現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
40-80mmマニュアルレンズでグリグリしながら撮り巡った牧野ヶ池緑地
2007年04月28日 (土) | 編集 |
牧野ヶ池緑地-1

PENTAX istDS+smc PENTAX-M 40-80mm(f2.8-4), f2.8, 1/20s(絞り優先)



 久しぶりに変なレンズを買った。PENTAXのマニュアルレンズで、40-80mmというなんとも中途半端なやつだ。istDSで使うから1.6倍換算で64mm-128mmとなって、半端さも倍増する。一応分類としては中望遠となるのだろうけど、128mmでは望遠としては届かないし、64mmはスナップにも向かない。なんで買ったんだろう私。人は必ずしも自分で自分の行動の理由を把握しているわけではない。無駄遣いもまた、人生の醍醐味のひとつだ。
 せっかく買ったからには一日くらい使ってみようと、夕方近場の牧野ヶ池緑地へ持っていった。このレンズのひとつ特徴としては、80mmのときだけ簡易マクロとして焦点距離が37センチの1:4になるというのがある。その使い心地と画質を確かめるというのが主目的だった。
 しかし、ジャンクレンズ(1,000円)に説明書なんていう気の利いたものが付いているはずもなく、最初どこをどうすればマクロになるかさっぱり分からず、かなり長い時間考える人となってしまった。80mmの位置からもう一歩ぐっと力を入れてマクロポジションにダイヤルを合わせることに気づいたのは30分後のことだった。
 更に、絞りのリングをどうやれば連動するのかも分からない。リングは回るものの、絞り羽がまったく動かない。レンズをはずしてグリグリすると絞り羽も連動して動く。カメラに付けると動かない。結局分からないまま、絞り優先モードですべて開放となってしまった。遠景も開放って、なんか間抜け。
 家に帰ってきてネットで調べてようやく分かった。マニュアルモードにしてからAE-Lボタンを長押しすると羽がバシャって感じで動くのだ。ファミコンの裏技じゃないんだから、こんなもの普通気づかないぞ。
 今回初めてマニュアルフォーカスのズームというのを買って、これまたややこしいったらない。Takumarとかの単焦点は、絞りリングで絞りを決めたら、あとはピントリングでピント合わせて撮るだけだからそんなに面倒ではないのだけど、これがズームとなると、まずはズームリングで撮る範囲を決めて、絞りリングで絞りを決定して、そこからピントリングでピントを合わせてと三段階グリグリしなければいけないのだ。その間の私は、なんだかレンズをやたらグリグリ回している人となって、その様子を人に見られるとなんだかとっても恥ずかしい気がした。あいつどんだけグリグリしてるんだよ、早く撮れよと思われてしまいそうで。ゴルフで必要以上に素振りを繰り返してなかなか打たない人みたいだ。マニュアルズームレンズって、片手にソフトクリームを持っていたら絶対に使えないことが分かった。

 何はともあれ、40-80mmレンズを付けて、1時間ほど歩いて撮ったのが今日の写真だ。今日の牧野が池でやたらレンズをグリグリしていて人を見かけたとしたら、それは間違いなく私だった。
 最初は、池の周囲の散策路から。前回訪れたのは確か3月の始めだったと思うけど、ひと月以上経って、木々の緑は大繁茂していた。名古屋市内の緑地とは思えないほどの密林状態だ。茂みの向こうからトラでも出てきそう。春の緑の成長速度は、伸び盛りの子供のような勢いがある。ちょっと油断したらもう服が着られなくなってるみたいな。そろそろ散策路をはずれて中に踏み込んでいくのは難しくなった。小さな虫集団も現れて、クモの巣が顔にかかる日も近い。今度からは緑地へ行くときは、フルフェイスのヘルメットをかぶっていきたいくらいだ(いかないけど)。
 こんなシーンはf2.8の開放で撮るところじゃないけど、解像感はもうひとつ。絞ればもう少しシャープになるのだろうけど、描写の線は太めのようだ。色の出方は悪くない。コントラストはきつめで、シーンによっては白飛び、黒潰れが起こりやすい印象だった。全体としての雰囲気は嫌いじゃない。

牧野ヶ池緑地-2

 牧野池は、冬ガモたちの姿がすっかり消えて、いつものアオクビアヒルやカルガモたちの静かな池に戻っていた。3月のときはまだけっこう居残っていたのに、みんな帰っていったようで、それが寂しくもあり、安心もした。カモも渡るやつはちゃんと渡るし、渡らないやつは渡らない。みんな季節や自分の居場所を間違えたりしなくて偉いなと思う。もうシベリヤやカムチャツカに無事帰り着いただろうか。また来年、きっと戻ってきて欲しい。私も半年後にまた会いに行こう。

 コントラストがきついシーンでの描写は、良く言えば深い、悪く言えば重い。ムードはあるけど、シャドー部分が潰れすぎる。全体を明るくすると白っぽくなって締まりがなくなる。PENTAXの絵作りじゃなくてNikonみたいだ。D70で撮るとよくこんな感じになった。
 ピントはなんとなく合わせづらい。レンズの曇りの影響もあるのかもしれないけど、Takumarに比べると見えにくくて、ピントの山が掴みづらい。ピントリングもTakumarより大雑把な気がする。istDSはマニュアルモードでもピントが合うとピピッと合焦音がするからそれが手掛かりになるのだけど、istDは音がしないからマニュアルレンズは使い勝手が悪い。

