 Canon EOS 10D+EF75-300mm USM(f4-5.6), f5.6, 1/100s(絞り優先)
池に浮かんでいる鳥を見たとき、きっとカモか何かなんだろうなと思ったのはおととしまでの私。今はあいつは何者だ、と厳しい目で見つめる人となってしまった。常に首から双眼鏡をぶら下げている人の2歩手前くらいまできている気がする。今はまだ、デジの望遠レンズを目一杯伸ばして確認するにとどまっている。それでも、人がたくさん歩いている公園の池では充分怪しいのだが。 写真のこいつはカイツブリ。いつも目がテンになって驚いているような顔をしてるけど、たぶんそうじゃない。目が小さい割に人はよく見えるらしく警戒心が強い。ある一定の距離より近づくと、潜水しながら遠ざかっていく。私は怪しい者じゃないから逃げないでくれーという心の声は届かない。公園の池でそんな筒みたいなものをこっちに向けてるやつは充分怪しいぜ、とカイツブリは思っているだろうか。
東北から北海道では夏鳥、関東以南では留鳥なので一年中見ることができる。平野の池や堀、流れの緩い河川で暮らしている。都会の公園でもいるところには普通にいる。冬はまれに海にいることもあるそうだ。 世界的にも珍しい鳥ではなく、砂漠や寒冷地以外はたいていのところにいるという。一般的な知名度は低いと思うけど、水鳥の定番のひとつだ。 カイツブリは鳥としての歴史も深く、カイツブリの仲間はすでに7千万年前から地球にいたといわれている。中国4千年の歴史の1万7千500倍の歴史があるということだ。 カイツブリ科の鳥は北極と南極以外の全大陸にいて、その中で、日本には5種類のカイツブリがいる。カイツブリ、アカエリカイツブリ、ハジロカイツブリ、カンムリカイツブリ、ミミカイツブリ。亜種は2種類。カイツブリの亜種とリュウキュウカイツブリ。
大きさは25センチくらいと、ハトより少し小さいくらい。遠くからしか見えないのでもっと小さい印象を受ける。 歩きは大の苦手なので、一生のほとんどを水の中で過ごす。泳ぎと潜りは大の得意だ。翼をピチッとたたみ込み、幅広のヒレがついた足でぐいぐい泳いで潜る。足はぐにゃぐにゃで方向転換も自由自在。更に、尾のところから脂肪を分泌して全身の羽毛に塗りたくって防水加工もする。陸はもう捨てた、おいらは水の中で生きるんだという意気込みが感じられる体となっている。 水からあがったときの足を見ると、太くて短くて、大きな足ヒレを付けていてなんとも不格好で笑える。人が地上で足ヒレをつけて歩くようなものだ。想像しただけで歩きづらいことが分かる。 多少飛べるようだけど、飛ぶのも苦手だ。 エサは水中の魚や甲殻類などを潜ってとる。水面に落ちている虫や木の実を拾い食いすることもある。
繁殖期は長く、春先から秋にかけて年に2、3度行う。一夫一妻で、オスメスで協力し合って子育てをする。 陸では動きがままらないから、巣も水上に作る。水草の上にたくさんの葉っぱなどを敷き詰めてそこに卵を産んで、オスメス両方が温める。エサを取るために巣を離れるときは、巣に葉っぱをかぶせて隠す習性があるそうだ。なかなかに賢い。 ヒナが親の背中に乗ったり隠れたりするというのもカイツブリの特徴のひとつで、これはなかなかにかわいい。羽毛の間から顔をのぞかせている様子は、鳥というより動物みたいだ。その状態で敵が来たら、ヒナを背に乗せたまま潜水して逃げる。
カイツブリという名前は、水を掻くのカイと潜るという意味のツブリでカイツブリとなったんだとか。ツブリは潜るときの擬音ともいう。 日本でも昔から親しまれていて、古くはニオ(鳰)と呼ばれ、歌にもたくさん詠まれている。 琵琶湖には昔からこいつがたくさんいたようで、「鳰のうみ」といえば琵琶湖のことだったとか。松尾芭蕉は琵琶湖とカイツブリが好きだったようで、こんな句を残している。
さみだれに 鳰のうき巣を 見にゆかむ
江戸で梅雨の雨音を聞きながら、琵琶湖のカイツブリの浮き巣はどうなっただろうなぁ、見に行きたいものだなぁ、と思っていたのだろう。 私は何年か前、琵琶湖を車で一周したことがある。半分過ぎた頃から泣きそうだった。あまりの広さに絶望的な気持ちになって。私は琵琶湖の広さを侮っていた。戻るに戻れないし、行ったら行ったでまだ倍あるし、一周したあと名古屋までまた国道で帰られなくて行けないしで、後半は意識がもうろうとしていた。大津、京都、草津あたりまではぼんやり記憶があるけど、それからあとはよく覚えてない。よく無事に帰ってきたものだと思う。 琵琶湖の東岸から見た夕焼け空は最高に素敵だった。でも、わざわざカイツブリを見に琵琶湖まで行きたいとは思わない。もちろん、もう一回一周しろと言われても断然ことわる。もし、琵琶湖へ行ってカイツブリに出会ったら、私は会いに行けないと伝えておいてください。
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