現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
小松未歩に関する自分のための覚え書き、あるいは宣伝 2006年10月7日(土)
2006年10月08日 (日) | 編集 |
小松未歩についての覚え書き

OLYMPUS E-1+Super Takumar 50mm(f1.4), f1.8, 1/40s(絞り優先)



 小松未歩はどの程度マイナーなんだろう? という素朴な疑問がある。どれくらいメジャーなんだろうという問いよりもマイナーさ加減が気になったりする。J-POPをよく聴く人でも、もしかしたらもう忘れてしまった人が多いんだろうか。アニメ「名探偵コナン」の主題歌を歌ってた人、というくらいの認識の人もいるかもしれない。そういえば昔いたよね的な人もいるだろう。
 私の中で小松未歩の存在は、もはや揺るぎがないほど確固とした地位を確立していて、1997年のアルバム『謎』以来、10年近くもメイントリームであり続けている。この間、いろんな女性アーチストの曲も聴いてきた。ELT、ZARD、aiko、misia、MY LITTLE LOVER、GARNET CROWなどなど。けど、結局最後に残ったのは、小松未歩だけだった。
 今日はそんな小松未歩について、自分のための覚え書きを兼ねて少し書いてみようと思う。小松未歩って誰だよぅ、って人はまずファーストアルバム『謎』をレンタルして聴いてみてください。なんなら私が全曲耳元で歌ってあげてもいいです。

『謎』というアルバムにはその後の小松未歩のすべてのエッセンスが詰まっていると言っても言い過ぎではない。もし、これを聴いて何も感じるところがなければ、その人の人生に小松未歩は必要ないということだ。私としては残念だけど、悲しむべきことではない。逆に、少しでもいいと思えば、ぜひ2枚目以降も聴いて欲しいと思う。
 ある意味では彼女はこのアルバムをいまだ超えられてないと言えるかもしれない。成長はしてるし、広がりも見せてるし、深みも増してるけど、アルバムとしての絶対的な力強さという点では、この作品が今でも最高の完成度だと私は思う。太宰治が言ったように、「すべての作家は処女作に向かって成熟していくしかないのだ」ということになるだろうか。
 今聴くと若さゆえの青臭いところが少しつらく感じたりもするけど、「傷あとをたどれば」、「輝ける星」、「alive」、「錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう」、「青い空に出逢えた」、「この街で君と暮らしたい」、「君がいない夏」へとたたみかけるように続く名曲群は今でも色あせていない。歌詞における言葉選びとドラマの構成が素晴らしい。この時期の小松未歩には天才性すら感じた。

 ファーストアルバムで期待の新星として注目され、短期間で地位を築いて出したのが2枚目のアルバム『未来』だった。「チャンス」、「氷の上に立つように」、「願い事ひとつだけ」など、「名探偵コナン」のテーマソング歌手のようになっていった時期だ。しかし、そういう表でのヒットとは裏腹に、このアルバムの出来は良くなかった。一枚目ですべてのエッセンスを出し尽くして早くも枯れてしまったのではないかと思わせるほどに。
 曲としてはいい曲も何曲かある。「手ごたえのない愛」はよかったし、「Deep Emotion」や「涙」など重くて暗い曲調の流れが生まれたのもこのアルバムだった。その後、明るい調子と暗い調子の2つの大きな流れが小松未歩の基調となる。同時に、少しずつ飾らない素の部分も出てきて、「静けさの後」の中の「この次は 首をへし折ってやる 覚えとけ」なんて歌詞は面白い。ラブソングの中にこういう言葉を織り込めるのも彼女の魅力のひとつだ。関西生まれということもあるかもしれない。
 3枚目の『everyehere』は全体的にハズレが少ない粒ぞろいのいいアルバムになった。2枚目のアルバムが難しいのは誰にとっても言えることで、1枚目はそれまで生きて経験してきたことすべてを詰め込めるけど、2枚目はプロとしての作品作りを短期間で要求されるから、内容が薄くなるのは必然だ。無数のアーチストが毎年デビューする中で、生き残れるかどうかを決めるのは3枚目のアルバムの出来次第と言えるのかもしれない。そして、小松未歩は見事に答えを出して見せた。
「BEAUTIFUL LIFE」、「AS」、「夢と現実の狭間」、「No time to fall」、「BOY FRIEND」、「さよならのかけら」、「雨が降る度に」など、いい曲が多く、ヒット率では全アルバムの中でこれがベストだろう。明るい曲調も増えて、想像するにこの時期は彼女にとって幸福な時期だったのかもしれない。本人にとってもこのアルバムの完成で大きな手ごたえを掴んだんじゃないだろうか。
 4枚目の『A Thousand feelings』はまた少し低調になる。ファイナルファンタジー・シリーズのように出来の良し悪しがジグザグする感じだ。3枚目を更に発展させて自分の世界を築き上げようとする半面、やや行き詰まりを感じていた時期だったのか。
 5枚目の『source』を作る前なのか作ってる途中なのか、何か弾けたというか突き抜けたものがあったようだ。ここでまた一気に広がりつつ深まった感がある。才能の二段ロケットが発射したみたいに。
 多様な恋愛観と言葉づかい、そして様々な曲調。暗いものから明るいもの、したたかだけど可愛い、恋の喜びと失恋の痛み、そんな相反するものを同時に見せるというプロとしての方法論みたいなものもここで確立された。ただ、あまりにも恋愛だけに絡め取られていて、歌われる世界観としては狭くなっていってしまったのは残念なところだ。私がファーストアルバムで感心したのは、地球や宇宙というものを意識した恋愛観や世界観を描ける希少な女性アーチストだと思ったからだった。すべてがラブソングというのはちょっと違うんじゃないかなと思い始めたのもこのときからだった。

