが多いけど、実は大変なのは水道代で、東山動物園の場合、エサ代は年間1億1千万円なのに対して、水道代は3億3千万円かかっている。
 ゾウが生きていくには、野生でも動物園でも、たくさんのエサと水が必要ということだ。

 ゾウは豊かな環境の中でしか生きていけない動物だ。動物園においても同じことが言える。そして、ゾウは平和の象徴でもある。第二次大戦前、日本には20頭のゾウがいた。戦後まで生き残ったのは、東山動物園のエルドとマカニーの2頭だけだった。今では日本中どこの動物園でも見ることができるゾウだけど、それを支えているのは人間たちの大きな力だということを忘れないようにしたい。
 愛・地球博で見たマンモスは、とても悲しいものだった。その大きさと、もう決して見ることができないのだという事実が胸にこたえた。未来の子供たちがゾウのはく製を見て同じような気持ちにならずにすむように願うばかりだ。
 ゾウのことをこれからも忘れないように、象印の魔法瓶とゾウが踏んでも壊れないアーム筆入れを骨董屋に買いに行こうと思う。




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