 PENTAX K100D+smc PENTAX-DA 18-55mm(f3.5-5.6 AL), f4 1/8s(絞り優先)
8月4日に行われた戸田橋・いたばし花火大会へ行ってきた。直前まで行こうかやめようかツレと迷って、せっかくだから近くまで行ってみようかという安易な考えの私たちを待ち受けていたのは、45万人の大群衆だった。板橋側は65万人で、あわせて110万人。東京都民の人口が1,200万人だから、東京都に住んでいる約10人に1人がこの地に集まったことになる。そりゃ激混みになるってもんだ。 戸田橋花火大会と、いたばし花火大会は、どちらも同じ花火大会のことを指している。荒川を挟んで共同で行われる花火大会をどちら側で見るかによって名前が変わるだけだ。それぞれが同時に花火を打ち上げて、合計11,000発が夏の夜空を彩り、110万人の観客を酔わせる。 この花火大会が始まったのは昭和26年のことだった。荒川の対岸、埼玉県戸田町と東京板橋区で、お互いにこれからも仲良くやっていこうということで始まったそうだ。今年で55回目になる。 「伝統の隅田川花火大会、実力の戸田橋・いたばし花火大会」だそうだ。本当かどうかは私には判断ができなかった。花火の細かい技術の知識などまるでないから。 それにしても恐ろしいほどの人波だ。行きの電車も朝のラッシュアワーを超えるほどの混雑ぶりで、子供があちこちで本気泣きし出して車内はえらいことになっていた。駅を降りてからも、会場までの道のりは人渋滞でノロノロとなり、なかなか前へ進めない。会場となる荒川の土手までの道を人が埋め尽くすその光景は、まるで国境を目指す難民のようだった。 選択肢としては、板橋側で見るか、戸田側で見るかというのがある。私たちは戸田の方が空いてるんじゃないかという判断でそちらへ行ったのだけど、実際のところどうだったのだろう。板橋側の方が見物客は多いものの、交通手段と現地近くの状況を見ていないのでなんとも言えない。どっちもどっちだろうか。有料席があるとはいっても、行き帰りの混雑を逃れることはできないから、大変さという点ではそれほど変わらないと思う。会場自体は広いので、途中から行っても座れないというようなことはない。もちろん、早くからいい場所を取っている人も大勢いる。
 会場はこんな感じになっている。明るい光はすべて屋台で、土手沿いと駅までの通りはびっちりだから、数百は並んでいた。あんなに多くの屋台を見たのは生まれて初めてだ。21世紀の日本にまだあれほどの屋台が存在したとは驚きだった。板橋の方もだから、あれの倍は出てたわけだし、この日は他でも花火大会が行われていた。 雑草の生えた土手は据わりが悪い。ビニールシートを敷いても滑り落ちてしまいそうになる。それでもなんとか斜め座りをしてポジションをキープするしかない。三角形の椅子か何かあればよかったのだろうけど。
 午後7時、定刻通りに花火大会は始まった。この日は適度な風が吹いていて、打ち上げ花火日和だった。風が強すぎると花火が流されてしまうし、風がないと煙がこもってしまって花火がきれいに見えない。少し風があるくらいがちょうどいい。 私たちが陣取ったのは、危険区域としてロープが張られたすぐ外ということで、正面ほぼ真上あたりに花火が上がった。これくらい至近距離だと音がすごい。ヒュ〜〜〜〜という花火が上がる音は、B29から降り注ぐ焼夷弾の落下音のようで、ドーンという爆発音は心臓に直接響いて、遠い昔の恐怖心を呼び起こす(戦前生まれじゃないでもないのに)。 この位置だと花火をずっと見上げることになって、だんだん首が痛くなってくる。バードウォッチャーならともかく、一般人にこの位置はやや厳しかったか。たまに下を向いて休まないといけない。でも、戸田と板橋で同時に打ち上げるものだから、なかなか休ませてくれない。一回小休止を挟んで、1時間45分、ほぼ花火が打ち上がりっぱなしだった。
 写真のことを言えば、近いところのよさと難しさがあった。大きく撮れるのはいいところだし、低い花火も見られる反面、風景としての打ち上げ花火を撮ることができなかった。花火そのものではなく花火大会風景を撮りたければ、あまり近い場所は向かない。人が多くて気ままに移動しながら撮るというわけにもいかないから、場所を決めたらそこで撮れるものを撮るしかない。 個人的には見ている人の頭のシルエットもいい感じに入れて、花火見物風景として撮りたかったのだけど、なかなかこちらの注文通りのポジションにおあつらえ向きの頭が入るなどということはなかった。カップルの頭二つとその上に広がる花火なんてのが撮れたらよかったのだけど。
