現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
約束されてない発見と出会いがあるところ ---2月の海上の森<後編>
2008年02月08日 (金) | 編集 |
冬の海上の森後-1

Canon EOS 20D+EF-S 17-85mm f4-5.6 IS



 2月の海上の森後編は、冬枯れの大正池風景から。
 夏場は水を満たす大正池も、冬場は水が抜かれてこんな風景が広がる。ここはもともと川の流れる森だったところで、水をせき止めてダムにしたため、木々が水没して立ち枯れてしまった。水があるときは水面から立ち枯れた木がニョキッと顔を出す風景が絵になるけど、こうなってしまうと寒々しい。まるで死の世界のようだ。放射能に汚染されて木が枯れてしまったようにも見える。
 これも冬場に行かないと見られない光景だから、貴重といえば貴重だ。ただ、ここは夕焼けスポットでもあるので、水がないときは夕映えが見られないのが残念ではある。

冬の海上の森後-2

 水が抜かれているとはいっても完全に流れが涸れているわけではなくて、ちょろちょろと小さくは流れている。こんな流れでもせき止めれば大きな池になる。
 これだけ水量の増減が激しいと、魚は棲めない。たぶん、夏の間も大きなやつは泳いでないのだと思う。小魚はどうか分からないけど。だから、このあたりは鳥などの生き物も少ない。周辺には花もあまり咲かない。鳥はこの池の向こうの遠くで鳴いている。
 海上の森で人が足を踏み入れることができるのは、全体の10パーセントか20パーセントくらいだろうか。どこにどんな生き物がいるかは、まだまだ未知の部分が多そうだ。珍しい野草なども人知れず咲いているのだろう。

冬の海上の森後-3

 枯れた風景ばかり見ていると喉が渇きそうだから、水の流れを見て渇きを癒そう。
 ここの水は飲めるのかどうか分からない。飲んで飲めないことはないのだろうけど、相当追い込まれないと私は飲みたくない。大正池や篠田池の上流は大丈夫そうだ。森の中の集落には上下水道が通ってるんだろうか。

冬の海上の森後-4

 夕暮れ近づく冬枯れの木々のシルエット。
 ここで大物とはいかないまでも中物くらいの見慣れない鳥を見た。鳴き声も聞いたことがないやつだったから、ちょっと珍しいやつだったかもしれない。歩いていく先でパッと飛び立って、目の前を横切って奥に入ってしまった。少し離れたところでしばらく鳴いていたけど、正体は結局分からずじまいだった。
 この森の中には、オオタカなどの猛禽類や、フクロウ、サンコウチョウ、サンショウクイなどもいるというし、夜はムササビも飛んでいるらしい。タヌキなんかもたくさんいそうだ。猿はいないだろうけど。見たいけどキャンプを張ってまでとは思わない。

冬の海上の森後-5

 これが集落の中心地。ここだけで3、4軒くらい。少し離れたところにも数軒あって、全部で10軒くらいなんだろうか。きっと昔からここに住んでいる人たちで、野生の生き物が好きでここに住んでいるわけではないのだろうかと思う。海上の森も万博騒動以降、だいぶ知られるようになって、訪れる人も増えた。前より住みづらいと感じているかもしれない。
 相変わらずの風景ではあったのだけど、一つ大きな変化があった。田んぼや畑のある方に一面金網が張られて自由に入っていけなくなったことだ。たぶん、イノシシなどのケモノよけではあるのだろうけど、人も入れないことになったんだろうか。赤池とか湿地帯や物見山へ抜ける道がふさがれるとなると厳しい。一時的なものなのかどうなのか。
 山里の日暮れは早い。太陽が山の向こうに隠れて見えなくなってしまうと急激に暗くなる。ここから駐車場までは20分以上かかるから、こうなると急いで戻らなくてはいけない。

冬の海上の森後-7

 帰りを急いでいたら、茂みの中で鳥がゴソゴソっと動いた。スズメか何かだろうと思ったけど、それよりちょっと体が大きくて動きが重たい。身軽さに欠ける。これはスズメじゃないぞと思い、まずはおさえとして標準ズームで何枚か撮っておいた。だいぶ暗くなっていたこともあって何者かは分からない。ただ、初めて見るやつであることは確かそうだ。
 家に帰ってきてトリミングして見てみると、おー、ルリビタキのメスではないか。これは初めて撮った。見たこと自体が初めてだ。オスは背中全体がルリ色をしていて、日本における青い鳥の代表だ。メスは褐色の羽で、尾っぽだけが青色をしている。幼鳥もそんな感じではあるのだけど、今の季節に若鳥ということもないだろう。
 一年中日本にいる留鳥で、夏場は標高の高い山にいるので目にする機会は少ない。冬になると暖かい地上に降りてくるので冬鳥というイメージが強い。
 冬場も薄暗い林の地面近くにいることが多いので、なかなか撮るのが難しい。

