現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
名古屋城に金シャチがいるように、名古屋港水族館にはシャチのクーがいる
2007年07月05日 (木) | 編集 |
名古屋港水族館-1

PENTAX istDS+smc PENTAX-DA 18-55mm(f3.5-5.6 AL), f6.3 1/125s(絞り優先)



 名古屋港水族館が開館したのは1992年の10月だった。もう15年も経ったのか。けっこう最近のことだと思っていたら、いつの間にか時が流れていた。行こう、行こう、と思いながらようやく行けたのが15年後というのは、なんというかちょっと感慨深いものがある。
 しかしまあ、下手をすれば一生行かずに終わっていたかもしれない名古屋港水族館に、今回初めて行けたことを素直に喜ぶことにしよう。何かを始めるのに遅すぎることはないという言葉もある。一回行けば、二回目、三回目は近くなる。勢い余って年間パスポートを買ってしまってもいい。5,000円だから、3回行けば元が取れる。
 上の写真は、名古屋港水族館とショッピングモールJETTYの共通入口だ。日曜日ということで、家族連れが多い。この日は家族割引の日で、子供は入館料が半額になるということで特に子連れが多かった。きっと大して行きたくないのに親に言い含められて半ば強引に連れてこられたという子供もいたことだろう。右のちびっ子なんか入る前からすでに寝ている。早くもふて寝か? 孫を連れたおじいちゃん、おばあちゃんにとってはここから過酷な一日が始まる。坐るところが少ない分、水族館は動物園よりもしんどいところなのだ。
 マスコットキャラクターのクーちゃんの看板が、そんな私たちを暖かく出迎えてくれる。「よろしクーちゃん」と言いながら手を振るクーの絵を見せられて、入口からいきなりジョー小泉さんのダジャレを聞いたときのような脱力感に襲われる。そういうコット、みたいなやつだ。このあたりのセンスも名古屋らしいなぁと、照れくさくもあり、微笑ましくもある。

名古屋港水族館-2

 名古屋港水族館全体像の遠景。左に見えているドーム状のが元々あった南館で、右にあるのが新たに増設された北館だ。名古屋港水族館のシンボルであるシャチを迎え入れるため、2001年に建て増しされた。それ以前の名古屋港水族館は、とにかく地味で面白くないともっぱらの評判だった。1,500円でも高すぎると言われていたくらいだ。マニアックなセンスで水族館好きの一部には受けていたようだけど、一般受けは悪かった。
 しかし、肝心のシャチを迎え入れるまでには北館オープンから2年の月日を要した。当初、野生のシャチを捕獲して連れてくるという計画が立てられ、試みられたものの度重なる失敗で、とうとう断念せざるを得なくなってしまった。いろんな動物団体からもクレームが入ったりして、結局、和歌山県のくじらの博物館から5年間のレンタル移籍という形で一応の決着がついた。それが2003年10月のことだった。
 それまで北館はどうなっていたかというと、だだっ広いプールにイルカだけが自由自在に泳ぎ回っていた。イルカには快適だったかもしれないけど、割を食ったのが人間の方だ。シャチもいないのに入館料が1,500円から2,000円に引き上げられて否が応でも払うしかなかったのだから。北館は入らないから南館だけの1,500円にしてくれといっても通用しなかった。昨日紹介した大プールと大型ハイビジョンを見れば、こりゃあ値段も上がるなと納得せざるを得ないけど。

名古屋港水族館-3

 入口は北館の方になる。チケット売り場は見ての通りの大混雑。暑い中並ぶのは大変だ。賢い方法としては、行く前にコンビニで前売り券を買っていくことだ。値段はまったく一緒だけど、並ばなくても済むだけありがたい。家族連れのお父さんやデートの彼氏はそういうスマートさを発揮したいところだ。私は発揮できなかった。
 それにしても、思った以上に名古屋港水族館は大盛況だった。あんなに人気スポットだとは思わなかった。昔のあまり芳しくない評判を聞いたことでよくないイメージを持っていた。北館の増設は成功だったようだ。評価をあらためないといけない。実際、自分も行ってみて、予想外のところで味のある水族館だということが分かった。派手さはないけど、噛むほどに味が出る魅力がある。
 現在、500種類、約3万2,000匹(頭)ほどの生物がいるそうだ。一回や二回では全部は見て回れない。

