現身日和【うつせみびより】
この世界にはたくさんの美しいものや面白いものがあることを知るための毎日であれば、それは楽しくて幸せなこと。
名東区三大緑地の一つ猪高緑地は演出下手でいい作品になり損ねている
2008年03月19日 (水) | 編集 |
猪高緑地-1

Canon EOS 20D+EF-S 17-85mm IS / EF 75-300mm f4-5.6 IS / TAMRON 90mm f2.8 SP



 名古屋市東部の名東区には3つの大きな緑地がある。そのうちの2つ、牧野ヶ池緑地と明徳緑地はここにちょくちょく登場しているのに、もう1つの猪高緑地(いたかりょくち)はほとんど出てきていない。ブログを調べてみると、2005年の12月に一度出たのが最初で最後だった。2年以上行っていないというのは自分でも驚いた。
 場所は東名名古屋インターの近くなので、家から車で15分と、牧野ヶ池より近所だ。なのにどうしてそんなに行っていないかといえば理由ははっきりしている、写真の撮りどころが少ないからだ。これまでに4度は行っているけど、いつ行っても収穫が少なくて、そのうち足が遠のいてしまった。
 まず花が少ない。だから虫も集まってこない。池には水草なども豊かではないのか、冬場もカモの飛来数が周りの池に比べて極端に少ない。初夏は多少賑やかになるものの、他の緑地ほどでもなく、それ以外の季節は見所があまりないというのがこれまでの猪高緑地に対する私の印象だった。
 それが今回急に行く気になったのは何故だろうと自分自身に問いかけてみたけど、よく分からなかった。ふいに思いついて、久しぶりに行ってみようかと思っただけだ。本当に何もないのか、もう一度確かめてみたいというのもあった。

 表通りの方の駐車場がよく分からないので、いつも名東プールの裏に車をとめている。駐車スペースが10台分くらいあって、散策コースの入り口だから便利というのもある。名東プール側のスペースにとめると夕方5時で閉められてしまうので注意が必要だ。
 上の写真は、この緑地最大のため池の塚ノ杁池だ。夏から秋にかけては水面が見えないほど水草が覆っているけど、冬場はそれも消えてクリアになる。水も悪くなさそうだ。なのにカモたちには人気がなくて、めったに見かけない。近くの牧野ヶ池や明徳池とどこがそんなに違うんだろう。
 ここはブラックバスの池で、バス釣りの人の姿を見かける。バスがエサにしている小魚もいるはずだから、そういうのを狙ってサギなどがいてもよさそうなのに、それも少ない。今日はコサギを1羽見かけただけだった。カワウにさえ見放されているのか。
 遠くの雑木林からは鳥たちの声がさかんにしていたから、鳥はそれなりにいそうだ。

猪高緑地-2

 この池に限らず、この緑地はどこか暗さがある。生き物の気配があまりなく、この空間を包んでいる気が重たい。気のせいかもしれないし、相性がよくないというのもあるかもしれないけど、雰囲気としてやや健全さに欠けるところがある。自然というのはもっと陽気で命に満ちているもののはずなのに、静かというか躍動感がない。歴史的にみて、何かあったところではないのかと勘ぐったりもするけど、私には霊感などない。
 緑地の東部分はもっと開けていて、公園やテニスコート、スポーツセンターなどがあって、そちらのゾーンは明るい。ここは二つの顔を持つ緑地と言えるだろう。

猪高緑地-3

 散策路はきちんと整備されていて、歩く人もそれなりにいるから荒れている印象はない。ただ、名古屋市内であることを忘れさせるワイルドネイチャーで、アップダウンもきつい。ヒールで散歩できるような場所ではなく、ほとんど小山歩きに近いくらいのものがある。雑木林も一歩踏み込むと、そこはジャングルだ。タヌキやキツネが生息しているというのも納得する。今日も茂みの中で鳥よりも大きな何かが動いていた。
 最初にこの緑地を歩いたときは、一番奥で日没を迎えて迷子になった。本気で朝まで出られないんじゃないかと思ったほどで、泣きそうになった。市内の緑地だと思って侮っていると痛い目に遭う。最後はデジカメの液晶モニターの明るさだけを頼りに道を探しながら歩いた。街にもまだまだ闇はあるのだと思い知ったのだった。
 あちこちに人の手は入っているものの、昔ながらの里山の雰囲気を色濃く残している。市内の緑地の中では最もワイルド度が高い。

