現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
雪が降る地球に生まれて静寂の音と純白の美しさを知る
2007年01月09日 (火) | 編集 |
名古屋の雪2007

OLYMPUS E-1+SIGMA 18-50mm DC(f3.5-5.6),f5.6, 1/320s(絞り優先)



 雪は天から送られた手紙である。
 雪博士・中谷宇吉郎の言葉だ。2007年1月7日の名古屋に、雪は年賀状よりもたくさん降ってきた。結局短時間でやんでしまったのだけど、本格的な雪は今シーズン初だった。たくさんのお手紙ありがとう。このブログの記事でお返事に代えさせていただきます。
 名古屋は雪が少ないところだから、たまに降る雪は嬉しい。喜んで写真を撮ってしまう。その喜びと価値観は、年に数度しか見ることがない海と同じくらいのものがある。わー、海だ、海だー。わー、雪だ、雪だー、みたいに。
 名古屋と雪の距離感はちょうどいい。

 ところで、雪とは何だろう? 雨が凍ったもの? それはみぞれじゃないのか? 積もる雪とすぐに溶ける雪とではどんな違いがあるんだろう?
 そんな疑問に対してすぐに答えてくれるPC世界が22世紀か23世紀にはできるのだろうけど、今はまだ21世紀。対話形式で問いに答えてくれるシステムはまだない。けど悲観することはない。今はもう20世紀ではない。PCがあり、ネットがある。ひと昔前なら、百科事典を調べ、物知りの人に訊ね、図書館へ足を運び、それでも分からなければあきらめるしかなかった。それを思えば今はいい時代になった。

雪でも子供は遊ぶ

 雪は寒さで雨が凍ったものだと考えてる人が案外多いんじゃないだろうか。実は私もそう思っていたら違った。雲の中にある水蒸気が冷たい空気に冷やされると、微粒子を核として氷の結晶ができる(氷晶)。これが空から落ちてくるとき、地面に落下するまで0度以下を保てば雪になり、0度以上になると雨になるのだそうだ。雨が途中で凍って雪になっているわけではなかった。今日もまた、ひとつ賢くなってしまった。
 みぞれ(霙)は、半分雪で半分雨の状態をいい、氷晶に水滴がついて上昇気流で冷たい上空に吹き上げられて凍りつくとあられ(霰)になる。5ミリ以上になるとあれらで、それ以下をみぞれとして区別している。
 雪が白く見えるのは、くっついた結晶に光が乱反射しているためで、ひとつひとつの結晶自体は透明だ。
 雪の結晶を世界で初めて人工的に作り出したのが中谷宇吉郎だった(1936年)。少し話はそれる。中谷宇吉郎は、「天災は忘れた頃にやって来る」と言った物理学者で随筆家の寺田寅彦の弟子で、寺田寅彦は夏目漱石の弟子になるから、夏目漱石の孫弟子ということになる。夏目漱石の弟子には芥川龍之介や内田百間がいる。そこまで思いを馳せると、なかなか感慨深いものがある。
 それはともかくとして、雪の話に戻ろう。雪は状態によってもいろいろな呼び名がある。降っている状態の雪を降雪と呼び、積もっている状態を積雪として分けて呼ばれている。これは雪の多いところと少ないところでも感覚的な違いとしてありそうだ。私などは雪といえば空から降ってくるものをイメージする。雪国の人は積もってない雪など雪のうちに入らないって言うかもしれない。
 粉雪、ぼた雪、ざらめ雪、新雪、吹雪、雪崩、淡雪、万年雪、どか雪、泡雪、細雪、なごり雪。
 日本語には雪を表現する言葉がたくさんある。それだけ雪の存在が大きいということだ。
 別名として「六花(ろっか)」というのがある。雪の結晶が六角形をしているところから来ている。「六花亭」のマルセイバターサンドが食べたい。こちらでは岡崎の備前屋「あわ雪」が有名だ。備前屋〜の〜あわ雪〜♪のCMでお馴染みの。
 知らなかった雪にまつわる言葉も、今回勉強していろいろ知った。雪と親しむという意味の「親雪(しんせつ)」や、雪を克服するという「克雪」、一歩進んで雪を利用しようという「利雪(りせつ)」など。「雪あかり」なんて言葉はとてもロマンチックな響きを持っている。
 雪とたわむれたり親しんだりするというと、私たちは雪だるまや雪合戦、スキーやソリ滑りなどしか思いつかないけど、雪国の人たちは違う。かまくらやさっぽろ雪祭りなどは知識として知っていても、雪泳は知らないだろう。なんでも今、静かなブームになっているらしい。本当だろうか? 読んで字の如く、雪の中を泳ぐ競技らしい。きっと静かなブームのまま終わるだろうけど、大人たちが本気で雪の中を泳いでいる大会を一度見てみたい気もする。
 昔の日本には「雪見」という風習があった。いつ果てるともなく降り続く雪をただ見ている。雪見障子や雪見酒、雪見風呂など、今ではすっかり失われてしまったものもたくさんある。
 ここでひとつ漢字クイズを。「雪ぐ」は何と読むでしょう? 答えはCMのあと。ヒントは、雪辱(せつじょく)。

ベランダからの雪風景

 答えは、「すすぐ」でした。祓い清めるという意味で、汚辱を雪ぐなどと使う。

 雪が好きかと問われたら、少し考えて間が空く。小雪はそんなにタイプじゃないのと同じように、雪も特別好きというわけではない。年に1度か2度見るだけなら悪くないけど、現実的な面では雪が降っていいことなどほとんどない。せいぜい写真を撮るときに場所によっては絵になるくらいのものだ。交通機関は壊滅的にダウンしてしまうし、車でも身動きも取れなくなってしまう。雪は溶ける街が汚れるし、雪国に住むのはきつそうだ。
 でも、雪にもいいところがある。それは、雪がもたらす静寂だ。まるで雪が世界の音を吸い取ってしまうみたいに街から音が消えて、世界が静けさに包まれる。あるいは静寂の音がする。雪が降り続く光景は、音を消したテレビ画面のようだ。世界は本来こんなにも静かなものなんだと、雪が教えてくれる。
 雪は天からの贈りものだ。宇宙に雪は降らない。地球に降りそそぐ祝福の白だ。だから私たちは雪を見て、きれいだと思う。純白は雪のイメージで、雪が覆い隠した真っ白な世界はウェディングドレスを思わせる。もし私たちが雪を知らなければ、純白の美しさに気づかなかったかもしれない。雪が降る星に生きていることの幸せを思う。




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