現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
6,000種類の蛾を見分けられる人になりたくはないけれど 2006年6月12日(月)
2006年06月13日 (火) | 編集 |
ヒロオビトンボエダシャク

Canon EOS 10D+EF75-300mm USM(f4-5.6), f5.6, 1/30s(絞り優先)



 夕方、高い木の上のあたりを白黒の蝶らしきやつがヒラヒラヒラヒラ飛んでいた。撮れるもんなら撮ってみなと私を誘うように。しかしこいつがなかなか捉えられない。そんなに動きは速くないのに、飛び方が不規則でピントを合わせる以前にファインダーの中に入れられない。4、5匹(私は専門家じゃないので頭とは数えるのは照れくさい)もいたのに、あっちを狙えばこっちが近づき、こちらに切り替えると逃げられ、さんざん翻弄されて、そして誰もいなくなった。近くを通りかかった黒猫がそんな私を見てニャアと鳴いた。ならばと黒猫を撮ろうとしたら、それにも逃げられた。ばぁさん、俺ぁ撮れないよ。
 しょうがない、あきらめるかと思ったとき、そいつらはそこにいた。写真のこいつらだ。ちょっと失礼して連写しまくり、なんとか一枚ぶれずに撮れた。何者かは知らないけど、とりあえず撮れたことでよしとしよう。できることなら飛んでるところを撮りたかったけど、それはまた次回。ばぁさん、あの黒い猫は来てるだろうなぁ。

 帰宅後、早速名前を調べることにした。これだけ特徴がはっきりしたやつだからすぐに調べがつくだろうと思いきや、これが意外と苦戦した。触覚の先がふくらんでないのと、翅を広げてとまっていることから蛾だというのは分かった。けど、蛾の種類というのは気が遠くなるほど多い。所属グループも分からないまま調べようとするとすごく大変なのだ。ネットの写真で最初から見ていって、500枚くらいでようやく見つけた。こいつか、ヒロオビトンボエダシャク。
 よく似たトンボエダシャクは、体の黒と黄色の模様が四角くて規則的なのと、白い斑点が小さいことで区別がつく。

 分布域は、日本の北海道から九州、屋久島あたりまでと、朝鮮半島、中国。
 体長は翅を広げたときで5センチ前後くらい。
 初夏から夏にかけての昼間飛び、夕方特に活発になる。クリの花の蜜を吸うことが多いというかなり変わり者だ。
 幼虫は尺取り虫で(蝶は一般的にイモムシ)、成虫の体の模様とよく似ている。ツルウメモドキなどを食べて育つ。
 名前のトンボは、細長い体と、前翅と後翅の模様が同じところからきているらしい。全体的に見てあまりトンボっぽくはないのだけど。

ヒョウモンエダシャク

 別の場所でよく似た蛾を見つけた。ヒロオビトンボエダシャクという手がかりがあったので、今回はすぐに名前が判明した。ヒョウモンエダシャク。言われてみれば模様はヒョウに似てなくもない。
 しかし、エダシャク亜科というのは、今後見つけたとしても調べるのに苦労しそうだ。300種類以上いるというから、蛾の中のエダシャク亜科だけでポケット図鑑が作れてしまう。蝶やトンボだけでもいっぱいいっぱいなのに、蛾まで学習の範囲を広げると手に負えなくなりそうだ。今回はたまたま分かったけど。

 これはどうやら日本の北海道から九州あたりまでしか分布してない国内蛾のようだ。屋久島に亜種がいるらしい。
 大きさは、ヒロオビトンボエダシャクよりもひとまわり大きいような印象だった。
 こいつについてはあまり情報がなく、何を食べてるかよく分からない。太い木の幹によくとまってるというから、樹液でもなめてるのだろうか。
 ヒョウモンエダシャクの一番の特徴は、なんといっても毒を持っているということだ。毒蛾というのは思ってる以上に少ないものだけど、これは数少ない例外と言える。
 幼虫のときにアセビやレンゲやツツジなどを食べるそうなのだが、この中のアセビの毒を体内に蓄積するという。アセビは漢字で書くと馬酔木、馬でも葉を食べると酔ったようになるというほどの毒性があるので、他の生き物は近づかない。それが何故かヒョウモンエダシャクだけは平気らしいのだ。そのメカニズムはよく分かってない。おかげで、ヒョウモンエダシャクも鳥や他の生き物に食べられることなく安全に暮らすことができる。人間を刺したりするようなことはないだろうけど、あまり触らない方がいいかもしれない。

 蛾の世界というのもなかなかに奥深いものがある。種類も多いし、いろんな模様のものや、特色のあるものがいる。専門家や愛好家も少なそうだから、蛾コレクターはある意味狙い目かもしれない。エダシャク亜科300種類言えるもんねー、なんていう人がいたら私は尊敬したい。世間一般では評価されなくても。
 少し前までは、蝶かと思って撮ったら蛾だったと分かるとがっかりしたものだけど、最近はそんなことはなくなった。蛾は蛾で面白いし興味深い。勉強してみると意外な発見があったりもする。今回の2種類のエダシャクのように。
 ここはひとつ、蛾地位向上委員会を設立して、みんなに蛾を好きになってもらうようひそかに地下活動をしてみようかと思い始めた(なんでアンダーグラウンド?)。ただいま会員募集中です。一番好きな蛾について原稿用紙2枚程度にまとめて持ってきてください。名古屋栄地下クリスタル広場で待ってます。




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