猪高緑地-4

 畑になっている一角があって、そこには街の空き地や田んぼなどで見かける野草たちが咲いている。実はこういう野草は、山中には少なくて、人の暮らしの近くの方が多い。山の栄養素が少ない土よりも、農作物用の肥沃な土を好む。
 人のいない野生の方が命に満ちていると思うのは勘違いだ。自然の生き物たちも昔から人間と上手く共存して豊かさを獲得してきたという一面がある。だから、里山でも人が入らなくなるとだんだん荒れて自然の命が少なくなっていく。
 今は程良さのバランスが崩れてしまった。昔みたいにはもう戻れないから、今後は自然を作り出すという方向で進めていくしかない。

猪高緑地-5

 オオイヌノフグリは日の出と共に咲き始めて午後にはしぼんでしまう一日花だから、夕方はほとんどの花が閉じてしまっている。わずかに夜更かしのやつが咲いているだけだ。今日は夕方から太陽が隠れてしまったから、咲き残っているやつも普段以上に少なかった。
 人が立っている目線からは小さな青い雑草でしかないものが、しゃがんで近づいてみることで青い宝石に見える。視線を変えることと近づくことの大切さを野草は教えてくれる。この世界も、自分が立つ位置と見る場所によってまったく違って見える。

猪高緑地-6

 春先の地味な野草の代表選手のようなナズナも、近寄ってみれば、両手を一杯に伸ばしてバンザイしてるように一所懸命咲いている。
 ナズナなんていうよりぺんぺん草といったほうが通りがいいだろうけど、ぺんぺん草を見分けられる人も最近では少なくなったのかもしれない。昔の子供は野山や空き地で遊んでいたから、そういうところで見る草や花は多少なりとも知っていた。そういう場所を子供たちから奪ってしまった世代の大人たちの責任は、思っている以上に重い。
 でも、こうやって行くところに行けば、まだまだたくさんの野草が咲いている。そういうのを見せて教えてあげるのも大人の責任だろう。
 地球上のことで知らなくてもいいことなんて何もない。

猪高緑地-7

 彼岸の入りで春本番というのはまだまだ暦の上でのことで、自然の風景はまだ冬色をしている。
 それでも至る所に春の訪れは表れていて、目に見えやすい花という形だけでなく、こうして枯れ枝に新芽がたくさん芽吹いていたりもする。
 冬の色は茶色で、春の色は緑だ。学生の制服の色が変わるように、自然界も4月になれば衣替えをする。気づいたらいつの間にかそうなっているものだけど、その変化の始めを見つけることができたらそれは嬉しいことだ。自分もまた、あらたな気持ちになれる。

猪高緑地-8

 畑ゾーンをあとにして、再び散策に戻る。
 右に曲がって木道の方へ行けば、スポーツセンターなどがある表通りに出る。どうしてここにだけ木道を作ったのかはよく分からない。湿地帯というわけでもないのに。ただの気分か、雰囲気作りか。
 初夏になると、この木道沿いに植えられているアジサイの花が咲く。季節イベントが少ない猪高緑地の中では貴重な花風景となる。

猪高緑地-9

 私は木道の方には行かず、いつも一番奥というか、北西出入り口方面を目指す。
 勢子坊の竹林と名づけられたこの竹は、野生のものなのか人工のものなのか。
 タケノコ盗るな、なんていう立て札もある。そういえばそろそろタケノコの季節だ。新タケノコは美味しいから楽しみにしている。

