21世紀もフィルムカメラを使ってこの時代の空気を写し撮ろう

Canon EOS Kiss3+TAMRON SP 90mm f2.8+Kodak ULTRA COLOR 400UC
海上の森で撮りきれなかった36枚撮りフィルムの残り半分を使うために、春日井にある無料植物園「グリーンピア春日井」へ行った。困ったときはグリーンピア。ここへ行けば一年中、何か撮るものがある。入園も駐車場も無料で、夕方6時まで開いているのがありがたい。
6月はハナショウブだ。時期的にはもう終わりのはずが、ここのは全盛期という感じで咲いていた。これはいいやと一枚撮る。もう一枚撮ろうかと思ってやめた。デジならここだけでいろんな角度から10枚は撮ってるところだ。
それにしても、フィルムで撮った写真はなんだか昭和っぽい。上の写真も、昭和58年に撮られたものだと言われたらそのまま信じてしまいそうだ。右下あたりに1985.6.29なんてオレンジの日付が入っていても違和感がない。日付の印字というのも今ではほとんどやらなくなった。

入口から入ってすぐの、水の流れがある花壇。「カナール」というらしいのだけど、どこからどこまでがカナールなんだろう。こういう流れる水のある花壇のことをカナールというのだろうか。
右手前には「緑の相談室」がある。常駐している相談員が、緑に関する相談に乗ってくれるそうだ。予約をすると家まで出張してくれるサービスもあるらしい。私は中に入ったことがないからよく分からないけど、花に限らずいろいろな展示会のようなものもおこなわれているんだとか。
花壇の向こうに「花と緑の休憩所」という温室兼レストハウスがある。温室では季節の花々が植えられていて、冬でも花がなくなることがない。フラワーショップ、レストラン、ソフトクリーム売り場などもある。ここのソフトはけっこう美味しいそうだ。レストランのランチは安くてボリュームがあって、味もなかなかとか。メニューも豊富で、1,000円出せばおなかいっぱいになるまで食べられる。
温室の奥には動物ふれあい広場があって、ポニーやウサギ、ヒツジ、シマリスなどがいる。第2、3、4日曜は動物と触れ合えるイベントもあるそうだ。
花のプロムナードでは、バラ園、ハーブ園、見本庭園などが点在していて、芝生広場とアスレチック遊具、ログハウスなんかもあったりする。
近場の人にとっては安上がりな遊び場として子供を遊ばせるには最適の場所だ。大人も花に興味があれば楽しめるし、写真に撮るものも多い。グリーンピアに隣接している池でボート漕ぎもできる。

アジサイも終わりかけながら、まだそこそこ咲いていた。ここは全体的に花が少し遅い気がする。山の近くということで街中よりも気温が低いのだろうか。標高も少し高い。
白いガクにショッキングピンクのスプレーを吹き付けたようなガクアジサイ。ネームレートなどはないから品種名は知りようがないけど、ちょっと珍しい色だった。これは鎌倉でも見なかった。品種改良の途中で不完全になったものを、これはこれで面白いからいいやと思ったのかもしれない。

バラも少しだけ咲き残っていた。このバラはなんという名前だったか。覚えたつもりだったのに忘れてしまった。フィルムはメモ撮りなんて贅沢なことはできない。フィルムで写真を撮るときは、ポケットサイズのコンパクトデジを併用したいところだ。デジタル一眼と両刀遣いはちょっと大げさすぎる。

今の時期の温室にはあまり心惹かれる花が咲いてなくて、その中でちょっといいと思ったのがこれだった。温室育ちだけに暖かい国の園芸品種なんだろうけど、名前の調べはつかなかった。どこかで見た覚えがあるようなないような。

ハナショウブの野生種であるノハナノショウブが池の周りに植えられて咲いていた。水辺に咲く花ではないけど、ハナノショウブも水際がよく似合う。
ノハナノショウブは、ハナショウブに比べると色や花の形もシンプルな分、野性的な美しさがある。これ以上改良しなくても充分きれいだ。

グリーンピアのすぐ近くにある築水池湿地にも寄った。ここの湿地も、春から秋にかけて珍しい花々を咲かせる。今の時期の二大スターは、トキソウとカキランだ。
まずはカキランから。花の色が柿色ということで付けられた名前だけど、実際は黄色とピンクのコントラストが渋くて美しい。遠くで見るよりも近くで見るとその魅力がよく分かる。これでも立派な野生のランだ。
北海道から九州にかけての湿地帯に自生している。野生ランにしてはやや大きめで、50センチ前後の草丈に10個前後の花をつける。近年はだいぶ数を減らしてきているそうだ。

初夏の湿地帯のヒロインはトキソウだ。サギソウが花の形から名づけられたのに対して、トキソウは花の色がトキ(朱鷺)の羽の色に似ているところからきている。そしてトキ同様、絶滅へと向かっているといわれている。ただ、築水池では群生といっていいほどたくさん咲いていて少し安心する。
北海道から四国あたりまでの湿地に咲くランで、園芸用としても花屋で売られている。姿の美しさから盗掘も多い。

あ、人面グモだ。夕方で暗いところにいたから手ぶれしてしまったけど、人の顔っぽさは写った。ひとりで撮りながら笑えた。
これでようやく36枚撮りを撮り終えて、やれやれと思う。たった36枚の道のりが遠かった。デジのメモリが36枚しかなければ、36枚しか撮れないのかと焦るのに、フィルムだとなかなか残り枚数が減っていかない。
デジとフィルムの一番大きな違いは、写真の出来上がりではなく、撮る側の姿勢ということになるのだろう。最初から心構えが全然違ってくる。結果的にそれは写真の出来にも表れる。良い方に出れば気持ちのこもった一枚になるし、悪い方に出れば無難な写真になる。デジなら生まれる冒険心も、フィルムになると影を潜めがちだ。意外性のあるいい写真というのも生まれづらい。フィルムで撮ると一枚を大事にする心は取り戻せるけど、その間にたくさんの写真を失うことにもなる。デジで何気なく撮った写真が帰ってきてPCで見たら思いがけずいい写真だったということもよくあることだ。
最初から分かっていたように、結論としては、フィルムにはフィルムのよさがあり、デジにはデジのよさがあるというところに落ち着く。どちらかが絶対に優位ということはない。時と場所によってどちらが適しているかを見極めて使い分けていくのが一番だ。
ネット注文で現像とCD-R書き込みセットが500円のところを見つけたから、これからはもう少しフィルムの割合を増やしていこうと思っている。多少邪魔くさくても、両刀遣いという手もある。フィルムをメインにしつつデジで補足的に撮っていくことができれば、両方のよさを引き出せるだろう。
フィルムは時代遅れだけど、だからといってもう使う価値のない古い道具というわけではない。流行り廃りとは違うし、過去の遺物と決めつけるのは早い。デジとは違った楽しさがあることも確かだ。デジタルから写真に入った人も、もう一度フィルムを使ってみると、写真を撮るのがもっと好きになるんじゃないだろうか。特にデジタル一眼を使ってる人がフィルム一眼へ戻ってみると、新たな発見もあると思う。
フィルムの銀塩カメラは、案外21世紀を生き延びるかもしれない。
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