 打ち上げ花火の本格的な花火撮りは初めてで、最初はコツが分からず戸惑った。使ったデジも買ってまだそれほど撮ってないK100Dだったということもあって。 ただ、しばらく撮っているうちにだんだん分かってきた。今回は18-55mmの標準ズームを使ったのだけど、明るい単焦点はあまり必要ないかもしれない。写りがよくても、単焦点は自由度が低くて扱いづらい。広角ズームがやっぱり便利だ。 手ぶれ補正付きカメラの手持ちで撮るなら、フォーカスはマニュアルの無限にして、シャッタースピード優先1秒というのに落ち着いた。これ以上長いシャッターは手ぶれ補正をもってしても止まらないし、これより短いと花火がきれいに広がらない。最初から無理と分かっている手持ち撮影の妥協点ではあるけど、これならなんとかまともな花火が撮れないことはない。無駄打ち覚悟で連写は当然だ。 でもやっぱりちゃんと撮りたければ三脚は必須だ。できればレリーズケーブルかリモコンもあった方がいい。
 1万発もあれば中には失敗もあったのかもしれないけど、それを思わせない滞りのなさだった。実力の戸田橋・いたばしは本当かもしれない。 変わり種やキャラクターものなどに頼らず、ごく真面目な花火ばかりだった。子供におもねってピカチュウの顔を描くなんてことは一切ない。昔気質の花火職人が作る花火という感じだった。 この大会の場合は、板橋、戸田とそれぞれが打ち上げてるから、互いにライバル意識があって、それがいい方向に向かっているのだろう。プログラムを見ると、けっこう花火の種類が違っている。かぶらないように相談して取り決めているようだ。
 尺玉と呼ばれる10号サイズの花火が何発も上がる。滞空時間の長い花火は高さは320メートルまで上がり、東京タワーの特別展望台(250メートル)からも見上げる高さになる。 見応えのあるのは、やはりスターマインだろう。速射連発花火というように、いくつもの花火を組み合わせて連続して打ち上げるので、見ていて一番盛り上がる。クライマックスや休憩前などの要所で打ち上げられていた。 戸田橋は仕掛けが大がかりになるごとにスターマイン、スーパースターマイン、ウルトラスターマインとグレードアップしていく。スターマインにもそれぞれ、夜空のパノラマとか、トロピカル牡丹とか、白銀の妖精などの名前がついている。単色の組み合わせや、多色花火、音や形もいろいろあって、そのあたりが花火職人の腕の見せ所なのだろう。手軽に実験を重ねて完成に近づけていくなどということができないものだから、やはりこれも門外不出といった伝統の知識と技術がベースになっているに違いない。
 ツレは途中で動画がいけることに気づいて撮っていた。コンパクトデジの場合、手ぶれだけでなくシャッターを押してから実際に撮れるまでのタイムラグが大きいから、一眼よりも数倍難しくなってしまう。花火が上がってからシャッターを押していては、撮れた画像に花火が撮れてないなんてことになってしまう。野生の勘で花火が上がる前にシャッターを切るなんてのはプロでも大変だ。 その代わり、コンパクトデジには動画機能がついてるものが多い。打ち上げ花火の臨場感は、写真よりも動画の方が圧倒的に有利だ。スターマインだって撮り放題になる。
 クライマックスは、板橋側の大ナイアガラの滝だ。低い位置なので板橋からだと有料席でしか見られない。だったから対岸の戸田から見えるんじゃないかと期待したけど、いかんせん距離がありすぎた。こちらから見ると、対岸が火事で燃えているようにしか見えない。まさに対岸の火事状態。考えが甘かった。途中からは黒煙が上がってきて、何も見えなくなった。やっぱり板橋の有料席でしか大ナイアガラの滝は楽しめないようだ。 最後は板橋、戸田両側で1,000発以上のスターマインが乱れ撃ちで、歓声と拍手に包まれつつ花火大会は無事終了となった。いや、お見事。堪能させてもらった。 しかし、帰りがまた大変だった。駅まで15分の道のりに1時間かかり、駅に入る列に並んで1時間以上動けなかった。いつになったら電車に乗れるやらと気が遠くなりそうだった。あれは厳しかった。8時45分に終わって、池袋に着いたときは11時を回っていた。普段なら30分ちょっとだろうに。 行き帰りの大変さと花火の感動と、天秤にかけると釣り合ってしまう。来年ももう一度行きたいとは今のところ思えない。あの人混みはもう体験したくないものだ。でも、来年の夏になる頃にはいい思い出だけが残って、性懲りもなくのこのこ出向いていきたくなるのかもしれない。それが楽しみなような、そうでもないような。 でも、行ってよかったことは間違いない。とても印象深いものとなったし、収穫も多かった。花火撮りも楽しかったし、間近で見る興奮もあった。やっぱり来年もまた行きたいなとだんだん思ってきた。痛い目にあっても、人間って割と学習能力がないものだ。
|