 OLYMPUS E-1+Super Takumar 50mm(f1.4), f4.0, 1/40s(絞り優先)
好き嫌いを別にした相性というものが人と人の間にあるように、人と場所の間にも確かに相性といったようなものが存在する。そういう意味で、私と岩屋堂との相性はよくない。かなり悪いと言った方がいいのかもしれない。今年の春の初め、セリバオウレンが咲いていると教えてもらって行くもどうしても見つけられず、もう一度行っても尚見つからなかったり、岩巣山に登れば途中でへばって登頂ならずに引き返し、野鳥を探しに行ったら一羽も写真を撮れずに終わったりと、とにかく運が悪いというのかタイミングが悪いというのか、いい目に合ったことがない。私としては決して岩屋堂は嫌いじゃないのに、向こうが私を好きではないようなのだ。打っても響かないし、ノックしても扉は開かない。拒まれているというほど激しいものは感じないのだけど、なんとなく受け入れられてないような感じがある。被害妄想と言えばそれまでなのだけど。 それでも懲りずに今回また行ったのは、まだ見ぬ憧れの野草ダイモンジソウが自生しているらしいという不確かな情報を手に入れたからだった。何!? ダイモンジソウが? それはもう行ってみるしかあるまい。もし見つかれば今までしっくりいってなかった私と岩屋堂の仲も一気に改善するかもしれないという思惑もあった。 しかし、トップにダイモンジソウの画像が来てないことからも分かるように、今回もまた岩屋堂は私に微笑んではくれなかった。どのあたりに咲いているとかの詳しい情報がなかったこともあるけど、そういうときでも相性のいい場所だと思いがけず向こうから呼び寄せてくれるものだ。ここではそんな幸運も訪れることはない。波長が合わないのか、私の存在があそこでは異質なのか、なんとも言えない違和感がある。表面上は仲良くしてくれているけど本当には受け入れてもらえてない転校生というのはこんな気分なんだろうか。 ダイモンジソウがなければこの時期の見どころはほとんどない。お馴染みの野草が数種類が咲いてたくらいで、紅葉にはまだまだ遠く、野鳥も姿を見せてくれなかった。
 この時期、一番目に付くのがこれ、ミゾソバだ。イヌタデなどと主に川沿いにたくさん咲いていた。 ママコノシリヌグイやアキノウナギツカミなんかとそっくりだけど、葉の形などでなんとか区別がつく。ミゾソバは、別名ウシノヒタイと呼ばれるように、葉の形が牛の額に似ている。面長のハート型みたいとでも言おうか。ママコノシリヌグイの葉は三角形をしていて、アキノウナギツカミは葉が細長い形をしている。あと、ウナギツカミというくらいに茎に細かいトゲがあるので触ると痛い。 ミゾソバというのは、溝のようなところによく生えていて、葉っぱがソバに似ているところから付けられた。沖縄をのぞく日本全国に自生していて、小川とか池などの水辺にかたまって咲いている。 小さな花が集まって咲いている様子はいたって地味だ。いかにも雑草然としている。いつもつぼみのような状態なのが地味さに輪をかける。戦略として一気に咲かずに出し惜しみするように順々に花を開いていくので、いつ見てもつぼみのような印象が強い。けど、咲いている花をアップで撮ると、これがハッとするような美しさだったりする。ただ、そういうふうに撮れば確かにきれいなんだけど、この花の様子を伝えるにはこうやって少し離れて撮った方がありのままの姿だ。アップの写真しか知らなかったとしたら、この花を見つけることはできないんじゃないだろうか。
 名古屋方面からは、尾張瀬戸駅から国道248号線を進んで、「品野町6」の交差点を右折。しばらく行くと「岩屋堂」の看板が見えるのでそこを左に入って3分くらい走ると到着する。 公共交通機関で行こうとするとかなり不便だ。瀬戸電の尾張瀬戸駅からバスが出てると思うのだけど、それでも30分くらい歩かないといけないらしい。瀬戸駅からタクシーに乗っていくほど大げさなところもでもないし。 春は500本のソメイヨシノ、夏は島原川に作られる自然プール、散策路に暁明の滝と瀬戸大滝など、シーズンを通してそれなりに楽しませてくれる。ひなびているけど温泉宿も数軒あるようだ。あと、紅葉の名所としても地元ではちょっと有名なところだ。カエデやモミジが1,000本ほどあるというから、まずまずだろう。 気をつけなければ行けないのは、普段はほとんどひとけもなく駐車場も無料なのだけど、何かのシーズンに入ると突然駐車場が有料(500円)となることだ。気持ちは分かるけど、無料のときしか行ったことがない私はなんとなく釈然としない。海の家と同じシステムと言えばそうなんだけど。 岩谷堂の正式名称は、岩屋山薬師堂という。奈良時代の725年に、僧の行基がここの岩窟内で聖武天皇の病気平癒を祈願して三体の仏像を彫ったという歴史が残っている。現在もこれは残っていて、目や耳の病気に効くということでお参りに訪れる人もいるという。巨大な岩の内部に入っていくとちょっと怖い。何かいるような気がしてではなく、岩が頭の上から落ちてきそうな気がして。 岩屋堂の近くには499メートルの岩巣山の登山口があって、小山登山としてけっこう人気がある。私は一回目は引き返したけど、二度目で何とか登り切った。山に登り慣れてる人には物足りないくらいなんだろうけど、道が急なので普段運動不足の人はけっこうきついと思う。元岩巣の方のピークが展望が開けているのでおすすめできる。 野鳥ファンもよく訪れている場所らしいけど、私が行く夕方はいつもいない。鳥も人も。やっぱり午前中なんだろうか。ルリビタキ、オオルリ、ベニマシコ、イカル、カケス、カワガラスなんかもいるそうだ。
最近めっきり日暮れが早くなったところへもってきて、ここは山に囲まれているので街より更に日没が早い。到着後30分ほどで暗くなってしまった。ああ、ダイモンジソウよ、おまえはどこに咲いているんだい? もっと奥の方だったんだろうか。未練は残ったけど、日没には勝てない。E-1はプロユース機ということもあって、内蔵フラッシュなんて軟弱な装備は備えてないのだ。 残念無念また来週。いや、また来年だろう。岩屋堂はいつになったら私とうち解けてくれるんだろう。もっとシンクロ率を上げていって、野草も野鳥も向こうから懐に飛び込んでくるくらいのところまでいきたい。いつか、岩屋堂で、口にダイモンジソウをくわえながら肩にカワセミを乗せている私を目撃できるかもしれないです。乞うご期待。
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