 PENTAX K100D+TAMRON SP 17-35mm(f2.8-4)
今日は巾着田で撮った彼岸花の写真をお送りしたい。人混みの中で傘を差しながらの撮影は厳しいものがあったけど、ツレに助手役をやってもらいながらなんとか撮ってきた。ひとりではできないことはたくさんあって、それはじゃんけんとかキャッチボールとかだけではない。写真も一人では撮れない写真というものが確かにある。
巾着田の彼岸花は全国的に有名らしいということを知ったのは、出向く一週間くらい前のことだった。それまではそんな情報はかけらも知らなかった。私が世間に疎いだけなのか、言うほど有名ではないのか、どちらだろう。関東地方の人には馴染み深いものなのか。 東海地方では、半田の矢勝川がよく知られている。新美南吉の故郷であり、童話「ごん狐」の舞台ともなった場所だ。彼岸の頃になると土手が一面真っ赤に染まり、大勢の人が見物に訪れる。 しかしなんといっても巾着田は埼玉県で東京から1時間半の関東エリアだ。全国から人が集まってきても不思議ではない。実際、観光バスも続々と乗り込んできていた。あれも遠くからのツアーだったのだろう。あの現地の様子を見せられたら、日本一というのもそうなんだろうなと納得するしかない。
巾着田が彼岸花の名所となったのはわりと最近のことだ。遊んでいて草ぼうぼうになっていた高麗川沿いの土地を日高市が買い取って、さて何に使おうかという話になったのが昭和40年代後半のことだ。これといったアイディアも浮かばないまま時が流れ、平成元年(1989年)にとりあえず何にするにしてもまずは整備しなくちゃいけないと草刈りをしたところ、思いがけず彼岸花の群生地が顔を出した。これがのちに日高市にとって大きなドル箱になるとは、このときはまだ誰も思わなかったことだろう。中にはもしかしてこれはいけるかもと思った人も少しはいただろうか。 それからほどなくしてここの彼岸花が近隣住民の話題にのぼるようになり、マスコミにも取り上げられて少しずつ遠くからの見物人が増えていく。まだこの頃は観光地ではなく、ちょっとした地方の名所程度の存在だった。 現在のように全国区の観光名所となったのは、ここ10年くらいのことだ。地元の人たちが根を掘り起こして整理して埋め直すという作業を繰り返すことによって、その本数は100万本を超えるまでになった。今では押しも押されもしない激混みスポットだ。いや、押され押しまくる激混みスポットと言った方がいいかもしれない。狭い通路を歩くのもままらない。 巾着田の名前の由来は、高麗川の蛇行で作られた土地の形が巾着(きんちゃく)に似ているところから来ているそうだ。ただしその形を目で見て確認するためには、日和田山(ひわださん)の山頂近くの二の鳥居まで30分の道のりを歩かなければならない。ナスカの地上絵みたいだ。
 このあたり一帯を地元では「巾着田曼珠沙華公園」と称しているようだ。あわせて3万4,000平方メートルの土地に130万本の彼岸花が群生している。早咲き、遅咲きのようにエリア分けされているので、見渡す限り一面の彼岸花を想像していくとやや拍子抜けするかもしれない。ただ、数は圧倒的だ。この規模はすごい。半田などでは勝負にならなかった。 主に高麗川沿いと、雑木林の中に固まって咲いている。特に雑木林の中に咲く風情が独特で素晴らしい。 高麗川も、晴れた日にはもっとよかっただろう。清流と呼んでいいほどきれいな水で、カワセミなどもいるそうだ。この日はアオサギとダイサギとカルガモを見かけた。 見頃は例年彼岸の日あたりということで、今年は秋になっても暑い日が続いているので少し遅れた。ちょうど今日あたりが早咲きのピークだったらしい。私たちが行った23日は少し早かった。遅咲きの方もようやく咲き始めといったところで。10月の始めまでは充分楽しめそうだ。
 一番多くの人が狙っていたこの日のベストポジションがここだ。なるほど、木の造形と彼岸花の取り合わせがいい。見ようによっては人影が彼岸花畑の間を駆けているようにも見える。まだ隙間が多いけど、雨に濡れた黒い木肌と彼岸花の赤と緑の組み合わせに風情があった。 今日のニュース写真では、ここも一面真っ赤に染まっていた。見渡す限り赤の世界というのは、不気味なようでいて不思議に心惹かれる美しさだ。彼岸花というのはなんとなく薄暗くて不健康なイメージがあったけど、ここの群生を見て考えが変わった。ここまで揃うと、それはもう見事としか言えない。天晴れ、文句なしにきれいだった。
