 Canon EOS D30+EF50mm(f1.8), f2.0, 1/60s(絞り優先)
野草咲く春が待ち遠しい気持ちが昂じて、うっかり高い野草図鑑を買ってしまった。古本なのに1,200円とは生意気な。定価は3,000円。最近「Book off」の100円コーナーくらいでしか本を買ってないから、やけに高く感じられた。でもきっと気のせいだ。高くない、高くない、高くない。呪文のように自分に言い聞かせる。 「この本で名前が分からなかったらあきらめることにしている」、誰かが言ったそんなセリフが私の背中を押した。おいおい、押すなよ、危ないじゃないか。ん? 幻聴、幻覚か? 今持ってるポケット図鑑は野草の種類が400なのに対してこれは1,000種類。倍以上の収録数だ。まさにポケット野草図鑑の決定版と言えよう。
これでもう野草は私のものさ、分からない花などなくなるだろうよ明智くん、フフフ、と不敵な笑みを浮かべてページをめくって読み始めた私であったが、その5分後にはそっと本を閉じて見えないところに置いた。えーと、ちょっとあっちいっててくれるかな。いや、おなかの調子がね。うっ、なんか、大学の講義の教科書を初めて見たときの気持ちがよみがえってきた。来週は休講にならないかな。 野草に関する知識や情報は全部詰め込んでみましたとでも言わんばかりの圧倒的なボリューム感にめまいがしそう。写真と文章で600ページにわたって余白というものがほとんどない。メモするスペースさえも与えませんよ、と高らかに言い放っているような気迫さえ感じる。こんな厳しい図鑑だったとは。手強すぎる。 せめて季節ごととか、花の色ごととかに分けられていたら、初めて見た野草の名前を調べるときに絞り込みやすいのだけど、これはそんな甘えを許してはくれない。属や科ごとに分類されているから、まったく初めての野草の場合、最初のページからめくっていかなければならない。こいつは厳しいぜ。スパルタ教育だぜ。ゆとり教育はどこへ行った? これは上級者か、少なくとも中級者向けの図鑑とみた。初心者が野草の名前を覚えようとして初めてこれを買ってしまったら、あまりにも覚えなくてはいけないことが多すぎて野草離れを起こしてしまうんじゃないかと心配になる。私はどうかといえば、去年ドラフト4位で入団して今年もキャンプは2軍スタートなのに、いきなり4月から藤川、ウイリアムス、久保田の球を打てってのは無理です、ってな感じだ。3打席立って1回前へ飛ばせるかどうか、4打席目が回ってきたら自分から代打を送ってもらうようお願いしてしまいそう。どうやらこの図鑑、私にはまだ1年早かったようだ。 とはいえ、ある程度知識がある人にとって花を見分けるのに非常に役に立つと思う。写真は花のアップだけじゃなく、引いたところや、葉っぱの形、その他特徴的な部分をくわしく解説してくれているのが嬉しいところ。フィールドに持っていって、その場で使うと野草の知識が一気に増えることだろう。
図鑑はともかくとして、春の野草が楽しみなのは間違いない。そろそろオオイヌフグリが咲き始めたという便りも届いた。ヒメが踊り始めればもう春だ。去年見られなかったアズマイチゲを今年は見られるだろうか。2度目の野草の春は、できるだけたくさん見て回って、写真もいっぱい撮りたい。 もう少し暖かくなったら私は旅に出よう。ランニングシャツを着て、短パンを履いて、小脇にスケッチブックの代わりにこの図鑑を抱えて、「野に咲く花のように」を歌いながら。 そんな格好の頭を丸めた男が道ばたにしゃがんで写真を撮っているのを見かけときは、おむすびを与えてやってください。きっと私はこう言うでしょう。 「ぼぼぼくは、おおおむすびが大好きなんだな」 そして、歌を口ずさみながら線路沿いに歩いて去っていくでしょう。 ♪時にはつら〜い人生も 雨のち〜曇りで また晴れる〜 そんな〜時こそ 野の花の〜 けなげな心を知るのです〜♪ この春、あなたの街にも、カメラを首からぶらげた裸の大将がやって来るかもしれません。おむすびを握って待っていてください。

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