 OLYMPUS E-1+Super Takumar 50mm(f1.4), f5.6, 1/500s(絞り優先)
中秋の名月も過ぎて、季節はいよいよ秋本番。いまだ半袖、裸足の私を置いてけぼりにして、街はいよいよ秋の深まりを強めていく。 夕焼けの川沿いを車で走っていたら、ススキが風に吹かれてゆるやかに揺れていた。こんな景色を見れば、嫌でももう秋を感じずにはいられない。そろそろ夏服をしまって冬服を出さなければいけないかもしれない。ホコリをかぶった扇風機もいい加減しまおう。 私の少年時代、秋を象徴する雑草はセイタカアワダチソウだった。道沿いも、空き地も、川原も、一面びっちりとあの黄色と緑のコントラスに覆われたものだ。それが、気づけばすっかりセイタカアワダチソウは姿を消し、再びススキ風景が戻っていた。なんでも、セイタカアワダチソウは増えすぎたことによって、自家中毒によって自ら消滅してしまったらしい。そういえば本当に見かけなくなった。今、セイタカアワダチソウの写真を撮ろうと思っても、どこに撮りに行けば咲いているのか分からないくらいだ。 昔ながらの秋風景であるススキが戻って喜ばしいことではあるけど、セイタカアワダチソウもちょっとだけ懐かしいようにも思う。小学校の下校途中で見た秋の黄色い光景が思い出される。
日本原産のススキは、ずっと昔から日本人の暮らしには欠かせない存在だった。農家の茅葺き屋根がススキだということを知らない人もいるかもしれない。茅という植物は存在せず、あれはススキなどの総称で、合掌造りの白川郷では今でも屋根の張り替えでススキは欠かせないものとなっている。その他、家畜のエサにしたり、炭を運ぶときの梱包材としたり、縄や草履などの生活用品にも利用さた。かつては大量に必要だったことから、ススキの草原も農村の近くに必ずあったという。茅場(かやば)と呼ばれていたその場所は、今でも地名としてけっこう残ってる。 現在、ススキを日常的に利用してる人はほとんどないだろうけど、日本中たいていのところに生えている。沖縄は温かいので常緑なんだそうだ。日本以外では、朝鮮半島、中国、マレーシアあたりにも自生してるらしい。 秋の七草のひとつでもあり、昔は尾花とも呼ばれていた。動物の尾っぽみたいな様子からだろう。幽霊の正体見たり枯れ尾花の尾花はススキのことだ。巨人では今ひとつ役に立たなかった尾花コーチに対して、このススキ野郎! とヤジを飛ばしてもいいかもしれない。 草のくせになんで七草に入ってるんだと疑問に感じたことがある人も多いかもしれないけど、あれでもちゃんと花を咲かせている。十数本に別れた花穂に黄色い小さな花をぶらさげる。昆虫を誘わなくても風で飛ばせるから(風媒花)、地味でもいいのだ。白くなってボサボサになってる状態が種子がなってるときで、風に乗せて種を運ぶ。 漢字では「芒」と「薄」が当てられる。本来は芒の方が正しいらしい。 「ススキ」の語源は、すくすく育つ木から来ているとか、神楽で使われる神楽鈴の木からとか、いくつか説があるようではっきりしない。札幌のススキノはかつてススキの野原だったんだろうか。
 これもススキと同じイネ科のエノコログサだ。ススキ以上にありふれていて、日本全国こいつが生えてないところはないんじゃないかと思うほどだ。ただし、都会では普通種のエノコログサよりも大きめのアキノエノコログサの方が多いという。写真のように花穂が短めで真っ直ぐ立っていればエノコログサで、長めで弧を描いて垂れ下がっていたらアキノエノコログサだ。 エノコログサを漢字で書くと狗尾草。狗(エノコ)は子犬のことで、ロは尾のなまったものだ。英語ではFoxtail grassとキツネの尾っぽに見立てている。ヨーロッパにも広く分布しているようだ。 通称猫じゃらしというのは関東で生まれた言葉らしい。今では全国区なんだろうか。確かにあれは猫がじゃれる。子供の頃は、後ろから友達に近づいて手に持ってエノコロで顔や首をこしょこしょしたりされたりしたものだ。 オオエノコロ、キンエノコロなど、いくつか変種があって、紫っぽいものをムラサキエノコロとして区別することもある。 たくさん生えてるわりにちっとも役に立たないと思われがちなエノコロだけど、かつての日本人が食べていた粟(あわ)の原種だと言われている。今でもその気になれば、エノコログサの若い葉っぱと花穂は火であぶったり、天ぷらにして食べられるらしい。どうしても食べるものに困ったら、私もエノコロのあぶりをマヨネーズで食べてみたいと思う。
秋が深まる川原で、あなたもぜひススキやエノコログサを眺めたり写真を撮ったり触れ合ったりしてみることをおすすめします。もし、どうしてもやることがなくて退屈だったときは、私を呼んでください。一緒に、猫じゃらしでじゃらし合いながら、どちらが猫のモノマネをする池乃めだか師匠に似ているかの勝負でもしましょう。そして、その後はカラオケで「昭和枯れすすき」をデュエットしようではあ〜りませんか。 ススキとエノコロ秋の集い、若干名募集中。
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