現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
自分の中で中途半端なブドウを秋の味覚トップに抜擢 2006年10月17日(火)
2006年10月18日 (水) | 編集 |
ブドウについて

Canon EOS Kiss Digital N+EF 50mm(f1.8), f2.0, 1/20s(絞り優先)



 秋の味覚といえばシイタケで決まりだネ、という特殊な人をのぞいて、秋ははやりマツタケであり、サンマであり、果物でいえばブドウや梨ということになるだろう。その他、栗もあるし、季節が進めば柿やミカンも出回ってくる。そんな中で、秋のトップバッターとして私が選んだのはブドウだった。まずは無難な選択と言えるだろう。
 それにしても、果物世界におけるブドウのポジションというのはどうも中途半端なところがないだろうか。高級でもなく低級でもなく、とびきり美味しいわけでもないしもちろんまずくもない。値段的にもバリエーション的にもそこそこで、どこをとってもそこそこ感がつきまとう。オレはブドウが死ぬほど好きで気づくとブドウの絵ばかり描いてるんだよね、なんて人は見たことがない。いや、もちろん、世の中は広いから、一番の好物がブドウだと答える人もたくさんいるんだろうけれど。
 私の中のランキングでいうと、ミカン以上バナナ以下といったあたりだろうか。もともとあまり果物を食べない方なので、ブドウはシーズンでも2、3回とマイナー果物に属する。頻度としてはキウイ以上イチジク以下か。
 思い起こしてみると、小さい粒のブドウは子供の頃けっこう食べていた。ただ、大粒の巨峰は今ほど出回ってなかったような気がするし、緑色のマスカットはまだ高かったのか、めったにお目にかかることがなかった。私があまり食べない間に、ブドウ業界もすっかり様変わりしたのだろうか。

 そんな私とブドウとの疎遠な仲とは裏腹に、ブドウは世界で最も生産されている果物なんだそうだ(オレンジが一番という話もある)。誰だよ、そんなにブドウを食いまくってるのはと思ったら、大部分がワインになるのだった。なるほど、そういうことか。世界では8割がワイン用で、食用は2割というから、世界ではあまりブドウは食べられてないのかもしれない。日本では9割が食用で、ワイン用は1割でしかないという。ワイン通の川島なお美なんかはきっと日本製のワインなんてめったに飲まないのだろう。外国産をありがたがるという点では、ワインはファッションブランド以上のものがある。いくら伝統が違うからといって、本当にみんなそんなにワインの味の違いが分かってるんだろうか。私はアルコール全般を受け付けないので、ワインも料理に使うだけで飲んだことがない。きっと、300円のものも何十万のものも、どっちもまずいと感じるだろう。
 ブドウにはいくつかの原種が世界のあちこちにあって、どこが原生地かというのは難しい。ヨーロッパ・ブドウと呼ばれる種類のものは、カスピ海沿岸に自生していたもので、紀元前3,500年頃の古代エジプトではすでに栽培されていたという。もうひとつの原産地は北アメリカ大陸。東部のアパラチア山脈にあったそうで、現在でもこのふたつの系統に大別されている。
 日本に入ってきたのは、平安時代末期の1186年(壇ノ浦の合戦が1185年)、遣唐使によって甲州に持ち込まれたのが栽培の始まりとされている。それとは別に、昔から野山にヤマブドウが自生していた。相当酸っぱいらしいけど、今でもあるそうなので、見つけたら食べてみたいと思う。山で酸っぱい顔してる男を見かけたらヤマブドウを食べた私かもしれない。
 本格的に栽培されるようになったのは江戸時代や、明治に入ってからで、現在は山梨、長野、山形、北海道、岡山あたりでたくさん作られている。品種も多く、日本で出回ってるだけでも20種類以上あるらしい。もし、この先で私がブドウに目覚めるようなことがあったら、全種類食べるのを目標としよう。皮ごと食べられる甘いブドウというやつも一度食べてみたい。リザマート、ニューナイ、バラディなんかがそれで、テレビで紳助と松っちゃんがで食べていた。
 ただし、私は干しぶどうが大の苦手なので、レーズンパンの差し入れだけはやめてください。小学校のとき、レーズン食パンがたまに出てきたけど、スイカの種を取るようにレーズンを取って食べたものだ。今でもレーズンの食感と味が苦手で、克服できないでいる。ブルーベリーは好きなのに。

