 Canon EOS 10D+EF75-300mm(f4.0-5.6), f4.5, 1/500s(絞り優先)
わっ、なんだこいつ、何か変。異常にモコモコの体つきと、白粉を塗ったような顔のバランスが悪っ。足もとを見ると、妙に頼りなくて、大きなぬいぐるみの中に小さな子供が二人、獅子舞状態で入ってるような感じだ。なんか、笑える〜。何者だろうと思ってプレートを見ると、アルパカとある。アルパカ? どっかで聞いたことあるような。ああ、そうか、あのセーターとかのアルパカだ。なるほど、このモジャモジャの毛が刈られて編まれてセーターになるのか。じゃあ、向こうにいる黒いのは刈られたあとの状態なんだな。ビフォー・アフターでまったく別の生き物みたいじゃないか。 アルパカのセーターを持っていても生きてるアルパカを見た人は少ないんじゃないだろうか。日本の動物園でも数ヶ所でしか飼われてないそうだ。私も東山動物園で初めて見た。というか、そもそもアルパカという生き物が存在してることすら意識したことがなかった。アルパカもカシミヤも持ってないし。 ということで、今日はアルパカについて勉強してみた。そして、とても興味深い生き物だということが分かった。
アルパカは南米ペルーのアンデス地方とその周辺の海抜3,500〜5,000メートルの高地で暮らすラクダの仲間だ。ヤギっぽい気がしたけど違った。 リャマと非常に近い生き物で、荷物運び専門のリャマと、毛をとるためのアルパカと、はっきり分かれている。どちらもグアナコから分かれたもので、アルパカはビクーニャを改良したものらしい。起源は北アメリカで、1,500万年ほど前からいたといわれている。1,500万年前なんて言われるとピンと来ないけど、世紀に直すと、15万世紀前ということになるから、とにかくずっと昔だ。1年を1円とすると、100円貯めて一世紀。アルパカは、1年で1円貯金して、すでに1,500万円溜めたということだ。気の遠くなるほど長い年月を生き延びて、今21世紀の日本の動物園で過ごしてるというのも考えてみると不思議な話だ。 すでに紀元前4世紀くらいには家畜化されていたようだ。野生のものは絶滅してもういない。アンデスの高地で放牧されていて、生息数はよく分かってないようだ。現在は、アメリカ、ヨーロッパ、ニュージーランドなどでも飼われている。 毛並みは主に茶、黒、白、灰色で、細かく分けるともっと変化に富んでいるという。種類としては、毛並みでファカヤ(ワカヤ)とスーリー(スリ)の2種類に分けられている。 体長は高さ1メートルほど、長さ1.5メートル前後で、体重は60〜100キロくらいと幅がある。毛のあるときとないときでずいぶん変わってくるだろう。 見た目通りにおとなしい草食。でも、たまに気に入らないとツバを吐きかけてくるらしい。 寿命は10年から12年くらい。
アルパカの毛が優れているのは、その生息環境によるところも大きい。アンデスの高地は、昼間は強い直射日光が降りそそぎ、強い風が吹き抜け、夜は凍えるような寒さになる。その過酷な条件で生き延びるために暖かくて丈夫な毛を身にまとうのだ。だから、動物園で飼われてるアルパカからは高級な毛は取れないんじゃないだろうか。 毛の性質としては、絹のような光沢と肌触りで、重さは羊毛の半分、暖かさは2倍、更に吸湿速度も2倍と、非常に優れている。毛玉もできにくく、丈夫で長持ちというのもアルパカの特徴だ。 特に生まれてから2度目に刈る毛が最高とされ、この毛で編んだセーターはベビー・アルパカ・セーターと呼ばれている。大事に着れば、孫の代まで着られるだろう。 高級セーターというとカシミアと思うけど、アルパカだってなかなか負けていない。実用性ではアルパカの方が上と言える(カシミアというのはもともと、インドのカシミール地方のカシミア山羊の毛から織られたものを言った)。 生産量は年間約5万トンほどで、90ぺーセントはペルー産だ。かつてアルパカは、第二次大戦までイギリスが独占輸入国だった。それでアルパカセーターというとイギリスというイメージが強いのだ。現在は世界に向けて輸出されている。ペルーは、マチュピチュとナスカの地上絵とアルパカで食ってると言っても言い過ぎではないかもしれない。
古代インカ帝国の王室では、アルパカをペットとして飼っていたそうだ。特にこれといった仕事もせず、芸もない彼らを見て、王様たちはどう思っていたんだろう。こいつめ、今日も白くて可愛い顔しておるのぉ、とか思っていたんだろうか。手元に置いて、手触りいい毛並みを日がな一日撫でて、この感触がたまらんのぉ、とか思いつつ。 あるいは、見てるとなんとなく脱力感を誘われる風情に心を和ませていたのかもしれない。 ひょっとしてインカ帝国の王様もアルパカセーターを着てたんだろうか。もし着てたとしたら、王冠にセーター姿というギャップもなかなか愉快だ。
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