現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
シェリー、俺はあせりすぎたのか、しだれ梅はまだ一分咲きだったよ
2007年02月18日 (日) | 編集 |
農業センターの梅園前

OLYMPUS E-1+SIGMA 18-50mm(f3.5-5.6), f5.6, 1/80s(絞り優先)



 今年は暖かいから梅も早く咲いてるんじゃないかと期待して行った、天白の名古屋市農業センター。しかし、結果は写真の通り。咲いてるっていえば咲いてるけど、わずか1分咲き程度。完全に早まった。カップヌードルの3分が待てずに1分で食べ始めてしまったような早まり方。焦りすぎ。
 考えてみると毎年見頃は2月の終わりから3月中旬までだから、2月の11日ではさすがに早すぎた。あれから一週間近く経ったから、今はもう少し進んでいるだろう。
 今年の「枝垂れ梅まつり」は、3月3日から3月21までだそうだ。きれいな梅を見るには当然この時期がいいのだけど、このときばかりはものすごい人出になるから注意が必要だ。普段無料の駐車場も突如300円となってしまい、にもかかわらず公共交通機関が不便だから駐車場に車を入れるだけで大行列になってしまう(地下鉄「平針」からは歩いて20分かかるし、バスに乗って「荒池」で降りても7分歩かないといけない)。なので、行くならその直前か直後がいいと思う。
 毎週月曜定休(祭り期間は無休になるかも)で、時間は9時から16時30分まで。入場は無料。
 700本のしだれ梅は、日本一だそうだ。本当かどうかは分からない。もし本当なら同時に世界一となるだろうし、それは地球一となる。もしかしたら太陽系一かもしれない。ようこそここへ、銀河一のしだれ梅。実際、これだけしだれ梅に特化してる梅園も珍しいと思うから、一見の価値がある。満開のしだれ梅はあたり一面を白とピンクに染めて、降るように咲き誇る。梅の香りと風情も悪くない。

しだれ梅

 しだれ梅といっても50品種以上あるようで、ここでの主な品種は、呉服(くれは)、緑萼(りょくがく)、藤牡丹(ふじぼたん)、満月(まんげつ)だと説明板にあった。それらがしだれ梅界においてどのような位置づけのものなのか私にはさっぱり分からない。他にも、玉垣、青竜、白滝などがあるらしい。花の形は、八重や一重、大輪、中輪などがあり、色は白と淡紅が多く、一般的な梅のような赤いのは少ないようだ。
 古典文学にはしだれ梅は登場しない。ということは、江戸時代に品種改良して作られたものだろう。1681年の「花壇綱目」に一品種登場するというから、一般的になったのは江戸中期以降のようだ。意識的に作り出されたのか、偶然できたのか、そのあたりのことは分からない。いずれにしても、江戸時代というのは本当にのんきな時代だったなと思う。日本人が初めて趣味や道楽にうつつを抜かすことができた時代だったかもしれない。「スイス500年の平和が生んだものは鳩時計だけだ」と映画『第三の男』のセリフにあったけど、いやいやそうでもない、江戸260年の平和は実に多くのものを生み出して、今の私たちの暮らしや心を潤してくれている。鎖国も悪いことばかりじゃなかった。

