 PENTAX istDS+Super Takumar 50mm(f1.4), f1.8, 1/20s(絞り優先)
少し前に瀬戸の窯垣の小径ギャラリーで、招き猫の土鈴(どれい)を作ったという話を書いた。それが焼き上がったという連絡を受けて取りに行ってきた。それがこいつだ。自分で作っておきながら、見るたびに笑える。おまえは誰だ、と思う。土をこねればこねるほどに猫から遠ざかって別の生き物になっていくのをどうすることもできずにこんなことになってしまった。ちょっとネズミの血が入ってるような気もするんだけど、猫以外の何かかといえば、やっぱり一応は猫の範ちゅうに入ることになるだろう。でも、どこか猫じゃない。おまえは一体何者なんだ!? 去年、もらった義理チョコを溶かして固めてチョコ招き猫を作ったのを覚えている人もいるかもしれない。あれと比べたらだいぶ進歩してるし、猫らしくもなっている。このまま招き猫制作を続ければ、いつか私も猫らしい猫が作れるようになるだろうか。 しかし、猫を毎日見てるわりにはいざ猫を作ろうとするとどこがどうなってるか分からないものだ。鼻のまわりとか、ヒゲの位置とか、耳の形とか、正確に思い浮かべることができない。今回作った招き猫の一番の問題点は、耳だった。帰ってきてからアイの耳を見たらこんなふうではなかった。もっと頭の後方にあって、後頭部から真っ直ぐ伸びている。耳だけびよ〜んと取ってつけたようについてはいない。頭と一体化している。 こいつ自身はちっとも猫らしくないくせに、いたってのんきな顔で微笑んでいる。これでいいんじゃよと言わんばかりに。右手は福を招いているというよりも挨拶で手をあげただけみたいだ。
 猫土鈴を作ったのは4月15日だった。たまたま窯垣の小径をツレと訪れた日に陶祖まつりが行われていて、窯垣の小径ギャラリーを通りかかったとき、「土鈴作り体験500円」という貼り紙があるのを見つけて、やらせてもらうことにしたのだった。あとになってみると、これはとても素敵な偶然だった。事前にこんな情報はまったく知らなかった。代金500円という格安さに惹かれたというのもある。 土鈴作りなどもちろん初めてで、土鈴なんて言葉さえ知らなかった。その存在さえも。なので、作家さんに一から教えてもらって、結局1時間ちょっとかかった。でもこれがすごく面白かった。学校で好きだった美術や図工の時間を思い出して楽しかった。久しく自分ではそんなことをやっていなかったことに気づく。最初は軽い気持ちで始めたものが、最後は思わず熱くなって夢中になって作っていた私であった。
 ギャラリーの中では、作家さんたちの作品が展示されていて、気に入ったものがあれば買うこともできる。手前の動物たちが教えてもらった作家さんの作品で、その他普通の陶器や小物類などを作っている人もいる。 ギャラリーの開催は不定期で、今回の展示はすでに終了してしまった。次回の予定はよく分からない。 窯垣の小径ギャラリー自体は基本的に毎日開いていて(不定休)、確かカフェのようになっていたと思う(不確か)。
土鈴というのは私同様、知らなかったという人も多いんじゃないかと思う。けど、世の中には土鈴好きな人がたくさんいるようで、ものすごくいっぱい集めている愛好家とかもいるらしい。何百個も持っている人とか。岐阜県の郡上市には「日本土鈴館」なるものまであって、館長が集めた全国各地の土鈴1万6,000点が展示されているんだとか。同じような規模の「志摩・鈴ミュージアム」というのも三重県にある。私たちの知らないところで、世界は土鈴に満ちていたのだ。 土鈴の歴史は古く、縄文時代にまでさかのぼるという。縄文人たちも土器を作るついでに土の鈴を作って遊んでいたのだ。遊びや趣味というだけではなく、祭礼にも使われたといわれている。鈴の音で悪魔を祓い、幸運を呼び寄せると昔の人たちは考 えていたらしい。奈良時代の遺跡などからもたくさん見つかっている。持ち歩いて熊除けなどにも使われていたらしい。 そういうことから、神社仏閣のおみやげコーナーではたくさん土鈴が売られているんだそうだ。今まで気にしたことがなかったからまったく知らなかった。神社仏閣好きの私ともあろう者が不覚を取った。その他、観光地のみやげものや郷土玩具としてもたくさん作られている。 振るとカランコロンと軽やかな音がする。風鈴よりももっと素朴で、日本人の遺伝子には懐かしく響く。鳴ってこその土鈴、鳴らなければただの陶器の置物。
 これが制作風景だ。このときはまだちょっと大きい。焼くと縮んで小さくなる。土のときはけっこうツルツルだったのに、焼き上がると表面はザラザラになった。削ってきれいにした方がいいんだろうか。色を塗るとまた違ってくるのだろう。 作り方は、まず湿らせた新聞紙で玉をくるむ。そして、皿状にした土を伸ばしながら新聞紙の上から覆ってボール状にする。こうすると焼いたときに中の新聞紙だけが燃えて、空洞ができて中で玉が鳴るというわけだ。なるほど、上手く考えた。 丸い状態から猫の形にしていくわけだけど、これがなかなか手強い。粘土と違って土なので、思い通りに変形してくれない。凹凸をつけるのさえままならないくらいだ。伸ばすことはまず無理。なので、パーツは別に作って貼り付けていく。ここに不自然さの要因がある。粘土だったらもう少し上手く作れたはずなのに。 くっつけたところのまわりに土を足したり、水で濡らしてならしていく。ここでしっかりつけておかないと焼いたときに取れてしまうそうだ。最後にヒゲと目を描いて完成だ。ヒゲがヨレた。波打ったヒゲも間抜けな感じに拍車をかけた。
 右のはツレが作った眠り猫。同じ作家さんに手ほどきを受けて、同じ招き猫を参考にして作ったのに、こんなに違う仕上がりになった。人の猫に対するイメージって意外と幅広い。これが手作りの面白さでもある。作家さんも同じものを作っても毎回どこか違っていると言っていた。 それにしても、作っていてだんだん悔しくなってきた。もっと上手く作りたいのに作れないもどかしさで。作り終わってすぐにもう一個作りたくなったくらいだ。でも、ここで時間切れ。今回のものは今回のもので味ということにしておこう。
 見る角度によって様々な表情を見せる私の招き猫土鈴。この角度から見ると、ウルトラマンポーズだと写真を撮りながらひとりでうけていた。ラジオ体操をしている猫人間みたいでもある。福を招いている感じはなくても、見てると笑えるということは、それだけでもちょこっと幸せを運んできてくれていると言える。笑う門には福来たる。 ツレはこれを見て、お地蔵さんみたいだと言った。確かにヒゲを落書きされたお地蔵さんがいたらこんな感じになりそうだ。これはもはや猫神様と呼んでもいいかもしれない。上から見ると笑っている猫土鈴は、下から見ると瞑想しているようだし。毎日こいつに向かって拝んでいるといいことありそう。 またぜひ猫作りに挑戦してみたい。今度こそリアル猫を作ってみせる。もう猫らしくないとは言わせない。目だってパッチリ開いたやつにするのだ。2007年秋、二代目猫土鈴を乞うご期待。
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