 PENTAX istDS+smc PENTAX-DA 18-50mm(f3.5-5.6 AL), f5.6 1/60s(絞り優先)
鎌倉のアジサイといえば、長谷の長谷観音と北鎌倉の明月院が2大名所として知れ渡っている。梅雨時の晴れ間のピークの日曜日となれば行列は必至。最大3時間待ちという情報におびえつつ、我々は鎌倉へと向かった。 行くなら朝イチか閉門前という鎌倉アジサイおじさん(私たちが勝手に命名)のブログを信じて、明月院へは夕方の3時半頃に行った。アジサイおじさんは正しかった。門へと向かう参道で向こうから続々と人が戻ってくるのとすれ違う。これはいけるかもしれない。門の前で少し行列が出来ていて、あちゃちゃと思ったら、それもあっさり進んで何事もなく中に入ることができた。ちょっとあっけないほどに。とはいえ、中はさすがに大混雑状態。身動きが取れないほどではないけれど、人口密度は恐ろしく高い。
 おー、これが……。ため息が漏れそうな青いアジサイ。こいつが噂の明月院ブルーというやつか。なるほど、これはなかなか。青いアジサイは最もポピュラーで子供の頃から見慣れているはずなのに、ここのものはどこか違っている。青の微妙なニュアンスが違うのだろう。 明月院のアジサイは、大部分が日本古来の姫アジサイという品種で統一されている。一般的に日本のアジサイはガクアジサイで、鞠のようなものは品種改良された西洋アジサイと思っていたら、日本産の丸いアジサイもあったのだ。知らなかった。花は西洋アジサに比べて少し小さめで、日本らしい風情と品がある。最初は淡い青からだんだん深い青へと変化していくのだそうだ。 明月院ブルーはファーストコンタクトで我々を魅了した。
 アジサイも光の加減でずいぶん違った印象になる。アジサイだけは強い日差しは似合わない。薄曇りか雨模様くらいがちょうどいい。 ここは明月院のアジサイを紹介するときに必ず出てくる三門前の階段のところだ。人の波が絶えることなく続く。ここで人の入ってない写真を撮ろうと思えば、平日の開門の8時半前に並んでダッシュするしかない。私は人がいる写真が好きだからこれでいいけど、狙い通りに人を入れるのは難しい。カップルだけとか和服の人とかを入れて撮ろうとすれば、相当粘らないといけないだろう。
 一番の撮影スポットとなっている三門前は、アジサイを撮る人、お互いに記念写真を撮るカップル、人に頼んでツーショットを撮る人たちなど、明月院でもっとも笑顔があふれる場所だ。うかつにアジサイの写真なんかを撮っていると私みたいな人にアジサイを撮っているところを撮られてしまう。明月院では好むと好まざるとに関わらず自らがどこかで誰かの被写体になることは避けられない。この時期の明月院はお忍び旅行には向かない場所だ。
 この日の明月院で一番いいなと思ったシーン。 この子は直接今日のことを覚えてはいないだろうけど、意識の深いところで記憶に刻まれたに違いない。大人になって、青いアジサイに妙に惹かれてしまったり、明月院に呼び寄せられたりしてしまうんじゃないだろうか。三つ子の魂百まで。覚えていないことでもたくさん経験することは大切なことだ。
 やぐら前のアジサイ。この時期は霊たちも深い眠りから目覚めさせられておちおち眠っていられないだろう。いつからここはこんなにも騒々しい場所になってしまったんだと嘆いているだろうか。それとも、賑やかになって喜んでいるかな。北条時宗や上杉憲方たちは今でもここにいるのだろうか。
 特に深い意味があるわけでもなさそうな木の橋。みんな列をなして歩いている。私も最初に訪れたとき何かいいことがありそうで歩いてみたけど何もなかった。 裏の参道側にもたくさんの青いアジサイが咲いていて、こっちはこっちでよかった。ずっと奥までアジサイが群生している様子は表参道とは違った美しさがある。
 500円払って菖蒲園の方も入ったりして、結局ここで1時間近くを過ごした。アジサイを思う存分見て、撮って、おなかいっぱい。目を閉じるとブルーのアジサイが目に浮かぶくらい見た。 ここはもうさすがと言うしかない。まいりましたと、シャッポを脱ごう(表現が古い)。アジサイというと何十種類、何百種類、色とりどりのアジサイが咲き誇るといった宣伝文句が多い中、ブルーにこだわって統一させたのは正解だった。アジサイは日本全国どこででも見られるけど、明月院ブルーは明月院でしか見ることができない。日本中から大勢の人が混雑すると分かっていてもあえて出向いていく気持ちが理解できた。素晴らしいと言い切ってしまっても差し支えはないだろう。いや、お見事、いいもの見せてもらった。 まだしばらく見頃は続きそうだ。来週末は少し遅いだろうか。ここでアジサイを見れば、たかがアジサイという侮りの気持ちが消える。されどアジサイ、天晴れ明月院ブルー。
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