農業センターの牛さんたち

 農業センターというからには、ここは農業のセンターである。昭和40年に、都市農業のための施設として作られ、当初は農家さんなどを対象に技術指導や技術の伝達を主にしていたのが、近年になって広く一般にも開放されるようになった。動物の飼育展示や、ふれ合いコーナーなどがあり、体験学習やアイスや牛乳などを飲み食いしたりもできる。ひと言で言えば、農業公園ということになるだろう。ただ、そう言われてもピンと来ない人が多いと思うけど。
 名古屋コーチンの他、天然記念物の鶏がたくさん飼われていたり、ふ化したばかりのヒナが間近で見られたり、牛に触ったりもできるので、子供も楽しめるようになっている。アイスも美味しいらしい。名古屋コーチンも売っている。さっきまでかわいいねと見ていたものの肉をお土産に買っていくのはどうなんだろうと思わないでもないけれど。
 ベゴニア温室もなかなかの充実している。ただし、冬場は外との気温差がありすぎて、入った瞬間にデジのレンズとメガネ曇って鍋はすっかり食うものなし状態になってしまうので、ここへ行くときはクリンビューを持っていくといいだろう(今でも売ってるんだろうか。)。
 ひょうたんのトンネルや、ジャンボカボチャなどの季節の風物詩あり、7月の子供体験教室、11月の動物ふれ合い農業センターまつりなどのイベントありで、一年中楽しめるようになっている。
 親子乳搾り教室(500円)に参加すれば、帰りに「乳搾り体験証明書」がもらえる。これさえ持っていれば、オレはちょっと乳搾りにはうるさい男だぜとクラスのみんなに自慢できること請け合いだ。子供部屋の目立つところに飾っておこう!

農業センターのロウバイ

 梅をあまり撮れなかったので、ロウバイを撮ってみた。中をしっかり確認しなかったのだけど、これはソシンロウバイ(素心蝋梅)かもしれない。中が紫色のものをロウバイ、中まで黄色いものをソシンロウバイとして区別している。
 ロウバイと聞くといつも狼狽を連想する。特にやましいところはないけど、狼狽してしまいがちな私。実際は、花の質感が蝋細工(ろうざいく)のようだから蝋(ろう)の梅と名づけられたとか、花の色が蜜蝋(みつろう)に似ているからそう呼ばれるようになったなどと言われている。
 中国原産ということで、「唐梅」と書いてトウバイやカラウメという別名も付いている。中国での自生地ははっきりしていないようだ。かなり山奥らしい。
 日本へは江戸時代の始め頃、朝鮮半島経由で入ってきたということになっている。冬の花が寂しい時期に咲く貴重な木として、すぐに定着して各地で植えられるようになったようだ。臘梅(ロウバイ)は中国名で、日本でもそのままこの名前が使われた。
 学名のキモナンサス(Chimonanthus)はギリシア語で「冬の花」を意味する。英名は「Winter Sweet」。これもやっぱりそのままだ。スウィートは見た目と甘い香りから来ているのだろう。
 花の構造が少し変わっていて、萼(がく)と花弁がはっきりしていない。たくさんの花被片が集まっていて、中心に多くの雌しべとその外に数本の雄しべがある。だから、梅という名前は付いていてもバラ科ではなくて、ロウバイ科ロウバイ属という独立種とされている。
 育てるのはそれほど難しくないようで、中国ではよく庭木としても植えられているそうだ。日本では一般家庭の庭ではあまり見かけないような気がする。日当たりのいいところが好きなくせに西日が嫌いなんだとか。西日好きの私とは相性が悪いかもしれない。あまり見たことがないのだけど、赤紫色の実がなって、最終的には落花生のようになる。なんとなく食べられそうなんだけど、食べるとロクなことにならないようなので公園で見かけても取って食べない方がいいと思う。

 農業センターのしだれ梅はもちろん素晴らしいものだし、見る価値があるのだけど、個人的にはあえてシーズンオフをオススメしたい。すごく面白い見物があるというわけではないのに、なんとなく居心地がいい場所だから。人が少ないときにのんびりプラプラすると気持ちいいのだ。のんきに寝そべっている牛を見てゆったりした気持ちになったり、多種多様なニワトリの姿を見て笑ったり、ヒヨコを見てカラーヒヨコの思い出に浸ったり、家畜の匂いを胸一杯に吸い込めば、日頃のうっぷんも吹き飛ぶというものだ。
 なにはともあれ、しだれ梅。まずはこれを一度見てから、次に農業センター上級者コースでお会いしましょう。梅そっちのけで地面にはいつくばるようにして写真を撮っている男がいたら、それはお金を落として困っているのではなく野草の写真を撮ってる私です。今なら春の野草オールスターズが顔を揃えて咲いてます。




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