牧野ヶ池緑地-3

 こんなシーンも開放なんかで撮る人はめったにいないと思うけど、あえて柔らかい描写にするには開放で撮るというのも一つの手だということに気づいた。怪我の功名だ。これはこれで悪くない。
 無限遠もちゃんと出てるから、遠景も苦手ではないようだ。けど、元々はどういう趣旨で開発されたレンズなんだろう。35mmから始まっていれば普通の標準ズームだったのに、あえて40mmからにしたのはどんな意図だったのか。もし、f2.8-4ではなくf2.8通しにできたとしたら、もっといいレンズになっていただろうに。その分かなり高くなっただろうけど。
 それにしても広角64mm換算というのは、デジでは撮るものが限られてくる。風景写真には向かない。ポートレートとしてはいいのだろうか。猫用レンズとしてはそれなりに使えるかもしれない。

牧野ヶ池緑地-4

 一番期待していた簡易マクロ機能は、こんな感じ。ピントが少し合ってないような、手ぶれもあるようなんだけど、ややシャープさが足りない。最短37センチの倍率1:4というのも、あと一歩寄り切れずにもどかしい。TAMRON 90mmみたいなのを要求するのはもちろん間違っているのだけど、たとえばTakumar 50mm f1.4のマクロ的な使い方と比べても、使い勝手はあまりよくない。背景ボケはまずまずきれいだけど。
 一段か二段絞って、ちゃんと三脚で撮ればまた印象も違ってくるだろうか。ただ、私の使い方としてはラフな手持ちで開放が多いから、あえてこのレンズを使う必然性は弱い。標準レンズ的に使いつつ、とっさにマクロ撮影もできるという便利さはあるにしても。

牧野ヶ池緑地-5

 ハナミズキに群がる小さい虫とクモ。花びらに見せかけた白い飾りで虫たちを呼び寄せ、中心にある小さな花へと誘い込む。派手な宣伝を打って売り込む商売に似ている。
 これを見ても、やっぱりピントが合ってると思われる部分の解像感が鈍い感じがする。シャッタースピードはそこそこ出てるからひどい手ぶれではないはずだ。かといってソフトレンズのようなふわっとした絵になるわけでもない。
 結論的に言って、マクロレンズとしてメインで使うには力不足と見た。ただし、今回使ったのはカビ、曇りありのジャンクレンズなので、きれいな状態のレンズではもっと鮮明になるはずだ。状態のいいものも試したくなってきた。あと一歩惜しい感じだから、そのちょっとした残念感がなくなればお気に入りとなる可能性はある。鈍いというのも単焦点と比べてで、最近のズームレンズよりは自己主張のある写真になるから、そういう部分での面白さはある。

牧野ヶ池緑地-6

 太陽が森の向こうに隠れて、空はオレンジからピンクに変わる。水面もまたピンク紫に染まった。
 何気なく撮ったこの一枚がけっこう気に入った。このレンズはこういうぼんやりした被写体と淡い色合いを切り取るのに向いているのかもしれない。シャープさを求めてもこたえてはくれないから、雰囲気重視でいくべきだろう。同じシーンをデジタル用の標準ズームで撮っても、こういう写真にはならない。

 短時間の少しの撮影だけでこのレンズの実力を分かったとは思えないけど、一応の傾向は見えた。使えないレンズではない。使うシーンさえ見つけられれば普通とはちょっと違った写真が撮れる。いかにも写真を撮ってるというマニュアル感も味わえる。
 ただ、一本で全部をまかなうのは苦しいから、他のレンズとの組み合わせになるだろう。たとえば18mmか20mmくらの広角単焦点レンズと、135mmくらいの中望遠と、200mmか300mmの望遠レンズという4本体勢の標準レンズとしては使えそうだ。って、全然街のスナップ向きじゃない。観光地へ行くにしても邪魔くさいラインナップだ。
 このレンズでなければ撮れないシーンや場所というのはちょっと思いつかない。明るいといってもF2.8だし、マクロになるとF4だから室内では使いづらい。動物園にも水族館にも中途半端だ。一本勝負ができるところといえば植物園くらいだろうか。
 結局のところ、今後は気まぐれに登場する程度になりそうだ。荷物が少ないときにとりあえず持っていって、思い出したら使おう。人がたくさんいるところで、これ見よがしにグリグリしたい場合は最適なレンズだ。キャンペーンガールの撮影会とかにはいいかもしれない。キャンギャルが、あの人やけにグリグリしてるけどどんなカメラを使ってるんだろうと私に興味を持ってくれるかもしれないからだ。コンパニオンガールの視線を独り占め。
 というわけで、このレンズを付けて行くのに最適な場所はモーターショーと決まった。逆に一番向かないのは電車だ。列車が来てからあちこちグリグリしてたんじゃ電車はあっという間に通り過ぎて間に合わない。鉄ちゃんへの道のりは、ギャル攻略よりも遠く険しいのだ。




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