 PENTAX K100D+SIGMA 17-35mm f2.8-4
観覧車が張り付いてるビル「サンシャイン栄」の中にラーメンのテーマパーク「名古屋麺屋横丁」がある。クリスマスイブの日に観覧車に乗りに行ったとき見つけた。 イブの夜にラーメンはないだろうと思いつつも、名古屋港花火までの時間があまりなかったのと、ラーメンのテーマパークというものにちょっと興味があったので入ってみることにした。 入り口から入ってほどなく、作り物めいた昭和の町並が現れた。なんだこれはと最初は戸惑ったものの、なるほどそういう作りになっているのかと納得した。お台場にあった台場一丁目商店街の小規模版みたいなものだ。 帰ってきてから知ったところによると、オープンしたのは2005年の2月で、手がけたのは「池袋餃子スタジアム」や「自由が丘スイーツフォレスト」などのフードテーマパークを企画している、ナムコのチームナンジャだそうだ。ラーメンのテーマパークとしては名古屋初で、フロア全体は昭和30年代をモチーフにした町を再現したとのことだ。 確かにこれは、私が知ってる昭和よりも古いものだ。だから、懐かしいというよりもセットとしての面白さだ。 ラーメン店は全部で7軒と、やや少なめか。でも、全部食べて回ろうとすれば大変だし、気に入ったところが見つかればそこの常連になればいいから、まあこんなものだろう。あまり多くてもどこに入っていいのか分からなくなる。全国の有名店が出店するという形で、これまで入れ替わりでのべ26軒が店を出したそうだ。 町並も気になるところではあるけど、まずはラーメンを食べよう。7軒の中でどこに入るか迷う。どこが美味しいのかそうじゃないのか、人気があるのかないのかを知る手がかりがまったくないから、思いつきで飛び込むしかない。
 入り口から入ってすぐはこんな感じになっている。簡単な店の紹介もあるけど、ここでもう少し詳しい説明が欲しいところだ。唐突に昭和の町並だから、入ってすぐ逃げ出してしまう人もいそうだ。 でもやっぱりシャチなんだ。名古屋ならなんでもかんでもシャチにしておけばいいというのは安易すぎるぞ、ナムコ。名古屋人はそんなにシャチ好きってわけじゃないし。
 ちょっと迷って札幌ラーメンの「さっぽろ大心」にした。気分的に博多のとんこつではなく、サッポロラーメンのあっさり系が食べたかったから。 他の店としては、地元ココイチがやってる「麺屋ここいち」、旭川の「旭川らぅめん青葉」、博多「ちょうてん」、福岡久留米「満洲屋が一番」、下北沢の「玄武」、広島の「廣島つけ麺本舗 ばくだん屋」が入っている。 私は外でラーメンを食べることはめったにないので、有名店なのかどうかまったく分からない。たぶんどこも有名なところなんだと思う。私が知ってるラーメン屋といえば、スガキヤくらいのものだ。
 イブの夕方ということで店内がどんな感じになっているのかやや不安だった。店の人とマンツーマンになってしまうのはつらい。けど、先客としてツーカップルいて安心した。 ただ、こんな時期なのにというか、こんな時期だからなのか、このラーメン横丁自体にひとけが少なく、活気が乏しいのが気になった。お客もポツリ、ポツリといったところで流行っているとは言い難い。お昼時や普段の週末はもっと混雑してるのか。 オープン当初はどの店も行列ができていたそうだけど、3年近くも経てば飽きっぽい名古屋人のことだ、こうなるのも必然だったと言えるかもしれない。ナムコはちゃんと名古屋人気質をリサーチしてから作ったのだろうか。 テーブルがボロボロのガタガタたったのは演出だったのか、単に古びてしまっただけか。 ラーメン店というのは、あまりにも閑散としてるとわびしいし、逆に混雑しすぎて並ばなくてはいけないくらいになると嫌になる。ほどよい混み具合に調整するなんてことはなかなかできないのが難しいところだ。
 私はチャーシュー入り塩ラーメンを、ツレは味噌ラーメンを注文した。 味はまあ美味しかったと言えるだろう。ただ、私の場合比較対象がスガキヤしかないわけで、本当に美味しいラーメンというのも知らないので比べようがないというのはある。このラーメンも本店の味と比べたらどうなのかも分からないし、ここに入ってる他の店の中でどれくらいのポジションなのかも見当がつかない。 値段は800円くらいだったか。お安くはない。スガキヤなら300円で食べられて、デザートのソフトを食べてもお釣りが来る。どっちかを選ぶとしたら、私はちゅうちょなくスガキヤを選ぶ。スガキヤは名古屋人のソウルフードだしね。
 おなかがいっぱいになったところで町並の散策を再開した。 当然作り物だから本物っぽくないところは多々あるのだけど、小物類などは昔のものが使われていたりするから、そのあたりは見ていてなかなか楽しい。 昭和の町並を再現すると、たいていが30年代になるのは、この時代が一番昭和らしいときだったからだろうか。終戦から10年以上経って、日本が復興して新しい町並が作られていくとき特有の猥雑なパワーが溢れていた時代だ。私たちが知っている昭和40年代後半になると、やや近代化も進み始めて昭和のカラーも様変わりしていく。私が知っている昭和は、落ち着きを取り戻してからの昭和でしかない。
