現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
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初対面のセリバオウレンは影分身の術で私を惑わせた
2007年02月17日 (土) | 編集 |
セリバオウレン-1

Canon EOS Kiss Digital N+TAMRON SP 90mm(f2.8), f4.0, 1/50s(絞り優先)



 誰が呼んだか瀬戸の冷蔵庫・岩屋堂。夏はひんやり、冬は冷え冷え。いつ行ってもあそこは明らかに市内とは温度が違う。瀬戸駅から車で10分ほど山へ入っていっただけなのにあの温度差は、地形の影響もあるのだろうか。今日も猛烈に寒かった。名古屋を出たときは春だったのに、岩屋堂へ着いたら真冬だった。デジを持つ手がかじかんで取り落としそうになるほどに。
 岩屋堂の入口にある浄源寺裏にセリバオウレンが咲いていると教えてもらったのが去年の2月。愛知県内ではっきりと咲いてると分かっている場所は、三河の新城市や県民の森と、瀬戸のここくらいしかないという珍しい野草なので、ぜひ一度見たいと思った。しかし、二度行って二度とも見つからず。岩屋堂との相性の悪さも手伝って、ついにセリバオウレンは私に微笑むことなく去年は終わってしまったのだった。
 そんな悲し悔しい思いからまるっと一年。また早春のこの季節が巡ってきた。今年こその思いを胸に、今日満を持して岩屋堂を目指した。コブクロの「ここにしか咲かない花」を口ずさみながら。
 今回は見とがめられてもひるまないという強い覚悟を持ってずんずん奥まで入っていった。「入山禁止」の立て札を越え(去年はここで引き返してしまった)、思い切ってお寺の裏庭に踏み込むと、一面のセリバオウレンたちが私を出迎えてくれたのだった。おおー、きみたち、こんなところにいたのか。はじめまして、セリバオウレン。去年から探してましたよ。
 あっ、ここにも、おっ、こっちにも、あそこにも。って、多っ! うじゃうじゃいるではないか。どんだけあるんだ、これ。私の頭の中では、どこか一角にひっそりと20とか30株が固まって咲いているというイメージだったのだけど、庭といわず山の斜面といわず、まるで雑草のようにボコボコ生えているではないか。いやーん、こんなにたくさんじゃありがたみがないぞ。大人気で売り切れ必至の限定商品を勢い込んで買いに行ったら店に山積みになっていて拍子抜けしたみたいな感じだ。数十どころではなく数百か、千以上だったかもしれない。まさに群生状態。
 こうなると逆にどこをどう撮っていいのか戸惑う。撮れるポイントがありすぎて絞りきれない。一応みんなのセリバオウレン写真を見比べてイメージを作っていったつもりだったのだけど、いざとなるとそれも飛んでしまった。とりあえず思いつく限りいろいろなパターンを撮ってみたものの、帰ってきてから見てみたら、なんだか全然イメージ通りじゃなかった。花が小さくて咲き方がバラバラだから普通に撮るのもやっかいなのに、上手に撮ろうとするとこれはすごく難しい花だ。本当ならじっくり時間をかけて撮影にいいポイントを見つけないといけないのだろうけど、日没間近ということで時間もなくてそうもいかなかった。早くも来年再挑戦することと心に誓った私であった。
 次は光が当たっているときに行こう。レンズはマクロレンズが基本なんだろうけど、あまり近づきすぎてアップで撮ると、この花の小さくて可憐な様子が伝わらない。けど、離れて撮ると背景がうるさくなって雑多な感じになってしまう。むしろ明るい中望遠あたりで遠くから撮った方がいいのかもしれない。200mm f4とか、180mm f2.8とかで。もしくは、寄れる広角28mmあたりも面白そうだ。
 それから、ロケーション的に斜面で、花の位置が低いから普通の三脚は役に立たない。ローアングルの三脚か、もしくはビニールシートを持っていくのもよさそうだ。人目がなければシートの上に腹ばいになってヒジをついて撮った方がブレなくていい。その状態を人に見られるとかなり恥ずかしいけど、そのときはほふく前進で裏山に逃げ込むといいだろう。

セリバオウレン雄

 アップで撮ると、それはまるで初春の白い花火のよう。または、ミルククラウンを連想させる。これは肉眼ではなかなか見られない世界だ。
 セリバオウレンにはオスとメスがいる。あるいは、雄と両性があると言った方がいいのだろうか。上の写真のように真っ白でおしべがびよんびよん伸びてるのが雄で、下の写真のように中心が緑だったり紫だったりでおしべがないのが雌になる。人によってはそちらを両性花と説明しているので、そっちのほうが正式な呼び名なのかもしれない。
 春の妖精カタクリやショウジョウバカマに先立って真っ先に白い花を弾かせる。少し黄色っぽいものやピンクがかったものもある。

