 Canon EOS 20D+EF-S 17-85mm f4-5.6 IS / EF 50mm f1.8 II /EF 75-300mm f4-5.6 IS
4月の安曇野(あずみの)は、平地の春と山の冬が同居していて、なんだか不思議な感じがする。暖かさは名古屋と変わらないのに、まだ梅の季節をやっている。時間が戻ったような、先週観たドラマの再放送をもう一度観てるような、違和感のある感覚だった。 今日は昨日の写真にコメントを追加しようと思っていたのだけど、写真もたくさんあるし、新しく書くことにした。昨日の分は昨日で完結ということにしておく。 ということで、写真は再び穂高駅に戻った。安曇野の旅はこの駅から始まる。 昔はこのあたりを安曇平と呼んでいて、臼井吉見が書いた小説『安曇野』以降、安曇野という呼び方が一般的になったんだそうだ。ここからここまでと決まった土地の名称ではなく、安曇野市を中心としたこのあたり一帯を指す。 そんなぼんやりした土地だけに、安曇野という名前だけがイメージとして先行して、その実体は意外と知られていない。知ってる人でも、南アルプスの麓で清流の流れるのどかな信州の土地といった程度の認識なんじゃないだろうか。私も下調べしてもどこに何があるのかよく分からなかった。 実際には何があるかというと、これといったものはない。決定的な見所はなく、どこへ行けばいいのかはっきりしない。言い方を変えればこの土地全部どこへ行っても見所とも言える。何もないのに大勢の人が訪れるというのはそれだけの魅力があるということで、それは行ってみないと分からないたぐいのものだ。行けば分かる。言葉で説明するのは難しい。写真でもその魅力を伝えきれない。伝えきれないけど、これをきっかけに行ってみたいと思ってもらえるように、安曇野のレポートをお届けしたいと思う。
 穂高駅は雰囲気のある駅だった。作為的ではなく、いい意味でのローカル線の味がある。たぶん、映画やドラマのロケなどでもよく使われているのだろう。旅立ちや別れのシーンなどがよく似合いそうだ。 駅のロケといえば、ドラマ「鹿男」で奈良駅として登場した駅は、近鉄天理駅だったということをツレが教えてくれた。そういえば近鉄奈良駅は全然あんな田舎の駅じゃない。
 駅前には丸ポストが置かれ、現役として使われている。しっかりJPのシールも貼られているから、民営化後もこのまま使い続けるようだ。 こういう観光地には丸ポストがよく似合う。残念ながら置かれている場所がよくないので、絵になりづらいというのはある。背景の駅舎と絡めて撮れるところに置いてもらえるともっといい。
 着いたのがちょうどお昼時で、駅前でそば屋を探していたら、レンタサイクルの「ひつじ屋」さんの主人が「一休庵」という店を教えてくれた。駅から2分くらいのところにある。 松本周辺はそば屋しかないのかというくらいそばを全面的に押し出してきている。安曇野ではそれプラスわさびだ。両方苦手な人は、松本で食事をするときはちょっと困るかもしれない。信州そばは有名にしても、もう少し別の選択肢も欲しいと思う。 とはいえ、せっかくここまで来たのだから、そばを食べない手はない。私は山菜盛りそば、ツレはやまかけを注文した。どちらも1,000円だった。 名水百選の井戸水で打った二八そばは、細麺で腰が強い。最初はちょっと固いかなと思うけど、のどごしがちょうどいい。なるほど、なかなかのものだと美味しくいただいた。 つゆも甘すぎず濃すぎず、ちょうどよかった。
 駅から大王わさび農場までは歩くと30分以上かかるというので、駅前の「ひつじ屋」さんで自転車を借りてそれに乗っていくことにした。昨日写真でも紹介した電動機付き自転車だ。 普通の自転車でも1時間200円で、電動は250円なので、電動がオススメだ。楽ちんさがまるで違う。 安曇野のスケール感は自転車の速度が一番合ってるような気がする。歩くにはちょっと広すぎて間延びするし、車で移動してしまうのはもったいない。自転車で風を受けながら眺める安曇野風景はとても素敵なのだ。多くの人がこの土地に魅了される理由が理解できた。 猫だって、田んぼの中を自由に歩き回っている。ここは猫の多いところで、それもこの土地が好きになった理由の一つだ。
 水車の写真をもう一枚。この角度は午後から逆光になってしまうので、写真としては厳しい条件になる。順光なら水面の映り込みがもっときれいに写るはずだ。PLフィルタを使うという手もある。 この日の条件では、黒澤明監督なら太陽の位置にダメ出しをしていただろう。