冬の海上の森後-8

 様子を見ながらゆっくり静かに望遠レンズに交換したのだけど、レンズを向けたとたんに飛んだ。ああ、残念。そのあと住人らしき人の車が通ったこともあって、木の上の方にいってしまったまま降りてこなかった。とまった位置も悪くて、こんなふうにしか撮れなかった。
 次のチャンスがいつ訪れるか分からないけど、次こそちゃんと撮りたい。鳥との出会いは突然で撮れる時間は限られるから、常に撮れる体勢を保っていなくてはいけないと、あらためて思い知る。

冬の海上の森後-9

 ここまで暗くなってしまうと、空しか撮るものがなくなる。林道に灯りなどはない。夕方までいるつもりなら、ライトを持っていった方がいいかもしれない。道さえ外れなければ危険なことはないのだけど。

冬の海上の森後-10

 森を後にして、玄関口ともいえる屋戸橋まで戻ってきた。ここまで来れば民家も集まっているし、灯りもあるから安心だ。
 空は夕方から夜に移り変わろうとしていた。

 2月の海上の森は、やはりまだシーズンオフだった。野草は3月からで、ベストシーズンは4月から6月くらいだろう。花と虫と鳥とで、初夏の森は賑やかになる。歩くにもすがすがしくて気持ちいい。暑い夏になるとまた花は寂しくなる。
 個人的には湿地のハルリンドウを楽しみにしている。今年こそギフチョウという気持ちも強い。そんなことを想像していると春が待ち遠しくなる。
 これで海上の森行きは10回くらいになっただろうか。もう少し行ってるかもしれない。歩ける範囲で私が行ったところといえば、3割くらいのものだ。まだまだ知らないところが多い。本当は詳しい人と一緒に行っていろいろポイントを教えてもらうのがいいのだろうけど、本格的に歩くとなれば、5時間、6時間ではきかない。私としてはなんとか3時間コースくらいで勘弁してもらいたい。今回歩いた基本コースなら、写真を撮りながらでも1時間半くらいだから、お手軽コースとしてオススメできる。
 海上の森は、ゆったりしたテンポの長編映画を楽しむような気持ちで楽しむといい。悪く言えば間延びして退屈なところでもある。広さのわりに野草や野鳥の密度が低いから。ただ、逆に言えば発見の出会いの喜びが大きいとも言える。見たいものが必ず見られると約束された場所じゃない。
 だから、自分で行って、自分なりに歩いて、マッピングして、少しずつ攻略していくというのが正しい楽しみ方のようにも思う。行きさえすれば、必ず何かしらの出会いや発見があることだけは保障します。


冬の森が生み出す光と影の風景 ---2月の海上の森<前編>
2008年02月08日 (金) | 編集 |
冬の海上の森前-1

Canon EOS 20D+EF-S 17-85mm f4-5.6 IS



 海上の森に最後に行ったのは去年のいつだったろう。確か秋には行ってないから夏だったろうか。調べてみると、6月の終わりだった。そんなに行ってなかったか。毎月とはいかないまでもワンシーズンに1回は行っておきたいところだ。車で30分の距離だし、お金もかからないところなんだから。
 というわけで、半年以上ぶりとなった海上の森へ行ってきた。時期的には今の季節が一番見所が少ないことは分かっていたからちょっと気が向かないところもあった。ただ、行けば何かがあるのが海上の森というところだ。撮るものも何かはある。ここで行っておかないとまたきっかけを失ったまま先延ばしになって、春にさえ間に合わないかもしれない。行こうと思ったときが行きどきだ。
 時間もなかったので、基本コースを歩くことにした。四ツ沢から大正池、集落とプラスアルファくらいを考えて出発する。ただ、いつもとまったく同じでは面白くないということで、今回は真っ直ぐ集落に向かう道ではなく、北海上川沿いの北ルートを選んだ。こちらも以前二度ほど歩いたことがある。
 結果的に収穫はそれほど多くなかったものの、写真の枚数だけは例によって多くなった。一回に収まらなかったので、前後編の二度に分けることにした。今日はその前編をお届けします。写真のテーマは、冬の森の光と影。

冬の海上の森前-2

 海上の森の中には大きな川が3本ほど横断するように流れていて、その支流の小さな流れがいくつも走っている。大正池や篠田池などは、自然の池ではなく砂防堰堤によって出来たダム池だ。ある程度人の手も入っていて、まったくの手つかずというわけではない。それでも、人が歩かない道から一歩入ると迷子必至の深い森であることに間違いはなく、単独で行って道に迷ったまま日没になると出られなくなる可能性もある。あまり甘く見ると危険だ。捜索隊を出されたりすると、その人たちの日当を払うことになって大変だ。携帯の電波は場所によって入るところと入らないところがある。
 清流には川魚がたくさんいてということはなく、意外と生き物の影が少ない。夏場は小さな魚が見えたりするものの、魚釣りができるような深い川はない。ニジマスなんかが泳いでるような川を想像していくと拍子抜けする。沢ガニなども見たことはない。よくよく探せばいるんだろうか。
 こういう水辺に鳥がいるのは朝から午前中だろう。いつも行く夕方にはいない。