セリバオウレン雌

 分布は本州と四国の山地の林など。日本海側に分布しているオウレンの変種とされ、太平洋側に多い。セリバ(芹葉)の名前のように、細かく切れ込んだ葉がセリに似ているところから名づけられた。その他、コセリバオウレン、キクバオウレン、ミツバオウレン、バイカオウレンなどがある。
 オウレン(黄連)は、中国のシナオウレンに由来するもので、もともとはカクマグサ(加久末久佐)と呼ばれていたそうだ。
 キンポウゲ科の花で、高さ10-15センチ、花の大きさは1センチほど。白い花びらのように見えているのはガク(萼)で、ガク片は5-7枚、花弁は5-10枚で目立たない。1本の茎の先に2-4個の花をつける。
 昔は薬草としてよく使われていた。日本でも中国でも有名だったようで、どちらの国でも栽培されている。江戸時代には日本のものが中国に輸出されていたらしい。
 抗菌、炎症止めの作用があるようで、鼻血や歯ぐきに出血を止めたり、赤痢やコレラにも効いたとか。かなり強い薬効がありそうだ。猛烈に苦いんだとか。
 お寺の裏庭とかに多いのは、かつての住職が薬草として植えたものが野生化したということも多いようだ。

 セリバオウレンのことを今日調べていて、ここ最近、野草の勉強をすっかり怠っていたことに気づいた。野草博士になるというのも大事な課題のひとつだったことを思い出す。シーズンオフだからといって何もしないでいいはずがない。勉強しなければ詳しくなれないし、覚えるためには反復が必要不可欠だ。何度も見て、いつでも頭の中の引き出しから取り出せるようにしておかなければ記憶として定着しないし役に立たない。
 今年で野草も3周目に入る。何も分からなかった1年目、少し分かるようになった2年目、3年目はもう言い訳がきかない。見分けがつかなかったり分からなかったりしたら、それは勉強不足に他ならない。今年の終わりには、基本的なものに関してはたいてい知っているところまでいきたい。
 野草に詳しくなったところで何がどうなるというわけでもないけど、地球と仲良くなればそれだけ楽しみや喜びとして自分に返ってくる。無関心だった頃は見えなかったことが見えるようになるのは嬉しいことだ。
 なんなら片っ端から野草を食って覚えるくらいの意気込みを見せたい。暗記した辞書のページを食べてしまう受験生のように(今どきどんなやついない)。
 まずは現地に出向いていって自分で写真を撮るのが一番だ。その写真を持ち帰って図鑑やネットで調べてブログに書くことまですれば、さすがの私も覚える。いくら記憶力に難があるからといって、それをきれいさっぱり忘れてしまうほどうっかりさんではないつもりだ。あえて食うまでもない。
 春はもう近い。短い2月が終わって3月になれば、春の野草シーズンが本格的に開幕する。そろそろ自主トレからキャンプインに入ってもいい頃だ。今年もたくさん野草を撮れるといいな。野草写真ももっと上達しなくちゃ。新しい野草といくつ出会えるだろう。


この記事に対するコメント

このお花、初めて見ました。

【2007/02/17 18:04】 URL | kattyan #- [ 編集]


オウレン今年は開花が少し早いようですね。庭でも今よく咲いてます。愛知県ではあまり見られませんか?多いのは福井県ですね。九頭竜ダム周辺の谷筋の林の中には沢山見られます。やはりはじめは薬草栽培から増えて野生化したのでしょう。ミツバオウレンもよく見られます。バイカオウレンは少ないです。国道157号線の福井県境の根尾川大河原というところの唐松林のの中には足の踏み場もないほどありますが残念ながら4月末まで通行止めです。

【2007/02/17 20:24】 URL | yabu #YMuN7fn. [ 編集]

見たことないのが普通
★kattyanさん

 こんにちは。
 セリバオウレンは愛知ではなかなか見られないんで、見たことがない人の方が圧倒的に多いと思う。
 今なら瀬戸に行けば確実に見られるけど、kattyanさんなら新城とかあっちの方が近いかもしれないですね。
 いつか機会があればぜひ。小さくて可憐ですよー。

【2007/02/18 04:09】 URL | オオタ #dcJU4M0Q [ 編集]

名古屋では珍しいセリバオウレン
★yabuさん

 こんにちは。
 オウレンはやっぱり早いですか。2月のこの時期でもう満開だったから、3月まできれいな状態は持たないかもしれないですね。
 愛知県はたぶん少ないと思います。検索しても出てくる場所は決まってるから。
 人知れず山の中では咲いてるのかもしれないけど、有名どころは数ヶ所って感じです。特に名古屋市近郊はほとんどないはず。
 福井県はそんなに多いんですか。足の踏み場もないほどってのは見てみたいなぁ。
 福井はちょくちょく行ってたんだけど、最近ちょっとご無沙汰です。
 福井県でスピード違反で捕まって、私のゴールド免許を取り上げたんでうらんでます(笑)。

【2007/02/18 04:13】 URL | オオタ #dcJU4M0Q [ 編集]


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