現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
スナメリは優美に白い体をくねらせ静かに微笑む 2006年6月15日(木)
2006年06月16日 (金) | 編集 |
白いスナメリ

Canon EOS 10D+EF50mm(f1.8), f2.0, 1/80s(絞り優先)


 
 クジラ目歯クジラ亜目ネズミイルカ科スナメリ。日本近郊に棲む最も小さなイルカだ。あるいは、一番小さなクジラという言い方もできる。
 クジラとイルカの境目は、ワシとタカ同様、実は曖昧だったりする。基本的に大きなものがクジラで、小さくてすばしっこいやつがイルカと呼ばれる。はっきりとした特徴の違いや境目はない。
 スナメリの姿を見ると、これはやっぱりクジラだろうと思う。背びれのないクジラ体型と顔もイルカとは違う。「少年H」に男姉ちゃんというのが出てきたけど、その方式でいうとイルカ・クジラとでも呼びたくなる。

 かつてスナメリは、日本のあちこちで普通に目にすることができる身近な海の生き物だった。1970年代までは。その後、埋め立てや公害、船舶の急激な増加などによって環境が大きく変わり、近年その数を急激に減らしてきている。
 生息域は、ペルシャ湾から日本にかけてのインド洋、太平洋の沿岸で、日本では九州、瀬戸内海、伊勢湾、仙台湾あたりに集中している。日本海側でもまれに見られる。
 多かったときは瀬戸内海だけでも5,000頭はいそうだ。それも最近は数百頭まで減ってしまったという。中部地方では、三河湾と伊勢湾で3,000頭ほどいるといわれる。2000年から2002年に行われた初の全国調査では、1万8,000頭プラスマイナス5,000頭くらいという予想結果が出た。この数字だけ見るとまだまだ大丈夫と思うけど、減少速度を考えるとあまり楽観はできない。
 昔は漁港でも船に乗っていても当たり前のように見られたらしいけど、最近ではめったに見られなくなったそうだ。

 体長は160〜170センチ、体重は50〜60キロと、人間の中肉中背の男子と同じくらいだ。
 体色は白っぽい灰色で、子供のときは黒っぽい。
 体が柔らかいのが特徴で、首だけ後ろに回すこともできる。水中ではよく体をひねるようにして泳いでいる。
 頭のてっぺんに鼻の穴がひとつあって、目の後ろに開いている穴が耳だ。歯もちゃんとある。
 体は、ヌメヌメのツルツルという感じではなく、触るとホットケーキみたいな弾力性らしい。
 スナメリの姿を水面から見られるのは、空気呼吸をしてるからだ。15秒から30秒くらいごとに浮上してきて、頭の上の鼻の穴で呼吸をしている。お馴染みのクジラたちのように潮を吹いたりはしない。
 水深50メートル以下の浅いところで暮らしていて、遠洋に出たり、回遊することはない。だから、地域ごとに個体差がけっこうあるという。出産の時期とか。底が砂地のきれいな海を好む彼らだけど、例外的に中国の揚子江にもいるらしい。どうして淡水でも生きていけるかなど、詳しい生態はよく分かっていない。
 寿命は15年から20年くらい。
 エサは、魚や甲殻類、イカ、タコなどで、食べられるものは何でも食べるという雑食性。カニやエビなどもバリバリ食べる。
 スナメリの語源は、砂の上をはい回ってるエビなどを食べている様子が砂をなめてるように見えるところから来てるんだとか。ホントかな。

 通常、1頭から数頭単位で行動しているスナメリたち。日本では、仙台湾から東京湾、伊勢湾から三河湾、瀬戸内海から響灘、有明海から橘湾、大村湾と、大きく分けてこの五つの海域に分かれて暮らしていると言われている。
 人口飼育としては三重県鳥羽水族館が有名だ。その他、宮島水族館、南知多ビーチランド、須磨海浜水族園で見ることができる。
 スナメリを見よう、というちょっとしたツアーのようなものも各地で行われてるようで、フェリーやボートに乗って見に行くんだそうだ。
 愛知県では、鳥羽と知多を結ぶフェリーからや、蒲郡、一色、佐久島あたりでよく見られるらしい。私もいつか、野生のスナメリを見てみたい。
 水槽の中で優雅に泳ぎ回る彼らをしばらく眺めていた。そんな私に彼らは気づいていただろうか。なんだ、こいつ、ひとりで来てるぜ、さかなクンかよ、と思ったかもしれない。その口元は静かな微笑みをたたえていたように見えた。




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