 同じ場所から少し角度を変えて。緑を多く入れて、赤い川のようになった。 左側に土手があって、駐車場とコスモス畑が広がっている。これより奥は遅咲きエリアなので、まだあまり咲いてなかった。奥まで行くと人もやや少なくなって、一息つける。人気ポイントはすれ違うのもやっとだから。 ここはもう少し整備して、順路を作った方がいいと思う。三叉路などでは三方から人が流れ込んできてひどい渋滞になる。通路を一方通行にすれば、もっと人の流れもスムースになるし、写真撮り待ちでつっかえることも少なくなるはずだ。入り口から出口までというふうにせず周回路を作るくらいの通路はあった。あと、せっかくだから上から見下ろすための物見台も欲しい。小さい見晴台は混雑を避けるためか、封鎖されていた。
 あ、シロバナだ、と言いながらみんなが撮っていくポイント。私もやっぱり撮ってしまった。ここはシロバナが少なくて貴重だったから。 シロバナをコントールして増やせるものなら、あるエリアだけは紅白にするというのもよさそうだ。白だけ固めるよりも赤白の方が映える。
 少しレンズテスト。中間距離で一枚。 マクロレンズのようにピントの合ったところはシャープでそれ以外はきれいに溶けるなんて描写はできないけど、解像感は申し分ない。さすがに標準レンズよりは一段、二段上の写りだ。 けっこう寄れるから、広角のまま目一杯近づいて、近くのものと遠くのものを一緒に入れ込むなんてのもできる。
 更に寄ってみる。倍率は5.4倍と低いけど、全域で30センチまで寄れれば、ちょっとしたマクロ撮りもできる。 もっとマクロに特化した広角レンズということになれば、SIGMAの17-70mmという選択になるだろう。あれはレンズ前2センチまで寄れて、倍率も2.3倍と高い。17-70mmといえどもオールラウンダーではないけど、標準ズームとしては使い勝手が一番よさそうだ。メーカー純正より安いのもいい。
 奥の遅咲きのところ。ここがなんだか妙に面白くて気に入った。彼岸花らしくなくて。花菖蒲の赤版みたいだ。 今日あたりはこのへんももっと咲いていることだろう。彼岸花も咲き始めれば、あとは終わりに向かって駆け足となる。
 最後にコスモス畑の方も少しだけ寄っていった。 ずっと彼岸花のきつい赤と緑ばかり見ていた目に、コスモスのピンク色は目に優しい。彼岸花は油絵で、コスモスは水彩画の風情だ。 晴れていたらこちらもゆっくり歩いてみたかったけど、ここは休耕田で歩く道はあぜ道。それ以上どろんこ道を歩く気にはなれず、入り口で写真だけ撮って帰ることにした。 おそらく最初で最後になるであろう巾着田の彼岸花は、雨の記憶と共に私の中に深く刻まれることになりそうだ。
巾着田の彼岸花は、いろいろと厳しい部分もあるけど、最終的にはオススメできるという結論となる。遠いし、人は多いし、観光地としての整備も不十分で快適な散策にはならないだろうけど、それでもここの彼岸花には特別な魅力がある。彼岸花群生地の常識を覆すところが。河原や田んぼに咲く彼岸花とはずいぶん趣が違っていて、それまで自分の中にあった彼岸花のイメージを大きく変える力を持っている。意外といいじゃん、彼岸花、とここを訪れた多くの人が思ったんじゃないだろうか。それまでキワモノだと思ってあまり食べなかったウニやイクラを北海道で食べたらすごく美味しくて見直した、みたいな感じだろうか。私も、巾着田の彼岸花を見てなければ、彼岸花は暗い花という思い込みのままずっと過ごすことになっただろう。これからの私は、彼岸花が好きかと訊かれたら、迷わず嫌いじゃないと答えることができる。巾着田の彼岸花がとってもよかったから、と。 行けるチャンスがある方はぜひ一度行ってみてください。人混みが苦手なのは克服できます。重症だった私ができたのだから間違いない。私の場合は、愛・地球博の度を超えた人混みで感覚が麻痺した。だから、あえて激混みに飛び込んでみるのが一番の特効薬なのだと思う。人混みに対する恐れがなくなれば、もうどこにだって行ける。有名観光地も、シーズン限定イベントも恐るるに足りない。 さあ、次は紅葉だ。腰が引けたら負ける。私は負けない。今年こそ、香嵐渓だって行ってみせる。日光の紅葉もよさそうだ。私は涙目になんてなってないぞ。行けるといったら行けるのだ。 でも、人が少なくていい穴場があったら教えてくださいね。行けるのと行きたいのとでは、やっぱり違うのですよ。
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