 ジグザグの法則からいくと次の6枚目は出来が良くないことになる。そしてやっぱり実際そうだった。偶数が低調というところまでファイナルファンタジーと同じだ。
 ただ、全体として穏やかな曲調が多くて、そういう部分での成熟を感じさせる。まだベテランとは言えなくても、6枚目となれば完全にプロ意識として作ってるわけで、言うまでもなく平均点以上は楽に超えている。ややクルージングに入ったと言えばそう言えなくもないのだけど。
 7枚目『prime number』。うーん、さすが、小松さんとうなってしまう。2枚続けて不作じゃないところがやっぱりすごい。本気になればこれくらいは楽勝よ、って言われてるみたいで、参りましたと頭を下げるしかない。
 あまりにも自分の恋愛感情に囚われすぎていて、聴き手さえ息苦しくなるような曲が続いた中、「ひとは大昔 海に棲んでたから」や「故郷」で少しだけ恋愛から離れて、久しぶりに世界の広がりも感じさせてくれた。「恋心」、「東京日和」などは素晴らしい。特に「東京日和」は、東京を舞台にした上質な恋愛映画の主題歌として使って欲しいと思う。作品の内容と合えば、映画と曲の幸せな出会いとなるに違いないから。
 最新となる8枚目の『a piece of cake』は、やっぱりかという悪い予感が当たってしまった。まださほど聴き込んでないということはあるにしても、心の深いところまで届いてくる曲が少ない。「向日葵の小径」はいいし、「deep grief」は好きだけど、新しさというのがあまり感じられなかった。
 法則でいくと9枚目はまたいいのを作ってくれるだろう。そして、ファイナルファンタジーにならうなら、10作目に史上最高傑作を作ってくれることを個人的に期待している。もう偶数は駄目だなんて言わせないようなものを。
 まだまだ小松未歩は終わってなんていないし、このままマイナーに沈んでいいような才能ではない。きっとまた、世間は彼女を再発見することになるだろう。ヒットすることがすべてじゃないし、広く世間に知られることが成功でもないけど、もっと一般的に高く評価されるべきだと私は思っている。才能でいけば、現役の女性アーチストの中で間違いなくトップクラスなのだから。

 最後に、個人的なベストテンを書いておこう。忘れっぽい私自身のために。
「恋心」
「東京日和」
「向日葵の小径」
「でも忘れない」
「regret」
「commune with you」
「AS」
「夢と現実の狭間」
「特別になる日」
「君がいない夏」

 といった感じになるだろうか。その他、好きな曲はこのあたり。
「Deep Emotion」、「No time to fall 」、「手ごたえのない愛」、「さよならのかけら」、「哀しい恋」、「deep grief」、「約束の海」、「ふたりの願い」、「楽園」、「Last Letter」、「I 〜誰か...」、「傷あとをたどれば」、「涙」、「BOY FRIEND」、「雨が降る度に」、「ただ傍にいたいの」、「幸せのかたち」、「gift」、「dance」
 以上、小松未歩に関する自分のための覚え書きを、おすすめの言葉に代えさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。




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