 大王わさび農場名物「わさびソフト」。どんなパンチの効いたソフトだろうとおっかなびっくり食べたら、普通の味だった。わさび味はすごくマイルドだから、わさびと言われなければ分からないくらいだ。わさびの辛みがソフトの甘みを引き立てて当たり前に美味しい。 300円だけど、ネットクーポンや駐車場で配ってる割引券、JAF会員割引などで50円引きになるので実質250円だ。 その他、わさびコロッケ、わさびラーメン、わさびビールなど、あらゆるものにわさびをねじ込んだものを販売している。どれも美味しいらしい。もちろん、生のわさびも1本1,000円前後で売っている。この時期ならではのわさびの花のおひたしや天ぷらなどもあった。 ここは1917年にできた古いわさび農場で、15ヘクタールという広い土地でわさびを栽培している。わさびというのは年間を通じて冷たくてきれいな水でしか育たないので、この土地はわさび栽培には最適なのだ。 3月末から4月にかけて白い花を咲かせて、その後は黒い寒冷紗でわさび田全体を覆ってしまうから、見るなら今の時期が最適だ。わさびは強い直射日光に弱いらしい。 大王わさび農場という名前の由来は、坂上田村麻呂の一軍の略奪に苦しめられていた住人を助けるために立ち上がった魏石鬼八面大王が返り討ちにあって退治され、その体はバラバラにされてこの土地に埋められたという伝説からきているんだとか。 農場の中に神社があって、何を祀ってるんだろうと思ったら、その大王を祀った神社だったのか。 これといって行くところのない安曇野で唯一団体客が訪れやすい場所ということで、現在は年間120万人もの人がやって来るという。この日も観光バスから続々と人が降りてきていた。
 安曇野には400体もの道祖神があって、道祖神密度日本一とされている。松本にも約370体あるというから、このあたりは特別多い。 もともとは村の入り口近くに神様を置いて、災厄が村に入ってこないようにしたというのが道祖神の始まりといわれている。道ばたの神様という意味で、特定の神というわけではなく、スタイルも様々だ。 時間があればゆっくり見て回ると、中には面白いものもあるのだろう。安曇野の風景によく解け合っている。
 トンビとカラスは相性が悪くて、普通は敵対するものだけど、ここは例外で、二つの群れが入り交じっている。無数のカラスと無数のトンビの集団というのは、ちょっとびっくりする。一本の木にたくさんのトンビとカラスが鈴なりになっているなんて光景はなかなか見られない。ここでは利害関係が一致しているんだろう。
 トンビとカラスが狙っていたのはこれ、養殖のマスだった。 まったく覆いもかぶせてないから獲られることはないのかと思いきや、ときどき獲物を捕まえるトンビがいて、それを他のトンビやカラスが取りあいっこしている。養殖してるのに、そんなことでいいんだろうかと思うのだけど、それはあらかじめ織り込み済みなんだろうか。けど、次から次へと獲れるというわけではなく、トンビたちは上空を旋回したり、電柱に止まって狙ったり、急降下して捕獲を試みて失敗したりしている。なんだか、不思議な生態系だった。 それにしてもあんな数のトンビはなかなか見られないから、これも一つの隠れた安曇野名物としてもいいかもしれない。
 こいつはなんだろう。最初、オナガかと思ったんだけど、顔の下まで黒いからたぶん違う。ツバメに似たカラーリングだけど、もっと大きかったし、尾っぽが燕尾服の形をしてないからそれも違う。なんだっただろう。望遠レンズに交換して撮ればよかったかな。
 川をさかのぼって白鳥がいるというスポットを目指すも、途中で道が途切れてしまった。時間もなく、それ以上追求することができなかった。そこらの川にもはぐれたやつがいるんじゃないかと期待したけど、白鳥はカモとは違って決まったところにいるものらしい。 おとといの時点でまだ300羽ほど残っていたようだけど、そろそろみんな北へ帰って行く時期だ。
昨日、今日の写真くらいでは安曇野の魅力を伝えきれないのがもどかしい。短時間の滞在で撮った写真だけではなかなか難しい。ここは一年を通じて撮る価値のあるところだ。一年でも住んでじっくり撮りたいと思わせるようなところは、なかなかあるものじゃない。 まだ安曇野写真はあるから、明日以降も不定期に連載は続く。 桜写真も使い切らないとすっきりしないし、あさってはまた列車の旅に出る。私もブログも、もう少し落ち着かない日が続きそうだ。
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