 OLYMPUS E-1+SIGMA 18-50mm(f3.5-5.6), f7.1, 1/60s(絞り優先)
牛さんの大きな顔がぐぐっと近づいてきたかと思うと、長〜い舌がべろ〜んと伸びてきてウヒャーと悲鳴が上がる。よだれまでかかりそう。牛の舌ってこんなに長かったんだ。だから牛タンって商売になるんだね。あやうくなめられそうになって逃げてしまったけど、なめられたらどんな感じがするんだろう。猫の舌のようにザラザラしてるのか、それとも人間の舌に近い感じなんだろうか。後学のためにひとなめされておくべきだったか!? 牛さんもつき合ってみれば人なつこいかわいいやつなのだなと知った。 愛知牧場、通称アイボクは、名古屋のお隣の日進市にあって、動物たちとの触れ合い度ではここらのベストスポットと言える。動物園にも触れ合いコーナーやエサやりタイムあるけど、ここならオールタイム自由に動物たちとなごむことができる。牛、馬、豚、山羊、羊などの家畜類に限られるとはいえ、現代を生きる都会っ子にとってはこれらの生き物たちと直接触れ合える機会は貴重だ。子供たちにとっても教育になるし、大人たちも楽しめる。デートスの穴場としてカップルにもおすすめしたい。 エサはニンジンやら乾し草やらがそれぞれ100円で売られている。自動販売機やお金を箱に入れてエサを持っていくゆるやかなシステムで、ときどき子供が金も払わずエサを盗んでいくのも愛嬌として許されている。結果的には動物たちの口に入るのだからそんなに被害はない。しかしこのエサ、冷静に考えるとかなり割高だぞ。原料費などほとんどタダ同然だろうに。特に週末は動物たちがもう食べられないぞってくらい飛ぶように売れる。これはなかなかいい商売だ。もちろん、我々もエサを買ってあげて回った。これがまた楽しい。野良猫にエサをあげている猫おばさまの気持ちが分かる。基本的に人間って生き物にエサをあげるのが好きなんだと思う。ペットを飼うことの喜びのかなりの部分にエサを与える行為の喜びがあるのかもしれない。
 笑うヤギさん。もちろん、本人に笑っているという自覚はないと思う。エサをくれーという怒りの表情だったか。目の表情から思いは読み取れなかった。 ヤギの歯は近くで見ると怖い。上下ともしっかりした歯並びで、本気で噛まれたらかなり痛そうだ。紙やら草やらをむしゃむしゃかみ砕くにはあれくらいの歯が必要なんだろう。勢い的には固いスルメイカでも噛めそうな感じだった。ヤギさん、侮りがたし。 エサをあげてみると、ただ見てるだけでは気づかなかったいろいろなことに気づいて面白い。そして、触れてみると意外な感触に驚く。頭の中にあったイメージと実際の手触りは違うものだ。ヤギももっとふわふわしていそうに思えたのに、触るとゴツゴツ、ザラザラで毛並みも硬い。あごひげは少し柔らかかったけど。 次はあの歯で甘噛みしてもらおう。軽く噛んでちょうだいねというリクエストにヤギがちゃんと応じてくれるかどうか。本気で噛まれたらどれくらい痛いのだろう。まずはツレに噛まれてもらってからにした方がよさそうだ。
 子供にエサをもらうロバさん。ロバはいたって穏やかな性格をしている。エサの食べ方もおとなしい。ガツガツしてないし、動きも緩慢だ。 これまでロバという生き物をあまり意識したことがなかった。けど、考えてみるとロバというのは不思議な位置づけの家畜だ。たいていの人はロバのことを当たり前に知ってるのに、ロバと日本人の関係は薄い。実際のロバを見たことがあるという人は案外少ないんじゃないだろうか。家畜として飼われているところも知らないと思う。 それもそのはずで、ロバというのは現在日本に200頭ほどしかいないのだそうだ。単純計算して一県につき4頭というのはいかにも少ない。大部分は動物園や農場、牧場などで飼われているのだろう。一般家庭でロバを飼ってるというのも聞かない。家畜といっても乳をちぼるわけでもなく、肉を食べるわけでもないし、農業に使うわけでもないので、使い道がないのだ。 世界的にみると、ロバは5,000年も前にすでに家畜として飼われていたという。馬よりも小さくて、エサも少なくていいのと、乾燥に強いということで、主に砂漠地帯などで荷物運搬係として重宝されたようだ。ユダヤ人との関わりも深く、イエス・キリストの乗り物はロバだった。 日本へは599年に百済から贈られたというのが一番古い記録として残っている。その後も断続的に入ってきたのについに定着することはなかった。乗り物としても輸送手段としても農作業にしても、馬に比べて劣るということから存在が中途半端だったからだろう。馬よりも維持費がかからないということでもっと活用されてもよかっただろうに。 ロバはウマ科の中で一番小さな動物で、馬よりも賢いと言われている。一度通った道は覚えていて、寝ていてもその場所に運んでくれるんだとか。理不尽なことは嫌いでたまに意固地になるものの、ちゃんと理にかなったことなら言うことを聞くということで、相当頭が働くのではないかという説もある。その気になれば時速60キロ出せるというから、あえて実力を隠して人間の家畜にならないという戦略をとったのかもしれない。
 アイボクのふれ合い動物コーナーの全景。かなり広々としたところに飼われているので気持ちがいい。動物園のような狭いところに入れられていると心が痛む。オリの広さが幸せのバロメーターではないけれど、狭いよりは広いところの方がいい。 春になればベビーラッシュでいろんな動物の赤ちゃんも見られるだろう。子馬とかもかわいいのだ。本格的な乗馬から体験乗馬までいろいろコースがあるから、一度馬に乗ってみたかったという人にもおすすめしたい。 アイボクは、子連れでも、カップルでも、なんならひとりで行っても楽しめるところだ。ひとりで動物たちにエサをあげて喜んでるおっさんというのはどうかとも思うけど、人目を気にしなければ問題なく楽しい。 入場も駐車場も無料で、エサ代の100円玉数枚とソフトクリーム代だけ持って行けば半日は過ごせる。無料休憩所が狭いのが残念だけど、もう少し暖かくなれば外でも弁当は食べられる。 家畜の匂いというのもたまに吸うにはいいもんだ。毎日なら気が滅入りそうだけど。ぜひ、牛に顔をなめられ、ヤギに指を噛まれて、ロバの耳をなでるために行ってみてください。ヒツジの剛毛も暖かくて気持ちがいいし、ブタさんの肌触りもいいですよ。馬も近くで見ると本当にきれいな生き物だと知るだろう。 私も春になったら今度こそ名物のジェラートを食べにいこう。
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