名古屋港水族館-4

 北館は、イルカとシャチの大プールの他、いろいろな魚の骨格標本やパネルなどの学習コーナーやシアターなどがある。テーマは、「35億年 はるかなる旅 〜ふたたび海へもどった動物たち〜」なんだとか。
 一つ気になったのが写真撮影サービスコーナーだ。「クーちゃんスタジオ」と名づけられた一角に、クーの置物があって、スタッフが写真を撮りますと書かれていた。見ていると、カップルや家族連れが自分たちのカメラをスタッフに渡して写真を撮ってもらっていた。無料っぽいけどプロカメラを首からぶら下げていたスタッフの姿が気になって頼むことができなかった。よく観光地であるような頼んでもいないのに勝手に写真を撮られて売りつけられるシステムだったらイヤだと思って。でも、帰ってきて調べたところ、自分のカメラを渡してシャッターを押してもらうのは無料で、プロカメラマンに撮ってもらうと一枚1,000円だということが判明した。それならそうと、分かるようにはっきり書いておいて欲しかった。しかし、一枚1,000円はけっこういい値段だな。

名古屋港水族館-5

 クーもやって来てそろそろ4年になる。来年2008年には契約切れで帰っていくことになるのだろうか。シンボルを失った名古屋港水族館はどうなってしまうんだろう。もはや不動のマスコットキャラであり、グッズもクーちゃんだらけだというのに。違うシャチを連れてきて、二代目クーちゃんと名づけるつもりか!?
 シャチというのはなかなか貴重な生き物で、国内では4ヶ所で10頭ほどしかいない。名目上は飼育ではなく、研究個体ということになっているようだ。なので本当はショーなどしてる場合ではないのだ。
 クーは推定年齢16歳のメスで、体長は約6メートル、体重は3トン近くもある。そばで見ると巨体に圧倒される。
 でっかいから一日の食事も大量だ。サケやサバ、ホッケなど一日で80キロも食べるんだとか。メシ代は2万から3万円、月に80万円は食ってしまう。安月給ではシャチは養えない。
 大事な子ということで、3人のトレーナーが付いて、しっかり管理されている。虎の子と言ってもいい。
 2004年には人工授精が試みられたようだけど、成功したという話は聞かない。もし、赤ちゃん誕生となれば、大変なニュースになって大量の人が押し寄せることになるだろう。想像すると怖い。
 でもホントにクーちゃんは今後どうなってしまうのだろう。ちょっと心配だ。帰してあげたい気もするし、残って欲しいとも思う。尾張名古屋は城で持つ。名古屋城が金シャチで持っているように、名古屋港水族館はクーで持っている。クーのいなくなった名古屋港水族館は、万博で金シャチがいなくなった名古屋城のように間の抜けたようになってしまうのだろうな。

名古屋港水族館-6

 北館から南館へは長い通路を歩いていかなければいけないので、何度も行き来するのは厳しい。あとになって北館を増設したから、続いてはいるけど、まったくの別棟と考えた方がいい。動く歩道が欲しかったところだ。
 南館のテーマは、南極への旅だ。なんで南極なんだろうと思ったら、名古屋港に永久停泊している南極観測船ふじと深い関わりがあった。ふじが辿ったコースにならって、「日本の海」、「深海ギャラリー」、「赤道の海」、「オーストラリアの水辺」、「南極の海」というふうに、5つのブロックに分けられている。これも帰ってきてから知ったことだ。言われなければ気づかない。なんだかとりとめのない展示水槽だなと思ったくらいで。でも、別にふじに合わせる必要もなかったんじゃないのか? 結果的にそれが地味な展開となってしまっている。水族館へ行って、普段食べている魚を見たいとはあまり思わない。逆に言えば、これだけ日本にいるおなじみの魚が充実している水族館も珍しい。