猪高緑地-10

 井堀分岐近くに、井堀の大クスと名づけられた大きな楠が立っている。名前がつけられているくらいだから特別な木なのだろう。かなり立派で、まだまだ元気がある。もっと大きくなりそうだ。
 長く生きた木には敬意を払いたくなる人間の心理からして、長生きの木には精霊が宿るというのは本当かもしれないと思う。そういう畏敬の念というのも人間には必要なものだ。

猪高緑地-11

 奥の方にも、井堀上池、井堀下池という2つの池がある。
 こちらは更に生き物の気配がない。死んだように静まっている。昔はもっと生き物もいたんだろうけど、今は寒々しい。夏になればもう少し生き生きとするようになるのか。
 近くにめだか池と書かれた小さなため池があった。めだかを放流しているのかもしれない。そういう試みはもっとしてもいい。ホタルが飛び交う里山にするといったようなこともあちこちでやっている。
 せっかく素材としていいものがあるのだから、もっと有効活用できないものだろうか。活動グループの人たちがいろいろやっているにしても、名古屋市民の関心が低いのが問題だ。現状では人を呼ぶ魅力に欠ける。

猪高緑地-12

 北西部分は復元棚田になっている。振り返ると高速道路が通っている場所だけど、ここが猪高緑地の中で一番いい場所だと個人的には思っている。田植えが終わった初夏は、里山の田んぼ風景が広がっていい感じになるのだ。
 ここは個人のものではなく、オーナー制のようになっているんじゃなかったか。体験田植えなどもできるのかもしれない。田植え前の水を張った田んぼでどろんこ大会などをしても面白そうだ。

猪高緑地-13

 そうこうしてるうちに日没時間となった。もう道は分かっているとはいえ、迷子になったときの記憶は消えずに残っていて、帰り道は自然と早足になる。暗くなる前に脱出しなくてはと気持ちが焦る。

 猪高緑地は、歩くにはとてもいい場所だ。街中でこれだけ自然の中を歩ける場所は多くない。広さも適度で、ざっと歩いて1時間くらい、全部歩いても2時間くらいだろう。道は平坦なだけでなく、アップダウンあり、ちょっとした山登りもありと変化に富んでいる。
 写真となると撮りどころが少なくてもあまりおすすめできない。初夏に行けばそこそこ撮るものはあるのだけど。
 個人的には、豊田市自然観察の森くらい手を入れて、生き物いっぱいの森にしたらどうだろうと思う。お金も時間もかかるけど、牧野ヶ池とも明徳緑地とも違うオリジナリティのある緑地にして、もっと市民に親しんでもらうというのは悪くない考えじゃないか。豊田市自然観察の森は、生き物満載であんな楽しいところはめったにない。手つかずの自然を残すよりも、身近にある自然の魅力を分かってもらうことの方が、与えるものは大きい。それが作られたものでもかまわない。
 私の猪高緑地に対する印象は、今回も変わることがなかった。もったいない。面白い原作を演出が下手なばっかりに面白い作品にし損ねた映画を観るようだ。それでも随所に魅力はあるので、捨てがたさは残る。


