 PENTAX istDS+Super Takumar 50mm(f1.4), f1.8, 1/6s(絞り優先)
15年以上のベテランとなったうちのオーブンレンジに故障疑惑が持ち上がり、新しく買い換える前に知り合いからオーブンレンジを借りてきた。重くてでっかくて、けっこう高級品っぽい。なかなかいい仕事をしそうだ。これで上手く焼ければうちのレンジがダメってことだし、これでも失敗すれば私がダメってことだ。分かりやすい。なんでもっと早くこの方法に気づかなかったんだろう。 作り方はあえて前回と同じにした。やり方を変えてしまうと失敗の原因がどこにあったのか分からなくなってしまう。卵は全卵で、2個に対して小麦粉60g、砂糖60g、バター20gと、レシピ通りにした。牛乳は普段から使っていない。 レンジに「ケーキボタン」があったから、今回はこれでやってみることにした。180度で40分のようだ。あらかじめ温めておいた方がいいのかどうか迷ったのだけど、一応170度まで上げておいた。ケーキボタンで焼く場合は余熱なしで焼くはずだけど、これも前回と条件を合わせるということで同じようにしておいた。 ターンテーブルが回らず角皿に載せて焼くタイプだ。回るタイプとどっちがケーキ向きなんだろう。回るのと回らないのではずいぶん話が違ってくるような気もするんだけど。 火力というか力は強い。開始から10分そこそこで膨らんできて、早くも表面に焦げ目がつき始めた。おいおい、早くないかい? そんなに最初から飛ばしちゃあとから持たないぞとなだめたくなる。レシピによってはアルミホイルを被せると書いてあるやつもある。ただ、15分以内に扉を開けるのはタブーだ。熱が逃げると膨らまなくなってしまう。とりあえず40分というんだから最後まで余計なことをせずに見守ることにした。 その間に後かたづけをしたりテレビを観たりして、ふとレンジの中を見ると、うわー、陥没してるー。なんてこったー。下の写真の状態だ。
 完全にしぼんだ。プシューという音が聞こえてきそうなほど勢いよく沈み込んでいる。またもや地盤沈下スポンジケーキとなってしまった。一体どうしてこうなってしまうんだろう。ただ、前回と決定的に違うのは、しっかりと表面が焦げている点だ。うちのレンジの場合は、陥没しても尚半生状態で全然焼けてる感じがなかった。やっぱりあのレンジはどこかおかしいに違いない。 それにしてもしっかり焼けてますね、きみ。東幹久並みに黒こげじゃあないか。けど、それでいいんだ、悪くないよ。今までになく焼けた実感があって、大失敗とは言えない手ごたえを感じた。同じ失敗でも悪い失敗じゃない。次につながる失敗だ。
 ひっくり返してみたところ、なかなかではないか。ちょっと焼きたての食パンみたいだけど、今までこんなきれいな焼け目がついたことがなかったから嬉しかった。失敗は失敗でも半生じゃない。今後に可能性を感じさせる失敗だ。どうやら本当にうちのレンジはオーブン機能がいかれていたらしい(レンジとしては普通に使えている)。1時間以上焼いても半生ってのはいくらなんでも変だ。泡立てとか粉の混ぜ方以前の問題だから。 今回はあらかじめ温めた上でケーキボタンで焼いたのが失敗だった。ケーキボタンで焼くなら余熱なしでやらないといけないし、温度を上げておくなら温度設定と時間で焼く必要がある。早々に表面が焦げてしまったのは、180度というのが温度が高すぎたせいだろう。40分というのも長すぎる。160度くらいでゆっくり焼いた方が好結果につながりそうな気がする。 その後ネットでスポンジケーキの失敗の要因を調べてみたところ、どうやら陥没は泡立てすぎが原因だったようだ。ハンドミキサーが楽チンだから、喜んで泡立てまくってしまってるのがいけないらしい。確かに型に流し込む段階でサラリではなくドロッとゆっくりしたたり落ちる感じで、これはちょっとやりすぎたなと思ったんだ。爪楊枝が立つくらいと書いてあるのに、箸が立ってビクともしないくらい固かった。泡立てすぎると生地の腰が弱くなってしまうんだそうだ。何事もほどほどがいいということか。あと、やっぱり手間を惜しまず、卵黄と卵白を分けて泡立てた方が上手くいくそうだ。湯せんもした方がいいのだろう。
 少し置いた後、待ちきれなくて切って食べてしまった。本当は一晩寝かせておいた方がしっとりするのだけど、久しぶりにまともに食べられるものが焼けて待ちきれなかったのだ。 案の定、パサパサして焼きすぎなのが分かる。でも、しっかり焼けている喜びもあった。見た目からしてもスポンジケーキというよりパンっぽいけど、不味くはない。食感は固くなったカステラとスポンジケーキの間くらいだろうか。中がしっかり詰まってる感じがなくて、スカスカしてるから何にも似ていない不思議な食感だ。またもや初めてのケーキを口にすることになった。 泡のキメも荒い。粉も混ざりきってなくて、一部白い部分が顔を出している。混ぜ方が足りなくて、しっかりと空気抜きが出来てなかったようだ。フワフワスポンジケーキにはまだまだほど遠い。 とはいえ、光は見えた。ここ最近は作れば作るほど深い迷路に迷い込んでどうしていいのか分からなくなっていたけど、レンジがまずいけないというのが分かって、泡立て過ぎ、混ぜ足りない、焼きの温度が高すぎるなどの失敗原因が見えた。次にどうすればいいのかが分かれば、まだよくなる可能性があるということだ。近いうちにまた焼いてみよう。 理想のスポンジケーキへの道のりは遠い。ときとき、自分は一体どこを目指しているんだと自問自答してしまうことはあるけど、そんな問いかけに答えている暇はないのだ。とにかく納得がいくまで焼き続けてみるしかない。思い描くスポンジケーキが焼けるようになったとき、私は別の人間となっているだろう。スポンジケーキが焼けない男からスポンジケーキが焼ける男に。
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