現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
あっちでネジネジ、こっちでネジネジ、たまにネジネジしない 2006年7月4日(火)
2006年07月05日 (水) | 編集 |
ネジネジネジバナ

Canon EOS 10D+TAMRON 28-300mm XR(f3.5-6.3), f5.6, 1/400s(絞り優先)



 ネジバナを見ると中尾彬を思い出す。中尾彬はネジバナの存在を知っているだろうか。
 どこにでも生えている花も、興味を持たなければ目に入ってこないもの。私がこの花のことを知ったのは去年の今ごろだった。それまで物心ついて30年以上知らずに過ごしてきたのに、知ったとたんあちらでもこちらでもあらゆるところで目にするようになった。自分の目に映る真実なんてそんなものかもしれない。
 ネジバナは野生のランだと言ったら意外に思うだろうか。ランといえば、大御所芸能人の楽屋にあるものと相場が決まっているという思い込みは間違いだ。元々地球上のあらゆるところで咲いていた。ただ、近年野生のランが減少または絶滅傾向にある中、たくましく生きているネジバナは例外的なランに違いない。完全に雑草扱いで、芝刈りと共にちゅうちょなく刈られてしまう。それでも減らないんだからよほど生命力が強い。
 初夏になって初めて目にするとちょっと嬉しいけど、すぐに飽きて、見つけても、ああ、ネジバナかと相手にしなくなる。人の心ってそんなもの。

 日本では北海道から九州まで広く分布してしているネジバナは、北方領土から中国、ヒマラヤ、インド、マレーシア、オーストラリアまで勢力を伸ばしている。
 沖縄にはないらしいのだけど、その代わりナンゴクネジバナがある。伊豆諸島や奄美大島にあるのもそれで、写真で見ると太めの茎がネジネジしていてその周辺に小さな花がくっついてるような感じだ。通常のネジバナには花序に毛があるのに対して、ナンゴクは毛がないという違いもある。
 生息域は、芝生などの明るい草地から湿地帯までと幅広い。普通、好みの水分量くらいは決まってるものだけど、ネジバナの場合、乾いていてもかなり湿っていても平気らしい。ただ、芝生などでは背丈が5センチから10センチくらいなのに湿地では20センチくらいになるところを見ると、どちらかというと湿ったところの方が好きなようだ。
 花の時期は5月から8月までと長く、秋になって咲いてくるのもいて、そいつは30センチにもなることがある。この一貫性のなさというのもネジバナの特徴で、ネジネジが左巻きのもいれば右巻きのもいて、真っ直ぐのやつさえいる。花色も、薄いピンクから濃いピンクまで多様で、白花もさほど珍しくない。一体ネジバナの設計図はどうなってるんだと思う。巻く方向くらい統一したらどうなんだ。

 名前の由来は文字通りネジネジ咲くからだと想像がつく。漢字では捩花。またの名をモジズリ(捩摺)。これも同じような意味だ。
 百人一首にも採用されている河原左大臣の歌、「みちのくの しのぶもじずりたれ故に 乱れそめにし われならなくに」がよく引用される。ただ、これで歌われているもじずりが花のモジズリかといえばそうでもなさそうだ(一般的にはこの花のことだと言われてるようだけど)。
 ネジリバナとも呼ばれる。

 ネジバナがたくましく生き延びている理由は、花の小ささから虫に受粉してもらうことを半ばあきらめて、自花受粉するようになっているというのがある。そして、種はとても小さくて軽いので、そよ風にさえ乗って遠くに飛ばされる。落ちたところが乾いていようと湿っていようと、自分を環境に合わせて根を張り、茎を伸ばし、花をネジネジ咲かせる。温室で手をかけないと育たないランが多い中、見上げた根性と言えるだ。鈴木啓示の草魂みたい。
 花は下から上に登るように咲いていく。写真でも下の方の花が終わって、上の方にまだ色づいてないつぼみが残っているのが分かる。花が一番上まで咲ききってアガリになると梅雨が明ける、なんてことが言われたりもする。実際にそんな上手いタイミングで咲くわけはないけど、この咲き方は面白い。花が下から上に咲いていく様子をビデオに録画して早回しにしたら、導火線を伝う花火みたいに見えるんじゃないだろうか。最後はポンッと弾けて消えたら面白いんだけど、そんなことはない。
 そうして、ネジバナは今日もあちこちで思うがままにネジネジしている。




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