現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
家から2時間向こうにいる幸せの青い鳥 2006年5月23日(火)
2006年05月24日 (水) | 編集 |
初オオルリ?

Canon EOS 10D+EF75-300mm(f4.0-5.6), f5.6, 1/250s(絞り優先)




 山道をヒーヒーフー、ヒーヒーフー、と言いながら登っていると、頭の上の方から澄んだ鳴き声が聞こえてきた。聞き慣れないさえずりに大物の予感。足をとめて、木々の間を注意深く見渡すと、枯れ木のてっぺんで鳴いている鳥を発見した。おおー、もしや、キミは! もしかして、ひょっとして、あなたはオオルリさんですか? ずっと憧れていた、あの?
 目を五木ひろしのように細めて見るけど、よく見えない。距離が遠すぎるのと、太陽の光が弱くて。ここで欲が出て、もう一歩近づいたとたん、推定オオルリは山の彼方へと飛んでいってしまったのだった。あーあ、こんなことになるから告白せず友達のままでいたらよかったみたいな後悔先に立たず。
 家に帰ってきて、写真で確認してみると、うーん、どうでしょう。長嶋監督のモノマネをする関根勤のモノマネで迫ってみたけど、よく分からない。顔の下から胸にかけての黒い部分と腹の白とのコントラストがオオルリっぽい。せめて頭の青い部分が見えていれば判断もついただろうけど、確信は持てない。
 せっかくオオルリについて書くなら、きれいな写真を載せたかったけど、今度会えるのを待っていたらいつになってしまうか知れない。だから、この写真に写っているのはオオルリのオスだということで話を進めたいと思う。

 オオルリは、その瑠璃色の美しい姿と、きれいな鳴き声で人気が高い野鳥だ。青い鳥の代表と言ってもいいだろう。まったく野鳥に興味のなかった人をも野鳥の世界に引き込む力を持つ鳥として、水辺ではカワセミ、山ではこのオオルリという言い方もできるかもしれない。まさに夏山のスターだ。
 冬の寒い時期は、南のインドシナ半島やフィリピンなどで過ごし、初夏に日本に渡ってきて、秋になるとまた南へ渡っていく。北海道から九州にかけているとはいえ、普通の生活をしていたらめったに見る機会はない。山の渓流沿いの林の中にいるから。それに夏場は木々が生い茂るので、普通に山歩きをしているくらいでは見つけるのは難しいということもある。春の秋の渡りの季節には人家の近くの公園などにもやって来るというけど、私はそんなところで見たことはない。
 青いのはオスだけで、メスは地味なうぐいす色をしている。オスは、頭から背中にかけてコバルトブルーをしていて、森林の中にいるその姿はとても魅力的だ。たぶん、一度見たら忘れがたいものとなるだろう。
 そして、声の美しさも際立っていて、ウグイス、コマドリと共に日本三鳴鳥と呼ばれている。もしかしたら、ウグイス嬢ではなく、オオルリ嬢となっていても不思議ではなかった。オオルリ姉妹だっていてもおかしくはないのだ。
 鳴き声はやや複雑で、なんと表現したらいいか難しい。ピーリーとか、ピールリとかそんな感じで、最後にジィジィと付けば、姿は見えなくてもそれはきっとオオルリだ。森や山を歩く人に、鳴き声のテープを聴いてもらえば、あー、この声聞いたことあるなと思うんじゃないだろうか。

 大きさは約16センチと、小鳥というにはやや大きい感じがする。重さは20〜25グラムくらいだそうだ。
 基本的に木の上にいることがほとんどで、エサは蛾や蝶やアブなんかを飛んでいるときに口でくわえて捕まえるフライングキャッチャーだ。鳥って意外と飛ぶスピードが速い。
 英語名は、Blue and white Flycatcher。まるでそのままだ。
 繁殖は日本にいる間に行う。一夫一妻で、卵は3〜6個くらい、メスが温め、エサやりはオスメス共同でする。そのときのエサは、フライングキャッチしたものではなく、昆虫の幼虫とかアオムシとからしい。ということは地面にも降りてるんだろうけど、そういう姿は写真でもあまり見かけない。
 繁殖期のオスは自分の縄張りをしっかり持っていて、高い声でさえずっているのは、周りに誇示しているのだろう。それは決まった場所であることが多く、その場所をソングポストというそうだ。写真のこの場所も、それだったのかもしれない。

 瑠璃と名の付く青い鳥は、他にコルリやルリビタキがいる。どちらも青を持つきれいな鳥だ。ずっと見たいと思って、まだその願いは叶っていない。写真に撮るのはどちらもかなり難しい。
 青い鳥というのは幸福の象徴として使われることが多い。これはやはり、メーテルリンクの戯曲から来ている部分も大きいのだろう。外国でも同じように使われる言葉のようだ。もう一歩進めて、身近にあるのに気がつかない幸せを意味する言葉と言い換えてもいい。しかし、チルチルミチルが見つけたのは家で飼っていたキジバトだったというのに納得できない野鳥ファンは多いに違いない。鳩を青い鳥というのは無理があるし、伝書鳩愛好家でもなければ鳩に幸せを感じるのは難しい。
 もちろん鳩にもいいところはある。青と言えばそう見えないこともない。いつも身近にいてくれることの幸せと言うこともできるだろう。ただ、その身近な幸せに気づけたのは、ふたりが青い鳥を探す冒険の旅に出たからだ(夢だったのだけど)。私たちもまた、幸せの青い鳥を探しに山や森へ行こう。自分の目で見て、写真に撮れたときの感激は、紛れもなく幸福に属する感情だ。
 日本全国どこに住んでいても、車で1時間、歩きで1時間もかければ、青い鳥がいるところに行くことができる。幸せは、2時間向こうにあるのだ。
 私も、もう一度オオルリに会いたい。今度こそ背中の瑠璃が見えるように撮りたい。こっち向いてっ、とお願いすることは多いけど、あっち向いてっ、と頼みたくなるのは、このオオルリくらいかもしれない。




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