 OLYMPUS E-1+Super Takumar 200mm(f4), f5.6, 1/200s(絞り優先)
ヤギを見ると頭の中でメロディーが流れ出す。ヤーギさんのヒツジ〜、ヒツジ ヒツジ〜 ヤーギさんのヒツジ〜 かわいいなぁ〜。 あれ? ヤギさんじゃなくて、メリーさんだ。ヤギさんがヒツジではどう考えてもおかしいだろう。 もうひとつ思い出すのが、アルプスの少女ハイジ。同世代の人は、うん、うんと大きくうなずくんじゃないだろうか。キミはうなずきトリオか! と突っ込んでみる。 ハイジにアルムおじいさん、山羊飼いのペーターにクララ。何故かヤギの名前だけユキ。どうしてそこだけ日本風だったんだろう。アルプス地方にもユキという名前はあるんだろうか。
日本ではすっかりマイナーな家畜になってしまったヤギも、世界で見ると約7億頭が飼育されている現役メジャー家畜だ。中国、インドをはじめとしたアジアが全体の60パーセント以上を占め、アフリカの25パーセントが続く。世界的には現在でも増加傾向にあるそうだ。日本ではかつて、乳牛ほど場所も取らずエサ代もかからないということで、一般家庭でも乳搾り用としてよく飼われていた。貧乏人はヤギを飼え。うちの田舎でも飼っていたそうだ。今ではヤギを飼っている家庭は圧倒的少数となった。といか、一般家庭で飼われているヤギなど金輪際見たことがない。ヤギの散歩してる人とかも見かけない。 野生のヤギを最初に飼い慣らしたのは、今から1万年ほど前の西アジアの山岳地帯の人たちではないかと言われている。ただ、その年代の遺跡でヤギの骨が見つかっているというだけなので、本当に家畜だったのかどうか、もっと前から飼われていたのではないかなど、詳しいところまでは分かってないようだ。品種も、ノヤギやヨーロッパノヤギ、ベゾアール、マーコールなど、どれが最初のヤギだったのかもはっきりしていない。いずれにしても、そこから東西と南へヤギの飼育が広まっていったようだ。 日本にやって来たのはずっと後になってからで、江戸時代に朝鮮半島あたりから持ち込まれたのが最初だろうということになっている。ただ、琉球ではもっと昔に入っていたという話だ。 ヤギは当初、乳目的で飼われるようになった。世界で最初のチーズやバターは、ヤギから撮られた乳で作られたと思われている。ヤギの乳は人間の母乳に最も近いとされ、昔は体にいいからといって無理矢理飲まされたりもしたそうだ。ちょっとクセがあって飲みづらいらしい。けど、最近、またヤギの乳が見直されてきて、スーパーなどでも並ぶようになった。アレルギーが出にくかったり、牛乳を飲むとおなかゴロゴロの人もヤギなら大丈夫だったり、ビタミンが牛乳より多かったりで、実際なかなかいいみたいだ。味も売っているものはクセがないというし、私も今度買って飲んでみよう。 ヤギが家畜に向いていたのは、まず性格のおとなしさと従順さがあった。あとは何といっても粗食に耐える丈夫さを持ち合わせていることだ。力はないので農業には向かないし、ヒツジのように毛も取れない。その代わり、そのへんに放っておいても草や木などを食べて生きていける。遠洋航海などにも連れて行けたために、遠くのオーストラリアやニュージーランド、ハワイなどにも持ち込まれた。 肉や皮などももちろん利用された。 そんな貧しさにも世間にも負けないヤギは、ときとしてやっかいものになることがある。飼っていたものが放置されたりしても、そのまま野生として生きていける彼らは、世界中でちょっとした問題になっている。草だけでなく樹皮なども食い散らかしてしまうから、生態系を壊してしまうことになる。手加減なしで、繁殖力も強い。特に無人島で我が物顔で暮らしているという。日本でも、小笠原諸島や伊豆諸島の島などは大変なことになっているらしい。韓国とモメてる竹島も、ノヤギの天下なんだとか。 草を食べるというのを利用して、果樹園の草取りとして飼っているところもあるようだ。これは上手くいけば草取りの手間がはぶけていい。
