現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
ツバメで修行してカメラ版ツバメ返しを会得すべし 2006年6月3日(土)
2006年06月04日 (日) | 編集 |
飛ぶツバメ

Canon EOS 10D+TAMRON 28-300mm XR(f3.5-6.3), f6.3, 1/250s(絞り優先)



 ツバメは日本人にとって身近な野鳥ベスト5に入るだろう。ハト、カラス、スズメなどとともに。街にツバメが飛び始め、民家の軒先などに巣作りを始めると、ああ、もう初夏なんだなと感じる人も多いと思う。しかし、このツバメが他の身近な鳥と決定的に違うのは、彼らはれっきとした渡り鳥だということだ。冬の間、暖かい東南アジアの島々やオーストラリアで過ごしていたツバメは、春になると何千キロもの距離を飛んで戻ってくる。あんな小さな体のどこにそんな持久力があるのか不思議だ。
 ツバメの飛行能力はかなり高い。平均時速50キロ、渡りの時は最高速度200キロくらいまで出せるという。そんな高速飛行で一日300キロも移動する。名古屋-東京間を一日で飛んでくるということだ。しかも、単独飛行で。ツバメの渡りがあまり話題にならないのは、群れて飛んでこないからというのもあるだろう。海面すれすれを一羽で低空飛行してくる。
 そんな苦労をして一年に2度も渡るツバメだけど、不思議と悲劇性は弱い。苦労が顔に出ないタイプというのか、ツバメにまつわる悲しい話というのは聞かない。人間にとっての害虫を食べてくれる益鳥で、人間と近いところで生活してることもあって、昔から人はツバメをけっこう大事にしてきた。家に巣を作ると縁起がいいなどと言って。人間の生活圏に近い賑やかな場所に巣作りをするのは、他の鳥に狙われないようにするためのツバメの知恵なのだけど、これほど人間と相性がいい野鳥は他にいないような気がする。姿がさほど美しくなく、鳴き声がきれいじゃないこともツバメにとっては幸いした。おかげでカゴの中で飼われずに済んだ。

 日本には5種類のツバメがいるといったら意外に思う人も多いかもしれない。ツバメって1種類じゃないの? と少し前まで私も思っていた。
 普通に見られるのは、いわゆるツバメだ。私たちが普段目にするものはたいていこれだと思って間違いない。他には、山や海の岩場などにいるイワツバメ、体の赤い部分が目立つコシアカツバメ(これは南に多い)がいて、あと、北海道にはショウドウツバメ、南西諸島にはリュウキュウツバメがいる。
 大きさは約17センチ。背中は黒と思いがちだけど、光が当たると光沢のある青をしていることが分かる。のどと額に少し赤があり、腹は白色。尾羽は二股になっていて、長い。この白黒ツートンの模様と尾の様子から、燕尾服という言葉が生まれた。ツバメは漢字で書くと燕だ。
 エサは飛びながら飛んでいる虫を捕らえる。カ、ハエ、アブなど、人間から見て苦手なものを食べてくれるありがたいやつだ。それ以外にも、蛾や蝶、トンボなども食べる。なんだかんだで、一日に300匹くらいの虫は食べてるんじゃないかということだ。もし、日本からツバメとコウモリが姿を消してしまったら、虫の数がとんでもないことになってしまう。自然というのは、つくづく上手くできていると感心する。

 日本にいる間に、たいてい春先と初夏に2度、子育てをする。卵を産んでから温めて孵して子育てをして巣立ちさせるまで約ひと月半。二度目のヒナが巣立ちを終えると、親鳥も若鳥も、民家の近くを離れ河原などに集まっていく。数十匹が数百匹になり、最後は数千、数万になることもあるという。そして、秋風が吹き始める頃、南に渡っていく。
 何故危険を冒してまで渡るのか? それはツバメに訊かなくては分からないし、ツバメ自身もよく分かってないのかもしれない。エサの問題もあるのだろうけど、それだけではないような気もする。単に損得勘定のようなものだけではなく、もっと本能的、衝動的に突き動かされるものがあるんじゃないだろうか。人間の言葉で言えば、旅とかロマンとか冒険のような想いが。
 ツバメが巣立ったあとの巣を見てふと思う人がいるかもしれない。燕の巣って、中国じゃ高級食材なんだよな、と。しかし、あれはまったく別のアナツバメの巣だ。日本にいるツバメの巣なんてスープに入れても、泥と枯れ草とツバメの巣が溶け出すだけなので、間違ってもスープにしてはいけない。そんなやつおらんやろう〜(大木こだま)。

 このツバメの写真を撮りながら思ったのは、ツバメって飛んでる鳥を撮る練習台には最適なやつだな、ということだった。飛ぶスピードは速く、動きも不規則ではあるけど、なんといっても何度も何度も飛んでくれるのがありがたい。飽きるか、力尽きるか、メモリカードが一杯になるか、デジが熱暴走するまで撮ることができる。場所は、街中ではなく、開けた田んぼや河原なんかがいい。上手く流し撮りなんかが決まると、とっても嬉しい。
 飛んでるツバメを相手に剣の修行をして、佐々木小次郎は必殺のツバメ返しを編み出したと言われている。写真もある種の修行とするならば、その精神はカメラでも受け継がれていい。そして、カメラ版ツバメ返しを体得したら、次は宮本武蔵に習って二刀流の修行だ。カメラを2台、両手に持って、左右の目で両方のファインダーを同時にのぞき、そして2羽の飛んでるツバメを撮る。そのときこそ、田んぼの中心でこう叫ぶのだ。小次郎破れたり! と。
 って、そんなことできるのか!?




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