現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
東京での起点である目白の目白庭園にちょっと挨拶を
2007年02月02日 (金) | 編集 |
目白庭園の夕暮れ

PENTAX istDS+TAMRON 28-200mm XR(f3.8-5.6), f5.6, 1/50s(絞り優先)



 東京タダ見スポット第3弾は、ちょっとマイナーな目白庭園。名前の通り目白にある。私の東京での起点が目白ということもあって、ここは一度は必ず行っておかないといけない場所だった。
 場所を言葉で説明するのがちょっと難しい。山手線の池袋駅と目白駅の中間あたりの奥まったところにあるので、たまたま見つけて行くというのはあまり考えられない。最初からここへ行くつもりで向かわないと見つからない場所にある。たぶん、池袋からの方が遠いのだろうけど、目白に向かって西武池袋線の線路を渡るとそこにあるという感じだろうか。私が案内してあげたいと思っても、私自身ツレに連れて行ってもらっているから自分ひとりで行けるかどうか怪しかったりする。頑張って行って各自、自力で欲しい。
 周りは静かな高級住宅街で、あまりはしゃいだり騒いだりしながら向かうようなところではない。閑静な住宅地という紋切り型の言葉を使いたくなるような一帯だ。
 平成2年に、公立学校共済組合住宅跡地に作られた目白庭園は豊島区立だったものが今は民間への委託という形になっている。庭園としてはこぢんまりとしたものだが、860坪といえば一般の民家では紛れもなく豪邸の部類に入る。あの場所でこの坪数となると、買うならいくらになるんだろう。いや、買えないから考えても仕方ないか。
 100メートルを越える築地塀(ついじべい)で囲まれいて、入口は長屋門になっている。何も知らずに門の前まで行くと、明らかに有料な感じなので腰が引けそうになるかもしれない。けど、入園は無料なので遠慮なく入っていっていい。入口の窓口には管理人さんらしき人がいるからお邪魔しますと挨拶をしつつ。

目白庭園の滝

 庭園は、150坪ほどの池を中心とした典型的な回遊式日本庭園で、のんびり歩いても一周10分ほどだろうか。休憩所も兼ねた六角浮き見堂や、お茶会や句会などに使われる「赤鳥庵(せきちょうあん)」、芝生広場や滝見台などで形作られている。たくさんの樹木も植えられていて、季節の花もそれぞれ咲き、春には桜が、秋には紅葉も楽しめるのだろう。
 滝が流れを作っているあたりは、夏場は涼しそうだ。池の水はきれいで、鯉がゆったりと泳いでいた。貼り紙には「コイとカモにはエサを与えないでください」と書かれていたわりにはコイは人に慣れていて、休憩所で坐っていたら寄ってきた。「華麗なる一族」で将軍が浮かび上がってきたときのキムタク気分。どうだ見たか、北大路欣也と言いたくなる。
 もう少し暖かくなれば、奥の芝生広場に坐ってお弁当を食べるのにもいいところだ。実際、そういう人たちも多いという。去年なのか、豊島区と地元の目白小学校の生徒でここにヘイケボタルの幼虫を放したそうだ。鑑賞会は予約制だったようだけど、これが定着すれば一般公開も期待ができる。今年の夏はどうだろう。見られるものなら見てみたい。
 これだけの都会の中で、これほど静かな空間というのはかなり貴重かもしれない。名古屋あたりならこれくらいのところはいくらでもあるけど、ここはなんといっても東京の街中だ。騒がしい池袋のすぐ近くだとは思えないほど、ここに都会の喧噪はない。けど、振り向けば池袋サンシャインがしっかり見えた。

 茶会などに使われる「赤鳥庵」は、事前予約が必要な有料施設だ。半日なら3,000円くらいで、一日でも11,600円とかなので数人以上で使えばそんなに高いものではない。
 月に3度ほど自由参加のお茶会もあって、それは予約なしで500円でお茶が飲めるというから、それはねらい目だ。普段着で全然いいらしい。
 赤鳥庵は木造瓦葺きの数奇屋建築で、名前は鈴木三重吉が創刊した童謡雑誌「赤い鳥」にちなんでいる。
 夏目漱石の弟子だった鈴木三重吉が大正時代にこのあたりに住んでいて(邸宅は千種画廊になっている)、雑誌を編集発行していた赤い鳥社が庭園の東側にあったという。
 鈴木三重吉なんていってもあまり知らない人が多いと思うけど、日本で初めて子供向けの文芸雑誌を作った日本児童文学の父とでも言うべき人だ。雑誌「赤い鳥」には、協力者でもあった芥川龍之介「蜘蛛の糸」や、有島武郎「ひとふさの葡萄」、北原白秋の「赤い鳥小鳥」などもこれに連載されたものだ。途中関東大震災などを挟んで経営難に陥ったりしつつ、大正7年(1918年)から三重吉の死の昭和11年(1936年)まで、全196冊が作られた。新美南吉も、この雑誌によって世に出て育てられたひとりだ。

目白庭園の梅

 1月の終わりだというのに、早くも園内でも梅が咲き始めていた。今年は東京もずいぶん暖かかったのだろう。いくらなんでも1月に梅はちょっと気が早すぎる。でも、咲き始めはどんな花もありがたく感じる。満開の華やかさとは違う喜びがある。
 2月になって、春の近づきをだんだんはっきり感じられるようになってきた。梅も早そうだ。次に東京へ行く予定の2月の終わり頃には、もう満開になってるかもしれない。そのときも行けたらまた行こう。

 東京タダ見スポットシリーズは今度も続いていく予定です。自分の貧乏性がこんなところで役に立つとは思わなかった。思いがけずお前の鼻が役に立つのさと言われたときのトナカイさんのように私も喜ぼう。
 東京というと物価が高いからお金を持ってないと楽しめないと思い込みがちだけど、必ずしもそうではないことがだんだん分かってきた。ものや場所によっては地方より安かったり無料のところが多かったりする。探せばけっこうあるものだ。
 それに、東京という街そのものが、タダで見られる巨大なお祭り会場みたいなものなのだから、何も買わずに街を歩いているだけでも楽しめる。このブログでも東京街並みシリーズをやりたいと思っている。
 金があるときは金を使った楽しみがあるし、ないときはないときなりの面白さがある。今は貧乏東京散策を楽しんでおこう。将来大金持ちになったなら、そのときはタダ見スポットなんてちっとも楽しくないだろうから。




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