 南館の目玉は、やはりペンギン水槽ということになるだろう。エンペラー、ジェンツー、アデリー、ヒゲという、マニアックな取り合わせのペンギンが大量にいる。うわっ、すごいいる! という驚愕の声があちこちから聞こえてくる。世界一ペンギン密度の濃いペンギン水槽かもしれない。幅20メートルほどの水槽に、ざっと数えても60羽以上いたんじゃないだろうか。陸地が狭いから、すごく混み合っている。手前のプールも幅があまりないから、たくさんのペンギンが水に入ると夏休みの市民プールのようになる。最初からこんなにたくさんいたのか、だんだん増えてしまったのか。動物園や水族館はどこへ行ってもペンギンは多いから、生まれても引き取り手がなくてこんなにも多くなってしまったのかもしれない。
 見物はなんといってもエンペラーペンギンだ。こいつが見られるところは全国でも少ない。でっぷり太った貫禄のボディーに他のペンギンがみんな小さくスリムに見える。同じペンギンとは思えないほどだ。西郷どんの銅像のようにじっとして動かない。犬でも連れてそうな風格がある。
 アデリーとヒゲがいるのも、ここと南紀白浜アドベンチャーワールドだけだそうだ。
 水槽も凝っていて、南極の環境を再現していて雪まで降るようになっている。日照時間も南極に合わせていて、日本とは季節が逆になるから、夏は暗く、冬は明るくなるんだとか。昼間なのにやけに薄暗いなと思ったら、南極の冬を演出していたのか。

名古屋港水族館-7

 これはたぶん、ヒゲペンギンだと思うんだけど、黒いヒゲ模様がないからもしかして違う?
 水中のペンギンは地上のヒョコヒョコ歩きとはうって変わって、ものすごい速さで泳ぐ。まさに水中を飛んでいるようだ。泳いでいるところを撮るのはとっても難しい。館内は暗いし、ペンギンは猛スピードだし、オートフォーカスなんて追いつけない。マニュアルでも連写さえままならない。上の写真も相当粘って頑張ったんだけど、これで精一杯だった。水中で泳いでいるペンギンを流し撮りできたら水族館撮影は極めたと言ってもいいかもしれない。

名古屋港水族館-8

 現在、ベルーガ2頭が妊娠中で、水槽の手前についたてが立てられて、遠くからのぞき見ることしかできないようになっている。普段なら近くから見ることもできるし、芸さえもするのに。
 この2頭は、No.5とNo.6と呼ばれている。名前がないのは、これはペットではないからというのが水族館の理屈だ。でもそれは、家畜農家が家畜に名前をつけないような悲しさがある。公開しない研究個体ならそれでもいいけど、一般公開してるものだから名前はつけてもいいんじゃないか。名前ってけっこう大事だ。人は名前がついてないものに対しては不安になるものだし。
 おなかの子供は順調に育っているようだ。係員の人も交代で見守っている。無事に赤ちゃんが生まれたら、また大きな話題になるだろう。子供もきっとかわいいんだろうな。
 ベルーガというのは、ロシア語で白いクジラを意味している。日本ではシロイルカと呼ばれることもある。北極海にいるクジラの仲間で、いろんな鳴き声をすることから、海のカナリアとも呼ばれている。

名古屋港水族館-9

 北館の外には、しおかぜ広場という芝生広場がある。海の見えるベンチで休んだり、お昼を食べたりするのにいいところだ。
 この近くには、カメ類繁殖研究施設というのがあって、カメを育てている研究施設をガラス越しに見学することができる。工場の社会見学みたいな感じで。水族館に併設されたウミガメ研究施設は日本でここだけなんだとか。名古屋港水族館も、当初からウミガメの研究と繁殖には力を入れていた。
 運がいいと、生まれたばかりの赤ちゃんカメがはっているところを見たりできるらしい。

 名古屋港水族館は、行く前より、中に入っているときより、帰ってきてからの方がじわじわとよくなっていく水族館かもしれない。予習不足で予備知識が足りなかったから、感じるべきところを感じきれなかったという悔いが残る。南極への旅というテーマを知っていれば、南館の見方や感じ方も違っていたようにも思う。いろいろ調べて勉強したら、もう一回行きたくなってきた。ペンギン水槽ももう少し人が少ないときに行ってじっくり見てみたいし、写真ももう少し頑張りたい。
 名古屋港水族館って面白い? と人に訊かれたら、うん、面白いよと今なら答えることができる。人によっては面白みが足りないと感じるだろうけど、表面よりもう一層下に面白みが隠れている。子供は子供の楽しみ方ができて、大人だけが分かる面白みもある。
 一日かけるつもりでじっくり見て回るのをオススメします。ぜひ一度行ってみてください。名古屋港水族館を、よろしクーね!(ゆーとぴあのポーズつきで)




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