現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
丸ポストは22世紀の日本の風景の中に溶け込めるか 2006年9月30日(土)
2006年10月01日 (日) | 編集 |
常滑の丸ポスト

Canon EOS kiss3+EF28-105mm(f3.5-4.5)+Kodak ULTRA COLOR 400UC



 知多の海を見に行ったとき、海岸線を走っていると対向車線沿いに丸ポストを見つけた。と同時に神社まで発見。一挙両得とはこのこと(ちょっと使い方が違う)。少し先で強引なUターンをして引き返した。
 久しぶりに見る丸ポストは記憶の中の姿と変わってはいなかった。でも、いつどこで見たんだろう。はっきりとした場所やそのときの光景を思い出そうとしても思い出せない。丸ポストに郵便を投函したことがあるのかどうかさえも記憶があやふやだ。ないような気もする。でも、確かにかつてどこかで見た。それも珍しいものとしてではなく、あっても不思議ではないものとして。一体いつから消えていってしまったんだろう。現在の私の行動範囲内に丸ポストは存在しない。三重の田舎でもないように思う。

 写真のものは、常滑市の西之口神明社の前にあった。シチュエーション的にやや微妙なものはあるけど、違和感はない。むしろ、ここに新しい角形ポストが設置されていたらその方が不自然に思えるだろう。なんでこの場所に、と。
 調べてみると、全国に現役の丸ポストは5,000本とか6,000本とかあるそうだ。思ったより多い。ポスト全部では約16万本だという(現在はもっと減って10万本くらいになっているという話もある)。5,000もあればそんなに珍しいものというほどではない。日常的にいくつも目にしてる人もいるのだろう。
 意外といえば愛知県は全国でも多い207本の丸ポストがあるらしい。全然知らなかった。そんなに見たことないぞ。名古屋市内にも3本あるようだ。覚王山日泰寺の参道、旧東海道の有松町、有松郵便局前と。有松も日泰寺も行ってるのに見なかった。丸ポストの存在感というのは、思ってるより弱いものなのかもしれない。
 田舎の方に行けばまだたくさん残っているのかといえば必ずしもそうではなくて、地域的に偏りもあるようだ。東京にも170以上あるという。23区内でも、墨田区や葛飾区、池袋西武内の郵便局や新宿My City内の郵便局にもあるというから、丸ポストは侮れない。
 一番の丸ポスト天国は八丈島だ。島に20本以上あるというから、丸ポストファンにはたまらない。私の知らないところで丸ポストについて熱く語り合う人々がいて、そういう人たちは八丈島でオフ会とかしてるに違いない。一緒に写真を撮ったり、撫でたり、磨いたりしてるんだろうか。それを見た八丈島のおじいちゃんおばあちゃんは何事だろうと不思議がっている光景が目に浮かぶようだ。
 全国的にどんどん減っていっているのは確かで、昨日まであった丸ポストがいつの間にかなくなっていたなんことも日本のどこかで起こっているのだろう。

 日本で初めて郵便制度が作られたのは明治4年(1781年)のことだった。ポストは「書状集め箱」という名前で、東京12ヶ所、京都5ヶ所、大阪8ヶ所、東海道の宿場町62ヶ所に設置されたのだった。
 それが好評で、翌明治5年には全国に広がり、たくさんのポストが作られることになる。当初ポストは赤ではなく黒くて四角い箱だった。ポストが赤になったのは、明治21年になってからだ。黒いと日が暮れてから見つけづらいと前々から苦情が出ていたそうだけど、昔は町も暗かったからその訴えは当然だろう。でも、15年もその苦情を聞き入れなかった郵便局って、とも思う。
 ちなみに、世界のポストは赤は少なくて、アメリカは青、ドイツは黄色、中国は深緑など、さまざまらしい。イギリスは赤だけど。
 日本でも一部赤以外のポストがあるそうだ。速達用の青色とか、集配所の国際郵便用は黄色だったりするようだ。その他、観光名所などではその場所にちなんだデザインのポストなどもある。景観保存地区などはその風景に合わせた色が使われていたり。
 写真のいわゆる丸ポストが初めて登場したのは、昭和24年、終戦からようやく立ち直り物資も出回るようになってからのことだ。もし戦中にこんなものがあったら、真っ先に持っていかれて武器などを作るのに利用されてしまったことだろう。
 正式名称は「郵便差出箱1号丸型」。高さ135cm、直径40cm、土台の石(根石という名前らしい)高さ20cm、直径60cmというのが一応規格となっているらしい。ただ、微妙にデザインが違っているような気もするから、製造メーカー独自のオリジナリティというのもどこかにあるのかもしれない。よく見ると製造メーカーも記されているらしいから、そこまで興味が向かえばもう立派な丸ポスターだ。どこかが一手に引き受けているかと思いきや、たくさんのメーカーが作っていたようで、松下電工製なんてのもあるらしい。
 写真の丸ポストがちょっと変わってるのは、取集口が右を向いているところだ。普通これは正面を向いているものが圧倒的に多い。作りとしては、下の部分が回転するようになっていて、設置するときに向きを決められるので、設置場所によっては左を向いていたり、向こうを向いていたりもするらしい。
 現在、ポストの種類は基本的に15種類とのことだ。1号、2号、3号と名前が付いていて、私たちが最近よく目にするようになった2ヶ所の差し出し口があるのは、12号と13号だ。このポストをみて、「おっ、郵便差出箱12号だな」などと口走ったところを人に聞かれてしまうと、郵便マニアと思われてしまう恐れがあるので注意したい。

 丸ポストの将来にあまり明るいとは言えない。差し出し口が狭くて手紙とかしか入れられないというのに加えて心理的な問題点もある。もし、今大事な手紙を手に持っていて、道路のこちら側には丸ポスト、渡った反対側には新しい四角ポストとあったとき、あなたはどちらに手紙を入れるだろうか。私は迷いなく道路を渡る。だって心配なんだもの。タバコ屋なんかの前にあるちっちゃいやつにも私は入れないようにしている。届いても届かなくてもいいやなんてものを送ることはないわけで、投函しかからには確実に届けてもらわないと困る。そうなるとなるべくたくさん利用されて忘れられないところに入れておこうという心理が働くのが人情というものだろう。
 ただ逆に、田舎のひなびた丸ポストにラブレターを投函したら、10年後くらいにひょっこり相手のところに届けられたりしたら面白いだろうなと思う。10年ポスト、そんなものがあってもいい。
 それにしてもポストってのは、ものすごくアナログなシステムだなと今更ながら思う。まるで21世紀的じゃない。紙に手書きした手紙を封筒に入れて切手を貼ってポストに投げ入れて、それを郵便屋さんが集めに来て仕分けして自ら届けるという、オール人力のこの仕組み。果たして22世紀までポスト制度は生き残ることができるのだろうか? 不便さをあえて楽しむアナログテイストとして残っていくならそれもいい。
 丸ポストは郵政民営化を生き延びることができるのかどうか。もし、民営化後、全国から一斉に姿を消すようになったら、そのとき丸ポストファンたちは小泉純一郎を恨むことになるだろう。手遅れと分かっても造反組の人たちに投票したくなるに違いない。それとも、ますます貴重になって幻のようになれば、丸ポスターの人たちは喜ぶことになるだろうか。
 話飛ぶけど、丸ポストを見ると、抱えて引っこ抜けそうな気がするのは私だけ?




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