現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
コゲラのことを書きながらコデラさんを思い出した春のはじめ 2月23日(木)
2006年02月24日 (金) | 編集 |
コゲラさん

FUJIFILM FinePix S1 Pro+TAMRON 28-300mm(f3.8-6.3), f6.3, 1/320s(絞り優先)


 ギィー、ギィーという鳴き声に続いて、木を叩くコツコツコツコツコツという音が聞こえてきたら、すぐ近くにコゲラさんがいます。コデラさんではないです。私の小学校の時のクラスメイトで学級委員長だったコデラさんが歯ぎしりをして木に何かを打ち付けてる音ではありません。
 飛雄馬のお姉ちゃん星明子のように木に半分身を隠しながら見上げてみると、そこにはやはりコゲラがいた。半年ぶりの再会。あちこちにせわしなく飛び移っては木をコツコツつついていた。その動きに翻弄されながら写真を撮りまくった私だったけど、今ひとつ手応えはなかった。ちゃんと撮れてるのだろうか。もっと近寄りたいけど近づくと逃げていってしまう。ちょうどコデラさんのように。

 木をつつくことからも分かるように、コゲラはキツツキだ。キツツキなんて人が住んでるところの近くにいるの? と思う人も多いかもしれないけど、これが意外と身近にいるのだ。街中の公園や緑地に一年中いる。特にこのコゲラはポピュラーな種で、その気になって探せば見つけるのはそれほど難しくない。とはいえ、おととしの秋、最初に見たときは感動したものだった。わっ、コゲラだ、キツツキだ、と。
 昔のアニメのキャラクターでウッドペッカーというのがいたけど、キツツキのことを英語でウッドペッカーというから、そのままだ。あのキャラはウッディとかいう名前があったと思う。コゲラの英名は、Japanese Pygmy Woodpeckerで、名前の通り、日本とユーラシア東部の日本海側にしか生息していていない。
 体長は15センチくらいで、スズメと同じくらいだ。背中の茶色と白のボーダーラインが特徴的。地味というよりシックな感じで、agnis b.のボーダーTシャツを思わせる。
 オスは目の後ろの頭の部分に赤い斑があることで見分けられるのだけど、普段はあまり見えないので区別は難しい。メスはクチバシ基部が褐色というんだけど、それも近くで見ないとよく分からない。

 写真のようにかなり無理な体勢でも落っこちないのは、尾っぽを使って三点で体を支えているのと、足の構造が垂直でもがっちり木を掴めるようにできているからだ。コゲラにしてみたら当然のことで驚くには当たらないのだろう。一生を木の上で過ごして、地面に降りることはほとんどない。
 エサは木の皮の内側にいる虫を食べている。木をつついてる理由のひとつがそれだ。ただし、つつくのは虫にやられてしまってる木の皮だけで、健康な木を傷めたりはしない。木にとって悪い虫を食べてくれるありがたい鳥なのだ。林業の人の心強い味方とも言える。固いクチバシでつついて、長い舌を使って上手に虫を捕まえる。虫があまりいなくなる冬場は木の実なども食べるようだ。
 木をつつく理由はエサをとるためだけじゃなく、縄張りの主張や求愛のためでもある。そして、つついて穴を開けて巣穴まで作ってしまう。固い木をくりぬくんだから、相当力があるということだ。私の頭くらい簡単に風穴を開けられてしまうだろう。それは困るけど。
 繁殖期は5〜7月で、一夫一妻。卵は5個くらいで、オスメス仲良く交代で温めて、子育てもする。2週間もすれば卵はかえり、ひと月足らずで巣立ちとなる。ただ、子供は半年以上も親と一緒に過ごすんだとか。野鳥の中では珍しく仲良し家族と言えるだろう。
 冬場の今の時期は、メジロとかシジュウカラとかエナガなんかと一緒に混成チームを作って過ごしてることが多い。エサがかぶらないからいいのかもしれないけど、会話が通じるのかどうかは気になるところだ。冬場は木々の葉っぱが落ちて一番姿を見やすいときなので、コゲラがいたら近くの木を探してみると他の鳥も見られてお得だ。

 キツツキは漢字で書くと啄木鳥。これで同時に「ゲラ」とも読ませる。日本のキツツキはたいてい何々ゲラと呼ばれている。アカゲラとかアオゲラとか。だからコゲラは小啄木鳥と書く。
 世界にはキツツキが200種類もいるそうだ。ウッドペッカーのように赤い顔と黄色いクチバシをしたやつもいるのかもしれない。
 私はアカゲラは見たことがあるけど、アオゲラはない。北海道には特別天然記念物に指定されているクマゲラが、沖縄には同じく天然記念物のノグチゲラというのがいるらしい。しかし、天然記念物だけに、これらを見たことがある人はそう多くはないだろう。

 啄木鳥という字を見て、石川啄木を思い出した人もいるだろう。啄木の本名は石川一(いしかわはじめ)で、啄木はペンネームのひとつだ。故郷の渋民村で見た啄木鳥に親しみを感じて名前をもらったと言われている。コツコツと一所懸命な姿が気に入ったのだろう。本人はそんな人間じゃなかったから余計そんなことを思ったのだろうか。もしかしたら、啄木が見たのはこのコゲラだったのかもしれない。

 やや長きキスを交わして別れ来し
 深夜の街の
 遠き火事かな


 こんな歌の方が啄木らしさをよく表していて私は好きだ。

 コゲラさんの奏でるドラミングの音が聞こえたら、しばし立ち止まって木を見上げてみてください。都会に住むキツツキの姿を見ることができるでしょう。
 コデラさんは幸せに暮らしているだろうか。

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