 再現された店舗のたたずまいも、私たちが知らない時代のものだ。 置かれている市電は本物で、この市電の中もラーメン店になっている。ここは展示だけにして自由に中に入れるようにしてほしかった。 名古屋市の市電の記憶はまったくなくて、幼少の頃親と一緒に乗ったことがあるのかどうかも定かではない。親が覚えてないというくらいだから私が覚えてないのも仕方がないことだ。
 オート三輪は確か見たことがあるはずだ。展示されてるのはトラックタイプで、私が知ってるのはもっと小型の白っぽい車体のものだ。ダイハツ・ミゼットとかだったか。 今これに乗っていたら格好いいけど、何しろ走らないから迷惑な話ではある。時速60キロとかは出るのだろうか。 はっきり覚えている古い車といえば、スバル360だ。あれも見なくなってから久しい。 昭和の車は、スポーツカーにしてもファミリーカーにしてもセダンにしても、それぞれしっかりした個性があった。今はみんな同じようになってしまって面白くない。普通の大学生までが高級車に乗れるというのは逆に夢がない。おんぼろのカローラしか乗れないサラリーマンのお父さんが、いつかクラウンを買うんだと思っていたときの方が夢があった。
 テーラーにバーバーにパーラーに、昭和はカタカナ文化が花開いた時代でもあった。外国に対する憧れが今より強かったというのもあった。今はハイカラなんて言葉も使われなくなった。きみ、ハイカラだなぁ、なんて言ったら今の方が新鮮に聞こえる。 ここができて間もない頃は、交番に昔の婦人警官の格好をした女の人がいたりしたらしいけど、今ではそんな演出はなくなってしまったようだ。活気がないと感じたのは、店以外に人がいなかったからというのもある。ラーメン屋だけでなく、他の店もあればもっと賑やかになっただろうに。ラーメン屋の店員も普通の格好をしていて、そこまで演出は徹底されていない。
 ラーメン神様が祀ってある祠があって、これは面白いと思った。これだけ日本人はラーメンを食べてるのだ、ラーメンを供養して、ラーメン神様をたたえて祀ってもバチは当たらない。 鳥居の奥はぱちんこ大明神だった。名古屋といえばパチンコ発祥の地だから、ということか。
 古い映画のポスターや写真が飾られていて、それが小林旭と浅丘ルリ子のものだったので、おっと思って足が止まった。白黒写真を見ると、東山動物園でロケをしているときの様子が写っていた。古い日活映画はたくさん観ているけど、この『嵐が俺を呼んでいる』は観てない。機会があれば観てみたいものだ。 映画館の名前はコーチン座。そうきたか。
 指で弾くパチンコ台は懐かしい。子供の頃父親に連れて行ってもらったことがある。ダイヤルの自動式と違って少ない玉でも長く遊べるのがよかった。 でも自分でパチンコをやろうとは思わなかった。大学の頃、同級生はよくやってたけど、トータルではどう考えても損してたし、自分も勝てそうな気がしなかったから。 高校のとき、校外実力テストの帰りに、クラスメイト何人かでパチンコ屋に入ったことがあった。たまにはやってみるかと玉を買って台に座って、何気なく隣を見たら担任の先生だったときはのけぞりそうになった。顔をそむけてすごくそおっと席を立って、パチンコ玉をポケットに入れて店から逃げたのも、今となっては懐かしい思い出だ。
店によってラーメンの味のバラつきがどれくらいあるのか私にはなんとも言えないし、美味しいという保障はできないのだけど、一度くらい話のタネに行ってみるのはいい。行くならなるべく急いで行かなくてはいけない。 というのも、この2月3日で、名古屋麺屋横丁は閉鎖になるという発表があったからだ。なんてこった。知らなかった。この手のフードパークは全国的にも人気があって、こんな短期間で営業終了になってしまうのは異例のことだそうだ。なんとなく元気がないと感じた私の感覚は正しかったらしい。売り上げが伸びなくなっていたのだろう。それで全国のラーメン店が出店したがらなくなったというのもありそうだ。 どうやら私はこの前が最初で最後になりそうだ。他の店のラーメンも気になるところではあるけれど、一度でも行っておいてよかったということにしよう。ラーメン自体が食べられなくなってしまうわけではないし、名古屋にはスガキヤがある。スガキヤと共に世界の果てまで。 一回、本当に美味しいラーメンというのも食べてみたいと思う。これを食べてしまったら、もうスガキヤなんて食べられないってくらいのラーメンはどこへ行けば食べられるんだろう。いや、スガキヤってC級グルメで、そんなに美味しいわけじゃないんだけど。
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