ヤギというと、写真のような白くて角があってあごひげがあるのを思い浮かべる人が多いと思う。これはザーネン種というスイス原産のもので、日本にいるのはたいていがこいつだ。けど、ヤギの種類は216品種もある。白ヤギさんだけでなく、黒ヤギさんも、茶ヤギさんも、毛がもしゃもしゃのものも、角が立派なのもないのなどいろいろだ。高級繊維のモヘアはアンゴラ山羊から取れるものだし、カシミヤもカシミヤ山羊から取れる。その他、トッケンブルグ種、マンバー種、ジャムナバリ種、ヌビアン種などがいる。 所属としては牛の仲間ということになる。ヒツジとは近いようで遠く、遠いようで近い。ヒツジの毛を刈ってつけヒゲをつけるとヤギそっくりになるとか。 違いは、ヒツジが草食なのに対して、ヤギは草や木の芽を好んで食べるということと、定住タイプのヒツジに対して遊牧的なヤギといったようなことが挙げられる。ヤギの方が腹ぺこには強いのに対して、ヒツジの方が寒さに強い。 ヤギは紙を食べると思われているけど、それは昔の話で、現代のような工業製品としての紙を食べさせたらおなかを壊してしまう。へたすると死んでしまうので、書いたけど出せなかったラブレターをヤギさんに食べさせたりしてはいけない。それがたとえ黒ヤギさんでも白ヤギさんであってもだ。和紙とかならいいらしいけど、トイレットペーパーもティッシュペーパーもダメで、パンなどはカロリーが高すぎていけない。
ヤギといって思い出すのは中原中也の『山羊の歌』だ。例の「汚れつちまつた悲しみに」もこれに収録されている。中也はどんな思いでこのタイトルを付けたんだろう。 ある飲み屋で中原中也と太宰治、壇一雄が酒を飲みながら、 「おめぇは全体、何の花が好きなんだい?」と中也が太宰に訊ねる。中也のしゃべりはこういうべらんめえ調なのだ。 「桃の花……。」と消え入るような小さな声で答える太宰。ちびっこ中也に対して大男の太宰は背中を丸めて、いかにも居心地が悪そうに見える。 それを聞いて、「だから、おめえはダメなんだ!」と何故かキレて太宰につかみかかっていく中也。それを止める壇一雄。なおも暴れる中也。そして、最後は九州男児の壇一雄にボコボコにされて、「ああ、分かった、分かった、てめえがケンカが強いのは分かったよ」とふてくされる中也。 そういえば太宰はどこにいったんだと外を見てみると、遠くの方の曲がり角で顔だけ出して店を伺っている太宰の姿がそこにあった。 私はこのエピソードがとても好きだ。三者三様の人間性をよく表している。 スケープゴートという言葉がある。訳すと贖罪(しょくざい)の山羊。古くからユダヤ教などでは、ヤギを生け贄として捧げる伝統があった。そこから転じて、ある人物に責任を負わせて逃れることをスケープゴートと言うようになった。でも最近ちょっと聞かなくなった、秘書がやりました、というセリフ。 日本語のヤギの語源は野牛がなまったものだという説があるけど、実際のところはよく分かってない。山の羊と書くから、山の方にいる生き物というイメージが強かったのだろうか。
そろそろクリスマスが近づいてきた(唐突な話の転換は最後のネタへの序章)。また私は今年も、クリスマスイブの夜は、ヤギアナと明石家サンタのテレビを観ながら過ごすことになるのだろうか。 ……。 それが言いたかっただけか! ♪口笛はなぜ〜 遠くまで聞こえるの あの雲はなぜ〜 わたしを待ってるの〜 おし〜えて〜 おじいさん〜 おし〜えて〜 おじい〜さん〜 おしえて〜 アルムの〜も〜み〜の〜木〜よ〜♪ 「おしえて」の歌とともに今日はこのへんで、さようならー。
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