現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
ゴールデンウィーク明けの天王川公園は藤の名残と残り香だけ
2007年05月09日 (水) | 編集 |
天王川公園の藤-1

OLYMPUS E-1+SIGMA 18-50mm(f3.5-5.6 DC), f6.3, 1/15s(絞り優先)



 ゴールデンウィークが明けると気持ちが焦り始める。ここから季節の花が一気に咲き逃げていくから、それを追いかけないと追いつけない気がして。藤にキリシマツツジにカキツバタ、バラに花菖蒲にアジサイ。ミズバショウはもう終わってしまっただろうか。今年はヒトリシズカも見に行くことができなかった。森では夏を前に、野草たちが二度目のピークを迎える。湿地もそろそろ賑やかになっている頃だろう。そんなことを考えていると、気分がソワソワして部屋の中で立ち上がって意味もなく歩き回ってしまう。地図や図鑑を見たり、去年の散策記録を確認したりすると、ますます落ち着かなくなってくる私なのだ。
 そんな中、今年はまだしっかり藤を見られていないことが気になっていた。鎌倉で少し見たとはいえ、数が少なくて終わりかけていたので満足まではいってなかった。愛知の藤ももう終わりだと分かってはいたけど、確認の意味でも津島の天王川公園へ行きたい気持ちが高まって、今日の夕方思い切って行ってみることにした。藤まつりは6日(日)で終わっていたから、もう駄目なんだろうなと半分あきらめつつ。
 着いてみると案の定だった。駐車場も人影もまばらで、それだけでもう遅かったことを知る。毎年藤まつりの期間中はものすごい人出になると聞いている。いくら平日でも人がいなければもう藤は咲いてないということだ。
 遅咲きの藤がいくらかは残っていたものの、全体的に干からびた枯れ花風情で物悲しかった。藤は桜のようにパッと散ったりはせずに、花を少しずつ落としながら生気を失ったようにしなびていく。これはこれで味と言えばそうなのかもしれないけれど。

天王川公園の藤-2

 天王川公園の藤棚は、自称「東洋一」をうたっている。本当かどうかは知らない。念のために言うと、「ひがしよういち」ではなく、「とうよういち」だ。西洋には大がかりな藤棚はないと思うから、本当に東洋一なら世界一ということになる。なんであえて東洋一と称しているのだろう。むしろ日本一と主張した方が説得力があるのに。
 実際のところ、長さ275メートル、総面積4,530平方メートルは、日本最大とのことだ。
 藤は九尺藤(キュウシャクフジ)をはじめ、全部で12種類114本。紫加比丹藤、白加比丹藤、紫藤、白野田藤、野田長藤、曙藤、八重黒竜藤、黒竜藤、六尺藤、薄紅藤、野田藤があるそうだ。よく見てみると、確かに長さだけでなく花の色が違っていたりしていろいろあることに気づく。咲く時期も少しずつずれている。
 ここの藤はまだ若いので、これから成長してさらに立派になっていくことだろう。今年は花付きがもうひとつよくなかったと地元の人は言っていた。桜もそうだったけど、今年は春先の天候がギクシャクした影響だろうか。

天王川公園の藤-3

 花も終わりかけた平日の夕方ということで、訪れる人もチラホラといったところ。ゴールデンウィーク中は人でごった返していただろうに。
 ピーク時は写真でしか見たことがないけど、藤も人もすごいことになっている。紫のシャワーの下を人々の行列がゆっくり進む様子は、なんとなくこの世的なものじゃないようにも思える。
 ピークを過ぎたこの私の写真を見て、ここはたいしたことないと思われないか少し心配だ。できれば満開の写真で天王川公園の魅力を伝えたかった。

天王川公園の藤-4

 藤棚の下に流れる水路は、落ちた花びらが枯れて茶ピンクのじゅたんになっていた。これも桜と違ってあまり美しくはない。藤はやっぱり満開に限るとあらためて思い知る。
 ここの藤棚の魅力は、水路(疎水)の上に藤棚が作られているところだ。満開のときは水面が紫に染まって、頭上の花と水面の藤のコントラスが素晴らしい。これはとてもいいアイディアだ。水によって美しさは2倍以上となる。夜間のライトアップもまた幻想的だ。
 そして藤はなんといっても香りの魅力もある。濃厚な甘さは最初少し息苦しささえ感じるほどで、馴染んでくるとその甘い香りに酔う。今日はもう、残り香だけだった。

天王川公園の藤-5

 天王川公園は、江戸時代に木曽川の支流である天王川をせき止めて作った丸池を中心に作られたもので、四季の花で彩られる津島市民憩いの場となっている。何があるというわけではないけど、子供たちは遊具で遊び、大人たちは池の周りを歩いたり走ったり犬の散歩をしたりしている。
 何やらサル関連の施設を建設中のようだった。サルの見せ物小屋でもできるのだろうか。
 赤い橋の架かる中之島にも少し藤が咲いていた。スイレンもつぼみが膨らみ始め、ミドリガメから成長したミシシッピアカミミガメが石の上で甲羅干しをしていた。ツバメが水面近くを飛び交い、人に慣れたスズメと鳩は近づいても逃げようとしない。
 学校帰りの子供たちから年輩の人たちまで幅広い年齢層を集める、ここはなんとものどかな公園なのであった。

天王川公園の藤-6

 太陽が傾いて、池をオレンジに染め始めた頃、今年の藤もこれで終わりかと心の中でつぶやいて車に向かって歩き出す。今年も満開の藤を見ることができなかった。けど、遅ればせながら訪れておいたことでまた次につながった。今度こそ紫シャワーの下を歩いて満開の藤写真を撮りたい。それにはやはりゴールデンウィーク中に出向いていかないといけないか。前後のどちらかにピークがずれてくれるとありがたいのだけど、なかなかそう都合良くはいかない。
 また来ますの約束の言葉を置いて、天王川公園を後にした。さあ、もう次の花へ向かおう。今日が終わればもう明日は始まっている。心残りに引っかかっている暇はないのだ。




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