梅を撮りにいった平和公園で気づけば塔コレクションに夢中
2008年03月06日 (木) | 編集 |
3月の平和公園-1

PENTAX K100D+smc Takumar 50mm f1.4 / smc Takumar 135mm f2.5 / SIGMA 400mm f5.6



 梅は咲いたか桜はまだかいな。3月になれば花が気になってそわそわし始めるのは江戸の昔も今も変わらない。今日、気象庁の桜開花予想が発表された。名古屋は平年並みの3月28日だそうだ。去年は一週間も早かった。今年は寒さがまだ抜けないからもう少し遅くなるかもしれない。
 桜の前にまずは梅だ。今年は大高緑地と天白の農業センターに絞ろうと思っている。情報によると、どちらもまだ満開には早いようだ。それじゃあまず近所の平和公園で偵察しようということでちょっと行ってきた。しかし、まったく咲いていない。1分咲きにもなっていないほどのちらほら咲きで驚いた。ここは市内でも平均的な場所のはずだけど、何か遅れる理由があるのだろうか。
 わずかに咲いていたところを選んで撮ってはみたものの、咲いてる花が少なすぎて本番前の練習にもならなかった。
 梅は被写体としては意外と平凡だから、光と背景を味方につけないといい写真になりづらい。もしくは人などを絡めないと面白みがない。難易度でいうと桜よりも難しい。今年こそという思いも、早々に打ち砕かれそうだ。心の中で何度もつぶやく言葉は、うーん、難しい。分からない。

3月の平和公園-2

 わっと咲いてる木が一本だけあって、それはほぼ満開だった。梅の木にも性格があるのか、先走るやつと乗り遅れるやつがいる。同じ場所で、同じ条件でも木によって咲く時期が違うのが面白い。もともと梅は桜ほど足並みが揃わないやつではある。
 結局、梅を撮りに行って早々に力尽きた。粘ってもいい写真は撮れそうになかったのであきらめて別のものを撮ることにした。まずは南の雑木林を歩いて鳥を探すことにする。その前に車で猫が洞を見てきたけど、あそこは相変わらず鳥がいない池だ。カモの一羽さえ姿が見えなかった。

3月の平和公園-3

 夕方前という時間帯も悪く、今日は風も強くて冷たかったので鳥は少なかった。アオジかシロハラらしきやつが落ち葉の中でゴソゴソしてたけどそれは撮れず、やっと撮れたのはシジュウカラだけだった。ヒヨドリは撮ってもしょうがない。
 鳥の収穫もなしということで、気持ちを夕焼けに切り替える。市民の森を出て、平和堂へ向かう。

3月の平和公園-4

 夕焼けカラスのシルエット。カラスも時と場合によっては絵になることもある。これはもうひとつ。
 夕陽の中に入ったカラスというのは一度撮ってみたい。月の中ならもっとドラマチックだ。

3月の平和公園-5

 平和堂から道路一本隔てた南には母子像が建っている。どういういわれのものかは知らない。有名な彫刻家の作品だろうか。
 普段は特に気にしたこともなかったのだけど、ちょうど夕陽が当たっていてちょっとよかったので撮ってみた。明日への希望といった感じになった。

3月の平和公園-6

 冬の晴れた日、高台にある平和堂に上がると、遠くまでよく見渡せる。今日は特に空気が乾いていて風も強かったから、これまで気づかなかったいろいろなものが見えた。
 名古屋駅のタワー群が見えることは知っていたけど、テレビ塔までこんなにくっきり見えるとは思ってなかった。望遠レンズの圧縮効果で遠近感がおかしくなっているとはいえ、テレビ塔の存在感もなかなかのものだ。
 タワーズ左のスパイラルタワーズは、ここからでは目立たない。右には青く光るルーセントタワーと、その右の高い塔はたぶんNTTの電波塔だと思う。
 背景の山はどこの山だろう。

3月の平和公園-7

 南に視線を移せば、お馴染みの東山スカイタワーが近くに建っている。
 平和公園から東山公園まではほとんど地続きのようなものだから、大きく見えて当然だ。直線距離で2キロちょっとだろうか。
 左に写ってるマンションは特に有名なものではない。でもいいロケーションに建っている。上の階は見晴らしがよさそうだ。

3月の平和公園-8

 こうなったらいろんな塔を全部撮ってやろうと思いついて、北側に回り込んだ。
 当然、瀬戸のデジタルタワーも見えるわけだ。こちら側は木の枝の障害物が多くて思ったところから撮れないのが難点ではあるけど、今の時期なら葉が少ない分まだ撮りやすい。
 あそこはなんで一般公開しなかったのだろう。あれだけの高さがあるんだから、展望台を作ればそれなりの観光資源になっただろうに。建設費や維持費と見学料を天秤に掛けて採算が合わないと判断したんだろうか。

