 Canon EOS 10D+TAMRON28-300mm XR(f3.5-6.3)+C-PL, f4.0, 1/60s(絞り優先)
少し前からヒトツバタゴのことが気になっていた。今年こそ犬山の自生地で天然ものを見てみたいと思いつつ、なかなかその気にならなかった。それが今日になって突然見たくなった。もう満開は過ぎていると分かってはいたけど、せっかくの気持ちを無駄にしてはいけないと行くことにした。風が強い日だったので、もしかしたら白い花吹雪が見られるかもしれないという期待を抱きつつ。 そして、そこにそれはあった。ヒトツバタゴ、通称ナンジャモンジャ。初夏に雪が降り積もったように白く咲く古代からの生き残り。20万年前の地層から見つかっているというから、それよりも以前から日本にこの木はあったことになる。 しかし、さすがに出遅れた。例年ゴールデンウィーク後半に見頃を迎えるこの花も、今年は遅れているという話は聞いていた。それにしても24日では遅すぎる。ピークは一週間ほど前だったようだ。写真の木は、7本ある自生の中で最後まで花を付けていたもので、残りはほとんど散ってしまっていた。最盛期は、それはもう見事に真っ白に染まるのだ。真っ白な灰になって燃え尽きた矢吹丈のように。
現在では日本全国に植樹されて目にすることが多くなったヒトツバタゴだけど、自生地となるとごく限られている。国の天然記念物に指定されているこの犬山の他、岐阜県蛭川村、瑞浪市釜戸町、恵那市笠置町、恵那市大井町、恵那市中野方町、岐阜県中津川市苗木、中津川市落合新茶屋、岐阜県瑞浪市稲津町萩原、と何故か中部地方に不連続分布している。木曾川流域ということで、木曽川が何かの鍵を握っているようだ。 それから、自生地ということで最も有名なのは、長崎県対馬市だ。ここにはもともと自生したものに加え、地元の人たちが増やして大事に育てている木が3,000本以上あるという。満開の頃は、港町が真っ白に染まって、独特の風景となるそうだ。一度は見てみたい。 東海地方と対馬のものは、どうも別物と考えた方がいいようだ。そうでないとこれだけ離れた位置での分離自生は説明がつかない。日本以外では、中国、台湾、朝鮮半島などでも自生しているそうで、対馬はそちらと同じものらしい。もしくは、数種類あるヒトツバタゴの中で、東海地方にあるものはそのひとつの種類と言った方が正しいのかもしれない。 そもそもどこからヒトツバタゴが日本にやってきたかというと、渡り鳥が種子を運んできたという説と、かつて大陸と日本列島が地続きだった頃、人類が持ち込んだという説があるようだ。いずれにしても、20万年前のものは大阪で発見されたところをみると、かつては今よりも広い範囲でこの花は見られたんじゃないだろうか。 犬山のものは、樹齢200年以上の高さ15メートルのものをはじめ、全部で7本が自生していて、大正12年に国指定の天然記念物となった。
ヒトツバタゴは、ヒトツバ・タゴと区切る。ヒトツ・バタゴと思っていたらそうじゃなかった。よく似たトネリコが複葉なのに対してこれは単葉(一葉)だからヒトツバ。タゴは田子と書き、トネリコの方言で、ヒトツバ・タゴとなる。江戸時代の尾張の植物学者水谷豊文が名づけたと言われている。 ナンジャモンジャの由来は、かつて見慣れない木で誰もその名前を知らなかったため、何じょう物じゃ、何ものじゃ、ナンジャモンジャというように転化していったのだとか。やや作り話めいているけど、柳田国男に言わせると、神社なんかにある御神木で名前が分からないようなものはみんなナンジャモンジャと呼ばれていたんだとか。 花は近くで見ると、4枚に深く切れ込んだ独特の形をしている。黒い実もなる。
ところで、風に舞う白い花吹雪は見られたかというと、それがさっぱりだった。山のふもとにあって、ここは風があまり吹かない場所だったのだ。残念ながら。時期的にも出遅れた。 見頃は満開を少し過ぎたあたりだ。5月の15日前後だろうか。そのときなら真っ白に染まった木と、舞い落ちる花吹雪を両方見ることができるだろう。ぜひ見たくなったという人も、来年のお楽しみということにしておいた方がいいかもしれない。岐阜県の蛭川村のものならぎりぎり間に合うかどうか。 犬山のここは、明治村の南、本宮山のふもとに位置していて、453号線を北へ向かって走っていると、左側に「ヒトツバタゴ自生地」という手書きの小さな立て札があるので、そこから細い道を入っていった先にある。駐車場はたぶんなくて、路肩に数台とめるスペースがあるので、そこにとめる。 ナンジャモンジャよ、私の写真熱が燃え尽きてなければ、また来年会いに行きます。
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