 PENTAX istDS+smc PENTAX-DA 18-50mm(f3.5-5.6 AL), f7.1 1/80s(絞り優先)
ずっと以前から、鎌倉に対して憧れと恐れの入り交じった複雑な気持ちを抱いていた。前世の因縁が何かあるようなないような、そんなことを思ったりもした。行きたい気持ちと、近づかない方がいいような予感もあって、うかつに行くことができないでいた。 実際に行ってみたら、とても楽しくて怖いようなこともなく少し拍子抜けしたところもあったのだけど、それはゴールデンウィークという人が大勢集まる時期であったのと、ツレと二人だったからというのがあったようにも思う。これがもし、寂しい季節の一人旅で鎌倉幕府の歴史探訪などというテーマで出向いていたとしたら、今回のように無事に済まなかったかもしれない。 何はともあれ、新緑の5月、鎌倉はとても魅力的な街だった。京都とはまた違った趣のある古都を一日たっぷり歩いて楽しんできた。今日はそのさわりを少しだけ紹介したいと思う。
JRの湘南新宿ラインで新宿から北鎌倉までは乗り換えなしで約1時間(890円)。思ったよりも近かった。これなら鎌倉から都内にも充分通勤できる。 それにしてもゴールデンウィークの鎌倉はものすごい人出だった。道が狭いこともあって、道路の車渋滞はもちろん、歩道の歩行者渋滞もできて、歩くことさえままらないのだ。スタスタ歩いたら10分のところも20分くらいかかってしまうほどだった。この日の鎌倉は、東京都内よりも人口密度が高かった。 鎌倉観光の基本は、やはり北鎌倉からということになるだろう。有名どころの寺がこのあたり一帯に固まっている。私たちもたっぷり歩く覚悟を決めて、順番に回っていくことにした。まずは円覚寺から見ていくことにしよう。いざ、鎌倉。
 5月はまさに新緑の季節。鎌倉は桜や紅葉はそれほど充実してるというわけではないので、アジサイの季節と新緑の今が一年で最も華やかな時期といえるだろう。 鬱蒼と生い茂る古木と下草と苔と花々が、緑のグラデーションとなって、訪れる人々を体内から浄化してくれる。とにかく緑が深いというのが鎌倉に対する第一印象だった。街中にある京都とはその点がまったく違う。鎌倉は山の中にある。
 淡い品のある紫色のムラサキハナナ(紫花菜)が、境内や道ばたでたくさん咲いていた。初夏の花々も、この時期の鎌倉の楽しみのひとつとなる。藤には残念ながら少し遅かったものの、多くの花を見ることができた。 多いといえば異人さんも多種多様だった。外国人にとっても古き良き日本を知ることができる魅力的な街として名が通っているのだろう。会話を聞いていると、様々な国から人々がやって来ているのが分かる。中国、韓国のアジア系はもちろん、ドイツ、アメリカ、イギリス、ロシア人も多かった。それ以外にもインド人や(もしかしたらパキスタン人かもしれない)中東の人までいてちょっと驚く。鎌倉は国際色豊かな街でもあった。 全体的な客層としては、おばさま・おじさまのグループや夫婦連れ、子供を連れたファミリー、カップル、女の子グループと、なかなかに幅広い。普段は修学旅行生もいるのだろう。小さな赤ん坊連れと年輩の人たちが少なかったのは、ここは高低差のある道のりをかなり歩かなくてはいけないからだろうか。デートコースは慎重に選ばないと、ハイヒールの彼女のご機嫌を損ねることになりかねない。日頃運動不足のお父さんも、一日歩き回るのは厳しい。
 古都には着物がよく似合う。少し季節は早いけど、浴衣の女の人も歩いていた。 これぞワタシが求めていたジャパーンね、とばかりに外国人が嬉しそうに写真を撮らせてもらっていた。お、こりゃいい場面だと、私もおこぼれにあずかって着物の女性の写真を撮る外国人の写真を撮らせてもらった。そんな私を撮っている人が誰かいたかもしれない。それが外国人だったら面白い。着物の日本人女性の写真を撮る外国人を撮る日本人の男の写真を撮る外国人。 現代の日本では、着物が違和感なく風景に溶け込むところは少なくなった。京都などでは逆に作りものめいた不自然さを感じることがあるから、そういう意味では鎌倉は着物が似合う街ベストワンかもしれない。