3月の平和公園-9

 尾張旭のスカイワードあさひもしっかり見えた。あそこはこの前の日曜日に登ってきたばかりだ。向こうからこちらは確認できなくても、こちらからはよく見える。横にある天体望遠鏡も確認できる。
 実はこの写真の中にうちも写っているんだけど、それは関係者にしか分からない。
 遠くには雪を被った南アルプスも見えている。これも新鮮な風景だ。うちからは見えない。

3月の平和公園-10

 平和公園内にあるアクアタワー。あそこはまだ上がったことがない。そのうちそのうちと思いながら先送りになっている。休日しか開いてないのと、上がっても下にお墓しか見えないらしいのが積極的になれない理由だ。
 これで名古屋市内と近郊の主だったタワーはほぼ網羅した。あとは東山給水塔くらいだろう。それもここから見えたのかどうか。奥まったところにあって、こちらからは角度的に見えないような気もする。今度明るいときにもう一度探してみよう。

3月の平和公園-11

 塔ということで公園内にある虹の塔も外せない。
 これは登れるたぐいのものではなくて、ただ建っているだけだ。
 何故虹の塔というかといえば、下の写真に答がある。

3月の平和公園-12

 塔の中に入って見上げると、七色の光が見える。だから、虹の塔。七色のステンドグラスがはめ込んであって、光を通して塔の中に虹色が表れるようになっている。
 毎年、春分の日と秋分の日は、虹が降りそそぐように設計されているんだそうだ。見たことがないからどういうことなのかイメージできない。
 春分の日は3月の20日だ。その日は東山給水塔の開放日でもある。猪高配水塔も開放する。まとめて回ってみようか。給水塔では、名古屋の水道水を缶に詰めた名古屋の水が無料進呈されるというのもある。うちの蛇口から出る水が缶に入っただけだけど、価値はあるんだろうか。
 あ、いけない、今調べたら、今年は工事で東山給水塔の開放は中止だそうだ。間違えて行かないように気をつけないと。

 梅撮りの練習のつもりで行った平和公園で、気づけば塔コレクションをしていた。でも、その方がかえって面白かったし、発見もあった。
 この場所は塔撮りには最適の場所だ。望遠レンズと三脚持参で行けば、一ヶ所で全部撮れる。夜景スポットとしても悪くないかもしれない。
 ただし、周りは見渡す限り墓、墓、墓。夜行くのはちょっとどうかとも思う。安全に暖かく夜景を撮るには、東山のスカイタワーがいい。
 梅は、大高緑地と農業センターで試行錯誤しながら撮るしかない。自分の中に完成されたイメージがないから、どう撮っていいかよく分からない。毎年漠然とした写真になってしまう。今年はどうだろう。レンズ選びももう一度考えて、しっかりイメージトレーニングしてから臨もう。満開は、今週末から来週はじめにかけてのようだ。