 ブドウには体にいいものがたくさん含まれていることが分かっている。ポリフェノールが動脈硬化の予防になったり、ガン細胞と戦ったり、レスベラトロールという成分は寿命を延ばす効果があるといわれている。更にブドウの種からは育毛効果のある成分も見つかったという。とりあえずブドウをたくさん食べて体調を良い方向に持っていきながら、出した種は頭に蒔くといい。毛も生えてくるし、上手くいえばブドウも生えてくるかもしれないので、一石二鳥だ(誰も信じないと思うけど信じないでください)。
 漢字で書くと葡萄で、この語源は中国から来ているようだ。そもそもは、ペルシャのバァダァ(badah)が元になっているようで、これがシルクロードを通って中国から入ってきたときには伝言ゲームのようにズレていて、日本ではブドウとなり、そのまま名前になった。日本書紀などにも蒲桃や葡萄として出ているところからしても、その存在自体はかなり古くから知られていたのだろう。
 日本人にとってブドウというのは食べる果物というのが一般的だけど、外国人にとってはワインの原材料というイメージなんだと思う。
 ワインの歴史も古く、ブドウの歴史とワインの歴史はおそらく重なっている。というのは、世界中のお酒で、人間が手を加えず自然に発酵して酒になるのはブドウから出来るワインだけだからだ。きっとブドウが見つかったところで同時にワインも見つかったのだ。作ったのではなく。
 普通の酒は、酵母などを加えて発酵させることでアルコールになるのだけど、ブドウだけはアルコールとなるような糖分と酸の割合になっていて、皮には天然酵母が付いてるので、つぶしさえすれば勝手にワインになるのだ。これぞ自然の恵み。なので、私たちもブドウを踏みふみすればワインができるはずだ(たぶん)。いまでも、半ばイベントとして、乙女のブドウ踏みのようなものが行われている。おっさんが踏んで出来たワインはイヤだ。

 ブドウに関する一般的な知識が身に付いたとことで、更に時代を先取るニューパワーとして(なっつかしいですねっ)、もう一歩進んだ雑学も知っておきたい。
 まずおさえておきたいところとしては、巨峰を作ったのは大井上康代さんだということだ。そんな知識、一体どこで役立つんだよと思ったあなた、ミリオネアの1,000万円の問題で出るかもしれないので油断は禁物だ。
 種なしブドウはどう作るかというと、花が咲いている時期に、ジベレリンという植物ホルモン剤に房を浸けることで種子をできなくさせるのだ。これをジベ処理という。種なしブドウを彼女と食べてるときなどに、「ジベ処理を最初に思いついた人ってすごいよね」、などとさりげなく雑学を披露するのもまた一興。
 葡萄色というくすんだ赤紫色があるけど、あれは「えびいろ」と読む。えび染め、などというときはこの字を使う。
 ひとつのブドウ棚は一本のブドウの木から作られていて、そのままにしておくとどんどん成長していって、最終的には30メートル四方にも広がるそうだ。そして、その一本の木になるブドウの数は3万房。もぐだけでも手がおかしくなってしまう。けど、そんなことをすると甘みが分散して美味しくなくなるので、栄養を集約させるために200分の1ほどに間引きをする。私たちが食べているブドウは、そんな犠牲の上に成り立っていたのだ。
 まずはこれくらいのブドウ雑学を用意しておけば、川島なお美のワインうんちくにも対抗できるんじゃないだろうか。ワイン・サイドからいったら負けるので、ブドウ側から攻めたい。打倒川島なお美でブドウを食べて食べて食べまくろう。




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