 有名な明月院の丸窓。 人が入る写真を嫌う人は多いけど、私は人がいる写真が好きなので、このシーンは、わっ、ラッキーと思って急いで一枚撮ったのだった。丸窓の向こうを撮る人を撮る私。おっさんではなく、一眼使いの女性というのも絵になった。 ここはユニセフ募金という名目で300円を払うと中に入れて、お茶とお菓子付きで庭を見られるというシステムになっている。写真を撮るだけなら、むしろ外からの方が撮りやすい。 しかし、鎌倉はどこへ行っても小銭をむしり取られてあまりいい気分ではない。こっちで300円、あっちで400円、ここではまた300円と、およそタダとは無縁の観光地だ。賽銭ならこちらの気分次第で100円を入れても惜しくないけど、強制的に拝観料として取られると楽しくない。自然と、賽銭は10円になってしまう。これでは鎌倉の神様との関係も悪化してしまうのではないかと心配になる。払った拝観料の中から賽銭用として神様たちで仲良く分けてくださいと拝んでおいた。 往復の交通費と昼飯代だけでは楽しむことができない鎌倉観光なのであった。食事関係もまた高い。
 混雑のクライマックスは鶴岡八幡宮。小町通りからして大渋滞で、前へ進むのもヨチヨチ歩き。休日の浅草仲見世並みだ。やっとの思いで境内に入ると、そこはまさに初詣状態。なんなんだこの人は。見渡す限りの人、人、人。驚きあきれ、次に笑えてきた。なんだこりゃ。 ゴールデンウィークの鎌倉、侮りがたし。この人出を形成していた私たちを含めて、ほとんど全員が同じことを思っていたことだろう。
この他、建長寺や鎌倉大仏、長谷寺など、有名どころは一通り巡ってきた。最後は由比ヶ浜で海も見て、鎌倉名物しらす丼も食べた。そのあたりのことは、明日以降少しずつ紹介していくつもりでいる。 今回はまだほんの一部にすぎないけど、ゴールデンウィークにどこへも行かなかった人に少しは観光気分を味わってもらえたらこれ幸い。鎌倉へ行こうと思っていて行かなくて、写真の人だかりを見て行かなくて正解だったなと思った人もいるかもしれない。そう、きっとそれは正解。確かに新緑の季節はいいけど、あえてゴールデンウィークど真ん中に行くところではない。5月の2週目でも3週目でも大丈夫だ。鎌倉は逃げていきはしない。平日に行けるなら、静かな古都を味わうこともできるだろう。 私個人としては、最高潮の鎌倉を見られたことは大いなる収穫だった。これでもう、アジサイの季節も恐るるに足りず。どれだけ混雑していても、一度経験していればもう怖くない。ゴールデンウィーク以上ということはないだろう。 次は源氏山や金沢街道の方にも行ってみたい。江ノ電も撮れなかったから海沿いの風景と絡めて撮りたいし、江ノ島まで足を伸ばせばあちらでもたっぷり一日楽しめる。鎌倉は一回や二回では回りきれないし、味わい尽くすことができないことが今回でよく分かった。表の鎌倉を見たら、次は裏鎌倉もある。歴史の闇に分け入っていったとき、初めて私の恐れの正体が見えてくることだろう。鎌倉は、健康的な観光地としての表の顔だけではない。血なまぐさい過去もたっぷり埋もれている。 鎌倉散策はまだ第一歩を踏み出したばかりだ。今後も折を見て、二度、三度と行ってみたいと思っている。私はまだ、鎌倉の深いところに触れていない。恐れることはなかったなどと軽々しく結論づけるのは危険だ。
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