伊吹おろしの寒風を逃れて駆け込んだ野鳥観察館から鳥までは遠かった
2008年01月30日 (水) | 編集 |
名古屋市野鳥観察館-1

Canon EOS 20D+EF 75-300mm f4-5.6 IS



 鍋田干拓をあとにした我々が次に訪れたのが、稲永公園内にある名古屋市野鳥観察館だった。
 庄内川河口の稲永公園内にそれはある。広く言えば藤前干潟に隣接してるとも言えるかもしれない。私の中の藤前干潟のイメージは、日光川の河口付近で、もう少し西側だと思っている。実際どこからどこまでを藤前干潟としているのかはよく分からないのだけど。
 ここも前に一度行ったことがある。藤前干潟の帰りに寄ったのか、別の日に単独で行ったんだったか。風の強い寒い日だったような覚えがある。この日も強風が吹き荒れていて、とてもじゃないけど屋外での撮影は無理だった。歩いていたら涙が風に吹き飛ばされた。もちろん、感動して泣いていたわけではない。
 早々に野鳥観察館に逃げ込むと、そこはぬくぬくの世界だった。駐車場にとめた車から降りて急速冷凍されて、観察館で急速解凍された。これは体によくない。水分が出てしゃびしゃびになってしまいそうだ。
 観察館の中は暖かくていいのだけど、ここからでは鳥までの距離が遠い。海岸沿いの水辺でも100メートル以上ありそうだし、海の上の鳥は数百メートル先だ。備え付けの双眼鏡で見れば個別に確認できるものの、一眼の望遠ではまるで歯が立たない。デジスコの3000mmでさえアップにならない距離感だ。外から撮っても遠いには遠いけど、写真重視なら表で撮るべきだろう。観察だけなら館内からでも楽しめる。
 観察館の中には1階、2階あわせて30台の望遠鏡が備え付けられていて、自由に使って鳥を見ることができる。館の人も常駐しているから、いろいろ教えてもくれるし、話しかけなければ一人でも見ていられる。野鳥検索用のパソコンや、各種鳥の剥製なども置かれている。
 最近はデジスコセットも置くようになったようで、頼めば使わせてもくれる。KOWA提供のスコープはTSN-664とTSN-884、デジはEX-Z1080があった。自分のSDカードを持っていけば鳥撮りのデータも持ち帰ることができる。
 ここは昭和60年にオープンした施設で、一時閉鎖という話があったとかなかったとか。藤前干潟がラムサール条約に登録されたから、当分は大丈夫だろう。藤前干潟の北にもこういう観察館が必要だと思うけど、今のところ予定はなさそうだ。あちらもまったく歓迎ムードがなくて、名古屋市もまるで力が入っていない。

名古屋市野鳥観察館-2

 このときはちょうど干潮を少し過ぎたくらいの時間帯に当たっていて、観察館の前に大きな干潟ができていた。普段ならここにシギやチドリなどが集まってくるところなのだろうけど、この日は強風だったからか、まったく姿がなかった。ユリカモメなどのカモメたちがうずくまるように座り込んでいるだけで。
 他の鳥たちも全体的に少ない印象だった。カモは、オナガ、マガモ、キンクロ、ヒドリといったあたり、ユリカモメはたくさんいた。普段は群れて飛んでいるというハマシギもこのときは見かけなかった。遠すぎて見えていなかっただけかもしれない。
 猛禽も風が強すぎて飛ばなかった。もう少し早い時間には多少飛んだらしい。鳥撮りとしての収穫はあまりなかった。

名古屋市野鳥観察館-3

 キンクロハジロが少々。東京の淡水にはこいつらが大量にいる。名古屋市内では数が少ない。海で見るとちょっと違和感がある。海水でも大丈夫なんだ。
 風の強さは、この海面の波立ち具合で分かってもらえると思う。岸壁と干潟の間でさえこの状態だった。

名古屋市野鳥観察館-4

 観察館の中の様子はこんなふうになっている。Nikonのスコープが並ぶ。
 日曜の夕方前という時間ではあったけど、わりと訪問者があって、7、8人くらいはいただろうか。入れ替わりでもう少しいたかもしれない。みんなが鳥の人ではないにしても、けっこう楽しんでいたようだ。チビたちも親に連れられてきていた。

名古屋市野鳥観察館-5

 ハマシギの舞いは見られなかった代わりにカモメの飛翔は見られた。ユリカモメだったか、セグロカモメなども混じっていたのか。遠すぎて判別不能。

名古屋市野鳥観察館-6

 これはユリカモメじゃない気がする。セグロカモメのような違うような。カモメの見分けも難しい。
 このあたりで見られるカモメとしては、オオセグロカモメ、カモメ、ウミネコ、コアジサシなどがいるようだ。
 年間を通じて100種類以上、冬のカモはあわせて数万羽になるという。
 名古屋市はここにゴミ焼却場を作ろうとして市民の反対にあって断念したという経緯がある。そのとき藤前干潟が注目を集めることになった。それまで市民の大部分は名古屋に野鳥の楽園の干潟があるなんて知らなかったに違いない。結果的にそれがゴミの分別につながっていくのだけど、ここは残されてよかった。全国的に干潟というのもが消えていく中で、わずかでも残していくことに価値はある。

