現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
日本人とソメイヨシノの奇跡の関係性
2007年04月04日 (水) | 編集 |
藤が丘の桜

OLYMPUS E-1+SIGMA 18-50mm(f3.5-5.6 DC), f6.3, 1/125s(絞り優先)



 去年はたくさん桜を見た。近距離、中距離の桜スポットをひとりでまわって、ずいぶん写真も撮った。2006年はこれまでで一番桜を見た年だったんじゃないかと思う。
 今年はツレと一緒に近所を一日で全部回った。満開には少し早かったけど、今年はもうこれでいいと思った。短い時間で一気に堪能したから、あっという間に満腹になってしまったのだろうか。
 今年の桜はなんだかちょっとおかしかった。早い開花予想がはずれて、咲き始めてから全然進まずに、満開になるまでに10日以上もかかった。同じ場所でも木によってバラつきが大きくて、もう散り始めてるのがあるかと思えばまだほとんど咲いてないようなものもあって、桜自身も戸惑ったように足並みが揃っていない。なんとなくぎくしゃくした咲き方は、足並みの揃わない行進のようで、やや美しさを欠いていた。

 まずは藤が丘から。グリーンロードから藤が丘駅に向かう道と、藤が丘駅前から四軒家に向かう道の両脇に桜が続く。ここは歩いて見るより車で走り抜けるのがきれいだ。特に終わりかけの桜吹雪は気持ちよくて、幸せな気持ちになる。舞い落ちる花びらの中を車で走るのは感動的なのだ。桜吹雪は写真には写らないから、できたら実際に体験してみてください。
 ここが近所では一番咲き具合が進んでいて、すでに満開だった。少し寒くなったから数日は持つだろうけど、今週末には見頃を過ぎてるかもしれない。来週は桜吹雪になる。

マルス裏の桜トンネル

 個人的に「マルス裏の桜トンネル」と呼んでいるマイナー桜スポット。私のお気に入りの場所だ。かつて「ホームセンター マルス」があったところの裏道で、道の名前もついてないのでどうやって説明していいのか分からない。三軒家の一本裏の道で、森孝の八剣神社がある前の道、といっても近所の人しか分からないだろう。近隣住民以外にわざわざここまで桜見物に来る人がいるとも思えないから、近場の人しか知らない超マイナースポットだ。全国にはそういう隠れ桜名所が無数にあって、それぞれが胸の内で大切にしてるのだろう。
 ここは車通りも人通りも少なくて、車で通っても歩いてもいいところなので、場所が分かるという人にはおすすめしたい。ここの桜トンネルを私はもう何十回見てるんだろう。だいぶ桜の木も成長してきたけど、まだ大きくなるから、今後も楽しみだ。近い将来、空も見えないくらいの桜トンネルになるはずだ。

尾張旭の桜

 尾張旭の桜は名古屋市内よりも遅れ気味だった。まだ満開には遠い感じ。
 ここの桜はたいしたことがないのだけど、妙に人が集まってきて人気がある。それは、数少ない宴会ができる桜スポットだからだ。川沿いや道路沿いではなかなか大勢で坐って酒を飲むなんてことはできないけど、この城山なら場所はたくさんある。
 ここは撮影や見物よりも宴会向きの場所だ。見るならスカイワードあさひに登って、上から見下ろすのがいい。長池を取り囲むように咲いている桜は悪くない。

香流川の桜

 私の庭中の庭、香流川沿いの桜。うちから歩いて行ける至近距離の桜スポット。
 何年か前まではまったくの無名で満開時でも歩いているのは近所の人たちだけだったのだけど、近年少し知られるようになって人が増えた。増えたといってもチョロチョロ歩いてるくらいで、山崎川のようなことはまったくない。山崎川はだいぶ木を切ってしまったから、現状ではこちらの方がきれいだと思うんだけど。
 ここの残念なところは、両岸の間が広くて間延びしてることと、川自体の様子が美しくないことだ。それが大きなマイナス要因となって、メジャースポットになりきれずにいる。車をとめておけるところもほとんどなく、宴会ができるところもまったくない。住宅地だから、住民も積極的に桜名所にしようとは思ってないのだろう。
 川沿いはサイクリングロードになってるから、ここは自転車が気持ちよさそうだ。

香流川の桜と近所の人たち

 ここは桜見物だけの人は少なくて、日常的な散歩や通勤通学、買い物の行き帰りといった人たちが多い。でっかいカメラと三脚を持った人は見たことがない。やっぱりマイナーなのだろう。絵にするには難しいポイントなのは確かだけど、もう少し人気が出てもいいと思う。せっかく立派な桜といういい素材があるのに、それをいかせてない。ここはこれでいいんだと近所の人はみんな思ってるんだろうか。

桜の花

 ソメイヨシノと日本人、どちらかが欠けても春の幸福な関係性は成立しなかった。限りなく白に近い薄桃色の美しさを知るのは日本人だけだろうし、パッと咲いてパッと散る潔さの大切さをソメイヨシノは教えてくれる。同じように横並びで咲くソメイヨシノの整然さも、日本人が本来持っている気質に合った。これほど全国民とひとつの花が幸福な関係性を持ち得たところは他にない。これを奇跡よ呼ばずして何と呼ぼう。
 歳を取るごとに桜に対する思い入れが強くなるのは、見られる残り回数が減っていくからだろう。50年生きても50回も見られない。80年でも80回。毎年一回いっかいが貴重なのだ。来年もまた桜の季節の上に立てるという保証はどこにもない。今年見た桜が最後の桜になる人も大勢いる。
 ソメイヨシノは、オオシマザクラとコマツオトメを掛け合わせて生まれた桜だと遺伝子研究によって判明したというニュースがあった。世界中にあるすべてのソメイヨシノは、一本の親から生まれたクローンだというのは有名な話だ。でも、それぞれの桜はそれぞれに生きて、そこに思いを寄せるそれぞれの人がいる。決して同じものなんかではない。毎年まいとし、一ヶ所いっかしょが、すべて一期一会。同じ機会、同じ桜は二度とない。去年と桜は同じでも、それを見る自分は去年の自分とは違っている。
 今年も残り少なくなった桜シーズン。最後まで心を込めてしっかり見ておこう。写真も大事だけど、記憶に刻むことが大切だ。目を閉じて思い浮かべる桜のシーンを、たくさん持っている人は幸せな日本人だ。




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