現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
知られざる魅惑のレトロ町津島市本町を散策するの巻 <前編>
2008年05月17日 (土) | 編集 |
津島本町1-1

PENTAX K100D+smc Takumar 28mm f3.5



 愛知県南西の津島市にレトロな町並が残っているのことを知ったのは、ほんのつい半月ほど前のことだった。ゴールデンウィークに出かけたい地元の知られざる名所という特集を見て、初めて知ったのだった。これはぜひ行ってみなければならないということで、天王川公園に藤を見に行ったときそちらも散策してきた。むしろ藤よりもそちらの方が主な目的だった。
 今日はそのときの様子を報告したいと思う。写真の枚数が多くなったので、前後編に分けた。前編は家並みと商店などを中心に、後編は神社仏閣や銭湯などの紹介になる。
 主な散策スポットは、天王川公園の東側の下街道エリアと、天王通りを挟んで北側の上街道エリアで、本町筋(ほんまちすじ)と呼ばれる本町1丁目から3丁目にかけてだ。
 このあたりは道が細く曲がりくねっていて、つながりや方角を見失いがちになる。地図をプリントアウトして持っていったにもかかわらず、何度か道に迷った。完全な町並保存地区というわけではなく、観光地でもないから、現地で散策マップが用意されているようなことはない。出かけるときはある程度予習して、地図を持っていった方がよさそうだ。

津島本町1-2

 多少なりとも観光客を意識しているようで、辻にはこんな案内標識も立っている。でも、これだけではよく分からない。散策マップの看板のようなものもない。
 見所は、緩く弧を描きながら南北を貫いている本町筋沿いに多い。でも、それだけでは見逃すものがたくさん出てくるから、やっぱり地図持参で行きたい。
 津島の町は歴史が古く、津島神社の参道として発展し、江戸時代を経て、現在に至っている。津島神社の創建は、公式記録に初登場するのが1175年というから、平安末期の創建なのだろう。かなりの歴史だ。
 鎌倉時代に整備された旧津島上街道は、東国と京都を結ぶ古東海道の一部で、尾張の清洲と伊勢や桑名の中継点だった。佐屋街道から分岐した津島下街道との合流点近くに本町がある。
 戦国時代は、織田家が津島神社を氏神として社殿を整備し、秀吉や秀頼が楼門などを寄進したことでますます発展した。
 江戸時代になると、津島と名古屋城下を結ぶ街道として町家などが立ち並ぶことになる。現在残されている古い町並みは、その頃の名残だ。
 巡見街道とも呼ばれるのは、江戸時代に幕府の巡見使という役人が視察のために訪れていたからだといわれている。
 本町筋が蛇行しているのは、かつてここには天王川が流れていて、その堤防沿いにできた道だったからだ。もう一本あった佐屋川と共に今はもう埋め立てられ、天王川公園の横でせき止められて一部を残すのみとなった。
 明治の濃尾大震災と伊勢湾台風で壊滅的な被害を受けつつも古い町並みが残ったのは幸運だった。伊勢湾台風のときは町が全部水に浸かったという。
 津島駅を出て真っ直ぐ西に向かうと津島神社にぶつかる。その道は天王通りとして整備され、街道沿いは近代的な町並になっている。ほんの一本内に入ると古い町並みが色濃く残っているということは、あまり知られていない。これだけ名古屋市内と近郊を散策している私でも知らなかったくらいだから、一般的な知名度はかなり低そうだ。

津島本町1-5

 中日新聞に載っていた写真はこの場所だ。地図上でいうとどこになるんだったか。たぶん、本町1丁目だったと思うのだけど、ちょっと自信がない。左が津島神社とあるから、天王通りから少し上に入ったところだろうか。
 古い町並みといっても、残っているのはごく一部で、新しい家並みと共存している。昭和の面影も残しているから、そういう部分でも懐かしさを感じる。
 完全に生活圏なので、生きている町を見ることができる興味深さと、観光客として写真を撮っている場違いな自分の居心地の悪さと、両方を感じることになる。このときは平日の夕方ということもあって。

津島本町1-3

 個人商店で頑張っているところがたくさんあって、しかも何を売っている店なのかよく分からないところもある。ここはお茶屋さんだったのか。
 写真を撮ろうとしたら店の中のおばさまが私に向かって手招きをするから何だろうと思って近づくと、私ではなく私の後ろにいた知り合いのおばさまを呼んでいただけだった。ちょっとひるんだ。写真なんか撮るんじゃないと叱られるのかと思った。
 きっと昔から商売をしているところがほとんどだから、近所のおつき合いで成り立っているのだろう。よそ者がわざわざこんな中まで入ってきて何かを買っていくとも思えない。