冬の海上の森前-3

 自然の竹林。春になるとタケノコ堀の人が出没しそうだ。
 ところで、この森は誰の所有物になってるんだろう。愛知県とかだろうか。万博会場にならずに済んでよかったにしても、この森を今後どうしていくかについてはなんとなく曖昧なままとなってしまった感がある。多少整備もしたし、あとはこのままでということなのか。
 海上の森2005番地に住んでいることになっているモリゾーとキッコロの扱いは今後どうなっていくのか。森の中に木の上の家を造って、そこに着ぐるみを着たバイトを置いておくというのはどうか。いろんな意味で無理な話だとは思うけど。

冬の海上の森前-4

 写真では道に見えないかもしれないけど、道だ。道といったら道だ。大丈夫、人が歩いたあとがついてるから歩くのに問題ない。
 大正池沿いのコースは、多少険しいので、ちゃんとした靴を履いていかないと危ない。すごく高い崖というわけではないにしても、すべって転がり落ちたらタダでは済まない。私は転んでもデジだけは死守するつもりで慎重に歩いた。
 多少靴がどろんこになってもいいなら、この時期は大正池の中を歩くチャンスだ。水量が大きく減って枯れ池になってるから、普段は水の底になっているところを歩くことができる。
 こちらのコースは、年間を通じて野草の少ないところだから、写真向きではない。歩きをメインにする人用だ。野草写真メインなら素直に集落へ向かう道を選んだ方がいい。
 鳥の声は遠くに聞こえるだけで姿は見えず。オオタカなんてどこにいるんだろう。

冬の海上の森前-5

 海上の森では基本的には人に会わない。でも、たまに会うからぼぉーっとして歩いているとギョッとすることがある。誰もいないはずの森で人が出会うと、お互いにびっくりする。それでも平静を装ってこんにちはと挨拶はする。街ですれ違っても挨拶しない日本人も、どういうわけか森とか山とかですれ違うとかなりの高確率で挨拶を交わす。その習性は面白いなといつも思う。

冬の海上の森前-6

 鳥もいないし、野草には早すぎるしで、すぐに撮るものがなくなった。仕方がないので自分の影でも撮ってみる。だいぶ影が長く伸びて日没が近づいていることが分かる。
 大正池のあと、少し時間がありそうだったので篠田池を目指したのだけど、これが失敗。一番遠回りの真ん中コースを選んでしまったのでえらく時間がかかって、そのまま進むと日没になりそうだったので、途中で引き返すことになってしまった。奥まったところにある篠田池で日没を迎えるのは厳しい。森や山では引き返す判断も大切だ。
 篠田池へ行くなら、四ツ沢から北に入って、分かれ道で左方向へ行って道なりに進むのが一番早い。それなら30分もかからないだろうと思う。
 篠田池も特に何があるというわけでもないところなのだけど。

冬の海上の森前-7

 見上げると枯れ木が円陣を組んで何か相談しているようだった。私のことについて何かひそひそ話をしていたのかもしれない。
 それにしても見事な冬枯れだ。葉っぱを一枚残らず落としてしまって、冬の寒さに耐えている。でももう春は近い。新芽の準備は確実に進んでいるのだろう。あと3ヶ月もすれば、空が見えないほど葉が生い茂る。

冬の海上の森前-8

 ヒノキ林に太陽が差し込んで、光の帯を作った。見た目はもっと劇的に美しかったのに、写真に写し取ることができなかった。残念。
 このあたりは植林のような気がするけどどうだろう。木を切ることは必ずしも悪いことではなくて、計画的に伐採していかないと森は荒れる一方になる。適度に切ることで大木の下まで光が差し込むようになって小さな植物を育て、生き物も豊かになる。切った分だけまた植林すればいい。そうやって日本人は昔から里山と持ちつ持たれつの関係を築いてきた。

冬の海上の森前-9

 森の中の太陽は、とても貴重なものに思える。差し込む場所が限られていて、特に冬場はありがたみを知る。日が当たっているところと当たってないところでは、体感温度がまるで違う。
 今日は10度まで上がって暖かい日だったけど、日没後は急激に冷えた。

冬の海上の森前-10

 光が当たるところには色が生まれる。写真は光が生み出すコントラストだ。影がなければ物の存在を知ることができない。
 光が作る影と色でこの世界は成立している。写真もそうだ。人間界も例外ではない。

冬の海上の森前-11

 日没後の空を映す小川の水面。
 光がなくなれば森の中で撮れるものはほとんどない。

 前編はここまで。後編につづく。




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