 Canon EOS 20D+EF-S 17-85mm f4-5.6 IS
2月の海上の森後編は、冬枯れの大正池風景から。 夏場は水を満たす大正池も、冬場は水が抜かれてこんな風景が広がる。ここはもともと川の流れる森だったところで、水をせき止めてダムにしたため、木々が水没して立ち枯れてしまった。水があるときは水面から立ち枯れた木がニョキッと顔を出す風景が絵になるけど、こうなってしまうと寒々しい。まるで死の世界のようだ。放射能に汚染されて木が枯れてしまったようにも見える。 これも冬場に行かないと見られない光景だから、貴重といえば貴重だ。ただ、ここは夕焼けスポットでもあるので、水がないときは夕映えが見られないのが残念ではある。
 水が抜かれているとはいっても完全に流れが涸れているわけではなくて、ちょろちょろと小さくは流れている。こんな流れでもせき止めれば大きな池になる。 これだけ水量の増減が激しいと、魚は棲めない。たぶん、夏の間も大きなやつは泳いでないのだと思う。小魚はどうか分からないけど。だから、このあたりは鳥などの生き物も少ない。周辺には花もあまり咲かない。鳥はこの池の向こうの遠くで鳴いている。 海上の森で人が足を踏み入れることができるのは、全体の10パーセントか20パーセントくらいだろうか。どこにどんな生き物がいるかは、まだまだ未知の部分が多そうだ。珍しい野草なども人知れず咲いているのだろう。
 枯れた風景ばかり見ていると喉が渇きそうだから、水の流れを見て渇きを癒そう。 ここの水は飲めるのかどうか分からない。飲んで飲めないことはないのだろうけど、相当追い込まれないと私は飲みたくない。大正池や篠田池の上流は大丈夫そうだ。森の中の集落には上下水道が通ってるんだろうか。
 夕暮れ近づく冬枯れの木々のシルエット。 ここで大物とはいかないまでも中物くらいの見慣れない鳥を見た。鳴き声も聞いたことがないやつだったから、ちょっと珍しいやつだったかもしれない。歩いていく先でパッと飛び立って、目の前を横切って奥に入ってしまった。少し離れたところでしばらく鳴いていたけど、正体は結局分からずじまいだった。 この森の中には、オオタカなどの猛禽類や、フクロウ、サンコウチョウ、サンショウクイなどもいるというし、夜はムササビも飛んでいるらしい。タヌキなんかもたくさんいそうだ。猿はいないだろうけど。見たいけどキャンプを張ってまでとは思わない。
 これが集落の中心地。ここだけで3、4軒くらい。少し離れたところにも数軒あって、全部で10軒くらいなんだろうか。きっと昔からここに住んでいる人たちで、野生の生き物が好きでここに住んでいるわけではないのだろうかと思う。海上の森も万博騒動以降、だいぶ知られるようになって、訪れる人も増えた。前より住みづらいと感じているかもしれない。 相変わらずの風景ではあったのだけど、一つ大きな変化があった。田んぼや畑のある方に一面金網が張られて自由に入っていけなくなったことだ。たぶん、イノシシなどのケモノよけではあるのだろうけど、人も入れないことになったんだろうか。赤池とか湿地帯や物見山へ抜ける道がふさがれるとなると厳しい。一時的なものなのかどうなのか。 山里の日暮れは早い。太陽が山の向こうに隠れて見えなくなってしまうと急激に暗くなる。ここから駐車場までは20分以上かかるから、こうなると急いで戻らなくてはいけない。
 帰りを急いでいたら、茂みの中で鳥がゴソゴソっと動いた。スズメか何かだろうと思ったけど、それよりちょっと体が大きくて動きが重たい。身軽さに欠ける。これはスズメじゃないぞと思い、まずはおさえとして標準ズームで何枚か撮っておいた。だいぶ暗くなっていたこともあって何者かは分からない。ただ、初めて見るやつであることは確かそうだ。 家に帰ってきてトリミングして見てみると、おー、ルリビタキのメスではないか。これは初めて撮った。見たこと自体が初めてだ。オスは背中全体がルリ色をしていて、日本における青い鳥の代表だ。メスは褐色の羽で、尾っぽだけが青色をしている。幼鳥もそんな感じではあるのだけど、今の季節に若鳥ということもないだろう。 一年中日本にいる留鳥で、夏場は標高の高い山にいるので目にする機会は少ない。冬になると暖かい地上に降りてくるので冬鳥というイメージが強い。 冬場も薄暗い林の地面近くにいることが多いので、なかなか撮るのが難しい。
 様子を見ながらゆっくり静かに望遠レンズに交換したのだけど、レンズを向けたとたんに飛んだ。ああ、残念。そのあと住人らしき人の車が通ったこともあって、木の上の方にいってしまったまま降りてこなかった。とまった位置も悪くて、こんなふうにしか撮れなかった。 次のチャンスがいつ訪れるか分からないけど、次こそちゃんと撮りたい。鳥との出会いは突然で撮れる時間は限られるから、常に撮れる体勢を保っていなくてはいけないと、あらためて思い知る。
 ここまで暗くなってしまうと、空しか撮るものがなくなる。林道に灯りなどはない。夕方までいるつもりなら、ライトを持っていった方がいいかもしれない。道さえ外れなければ危険なことはないのだけど。
 森を後にして、玄関口ともいえる屋戸橋まで戻ってきた。ここまで来れば民家も集まっているし、灯りもあるから安心だ。 空は夕方から夜に移り変わろうとしていた。
2月の海上の森は、やはりまだシーズンオフだった。野草は3月からで、ベストシーズンは4月から6月くらいだろう。花と虫と鳥とで、初夏の森は賑やかになる。歩くにもすがすがしくて気持ちいい。暑い夏になるとまた花は寂しくなる。 個人的には湿地のハルリンドウを楽しみにしている。今年こそギフチョウという気持ちも強い。そんなことを想像していると春が待ち遠しくなる。 これで海上の森行きは10回くらいになっただろうか。もう少し行ってるかもしれない。歩ける範囲で私が行ったところといえば、3割くらいのものだ。まだまだ知らないところが多い。本当は詳しい人と一緒に行っていろいろポイントを教えてもらうのがいいのだろうけど、本格的に歩くとなれば、5時間、6時間ではきかない。私としてはなんとか3時間コースくらいで勘弁してもらいたい。今回歩いた基本コースなら、写真を撮りながらでも1時間半くらいだから、お手軽コースとしてオススメできる。 海上の森は、ゆったりしたテンポの長編映画を楽しむような気持ちで楽しむといい。悪く言えば間延びして退屈なところでもある。広さのわりに野草や野鳥の密度が低いから。ただ、逆に言えば発見の出会いの喜びが大きいとも言える。見たいものが必ず見られると約束された場所じゃない。 だから、自分で行って、自分なりに歩いて、マッピングして、少しずつ攻略していくというのが正しい楽しみ方のようにも思う。行きさえすれば、必ず何かしらの出会いや発見があることだけは保障します。
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