津島本町1-4

 街道沿いといっても宿場町として発展したところではないから、町屋が多い。残っているのは米商人や綿糸など繊維関係の商家だろう。
 平屋と二階建てが混在し、どの家も格子造りになっている。
 古いながらも大部分は改築するか修理するかで現役の家屋として使われているようだ。表から見える部分は古さを残して、内装は現代風になっているのかもしれない。町並保存への協力姿勢も見られて、エアコンの室外機も格子で目隠ししていたりする。

津島本町1-6

 わっ、すごい、やるな、と思わせる洋服屋さん。洋服屋なんていったら失礼か。呉服屋さんだ。戎(えびす)に徳で、エビトク呉服店とでもいうのだろうか。
 品揃えは私が子供だった時代のものよりも古そうだけど、地元の人御用達の店なのか。お得意さんが着物などを買いに来るというのは充分考えられる。
 これは昭和の面影というよりも、もっと古い時代から続く呉服屋さんだろう。ひょとすると創業は江戸時代かもしれない。
 私が中学生のときに流行った、ちょっと光沢のある薄手のハイネックが今でも売ってそうだ。ドカジャンとかも扱ってるだろうか。

津島本町1-7

 手前が青果店で、右隣は呉服店だったか。手前の看板にある平徳呉服店というのがそれか。
 野菜屋、肉屋、魚屋と、昔はそれそれ専業だった。餅は餅屋というように、専門店で買うのが一番だった。スーパーなんて無粋なものが出てきて面白くなくなった。便利さと引き替えに失ったものは多い。
 本町界隈まではまだスーパーやコンビニが進出してきていないようだから、まだこういう店も商売をやっていけるのだろう。でも、駅前まで行けば、今はもう何でもあるんだろうな。

津島本町1-8

 薬局というか、薬屋さんと呼ぶのがふさわしい店構えだ。店に入ると誰もいなくて、大声でごめんくださいと呼ぶと、奥から白衣を着たじいさんがのんびり出てきたら完璧だ。どんな薬を出されるかちょっと心配だけど。
 ただ、薬局だけはドラッグストアができてよかったなと私は思ってる。矛盾するようだけど、薬やサプリメントなどは面と向かってあれくださいこれくださいとは言いづらいものがあるから。
 でも、こういう薬屋さんも町には必要だとは思う。

津島本町1-9

 糀屋とあるけど、何屋さんか分からなかった。創業安政2年といえば、幕末だ(1855年)。店の中を見ても、どんな商品を扱っているのか様子が知れない。
 帰ってきてから調べたら、糀は「こうじ」、つまり、麹を売る店だった。米麹とかの麹で、日本酒や味噌、しょう油などを作るときに使うあれだ。そんなものを専門に作って売ってる店があるなんて知らなかった。驚いた。そりゃあ、表から商品が見えないはずだ。
 津島の本町は、想像以上にディープな町だった。

津島本町1-10

 中日新聞の販売店までこんなことになっている。これは明らかに偽物風だけど、この町がここまで徹底してるという現れでもある。けっこう感心してしまった。
 これだけ頑張ってるんだったら、もっと宣伝して観光客を呼べばいいのにと、部外者の私などは勝手なことを思う。旧東海道沿いの有松くらいの知名度があっても不思議ではない。多彩な魅力という点では津島の本町もあちらに負けていない。

津島本町1-11

 これまた古典的な床屋さんだ。オレンジ色のビニールシートなどは、昭和も昭和、私が知ってるよりも古い年代の昭和を思わせる。
 ここでお任せしたら、ぺたっとなでつけたような七三分けと後ろは刈り上げられてしまいそうだ。頼めばパーマネントも当ててもらえるだろうか。アイパーとかかけられそう。

津島本町1-12

 すでに閉店して久しい様子の店舗に、くすりと笑いが漏れる。
 袋物って何だろう。巾着袋とかしか思い浮かばないのだけど、世の中には私が知らない袋物の商品がたくさんあるんだろうか。バッグのことか? いや、でもアクセサリーは英語なんだから、バッグならバッグと書くはずだ。ということは、やはり袋物を扱っていたに違いない。和装では一般的なのか。
 おしやれのやも大文字だし。

津島本町1-13

 喫茶店だったことまでは分かるけど、店名までは読み取れない。EMEで始まる喫茶店らしい名前ってなんだろう。EMERALDとかか。詩人のEMERSONの名を冠したとか。
 そういえば、この界隈は飲食店をほとんど見かけなかった気がする。外食の習慣がなくて、みんな家で食べるのか。宿場町とそうじゃないところは店の顔ぶれがずいぶん違うものだとあらためて思った。

 津島本町の前編はここまでだ。明日、後編をお届けします。
 感想や総括は、後編の終わりで。
 つづく。


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