名古屋市野鳥観察館-7

 周辺は典型的な工場地帯で、港の風景が広がっている。名古屋港も埋め立てに次ぐ埋め立てで、自然の海岸線などはほとんど残っていないだろう。
 去年が名古屋港開港100周年だった。100年前とはもはや比ぶべくもなく、ここ20年、30年でも大きく様変わりしているのだと思う。金城ふ頭ができたのが1990年と、まだそんなに昔のことじゃない。
 観光地化することには失敗した。名古屋港水族館やイタリア村だけでは弱い。場所的にどん詰まりに位置していて、他の場所との連絡が悪いのもよくなかった。おそらく、今後とも劇的な発展は望めないだろう。

名古屋市野鳥観察館-8

 藤前干潟は、野鳥観察館から見てちょうど正面右手あたりになる。見えている橋が日光川大橋だろうか。だとすれば、その右側には日光川公園とサンビーチ日光川があるはずだ。
 藤前干潟の方に公共交通機関で行くのは難しい。サンビーチ日光川行きのバスがオールシーズンあるのかどうか。名古屋市野鳥観察館は、あおなみ線が開通して行きやすくなった。野跡駅(のせきえき)を降りて10分も歩かない。車なら駐車場も無料だ。
 このあたりの地名は読みが難しい。野跡は「のせき」と読ませているようだけど、もともとは「のぜき」と濁っていたようだ。稲永の「いなえ」も地名は「いなえい」だからややこしい。

名古屋市野鳥観察館-9

 冬は遠くの景色が本当によく見える。夏場は遠くの山がこれほどくっきりは見えないはずだ。
 ここで吹いていた強風は、この地方特有の伊吹おろしというやつだろうか。見えている山が伊吹山ではないにしても、あっちから吹いてくる風だ。
 冬の富士山も撮りに行きたいところだけど、名古屋からだと近いようで遠い。

名古屋市野鳥観察館-10

 観察館は夕方4時半まで(月曜定休)。日没が近づいたところでぼちぼち帰ることにする。
 防風林も風よけにどれくらい役に立っているのか。なければもっと風が強くなっているのだろうけど。

 ここのベストシーズンは、やはり冬だ。渡りの鳥たちで賑やかになる季節だから。しかし、寒さが強敵になるので、なるべく穏やかな冬晴れの日を選びたい。
 時間は午前の方がいい。というのも、観察館が真西を向いてるから、午後からは逆光になってしまう。それと、当然、干潮時の方が楽しみが多い。満潮のときはただの海だ。
 飲食施設は一切ないからお弁当持参で行きたいところだけど、観察館の中は飲食禁止になっている。隣に建っている稲永ビジターセンターというのも学習施設というからお弁当スポットではないだろう。暖かい日なら、観察館の前の芝生に座って海と鳥を見ながらランチというのもよさそうだ。
 写真に関しては、デジスコじゃないと厳しい。一眼の望遠では限界がある。ここの鳥は人に慣れてなくて、少しでも距離を詰めるとさりげなく逃げていくし。
 次は春の渡りシーズンあたりで行けたらいいなと思っている。


トラフズクに会いに行った庄内緑地でフクロウと出会ってびっくり
2008年01月28日 (月) | 編集 |
庄内緑地風景-1

Canon EOS 20D+EF 75-300mm f4-5.6 IS / EF-S 17-85mm f4-5.6 IS



 2月の庄内緑地といえば、お馴染みになりつつあるのがトラフズクだ。3回目の今年もトラを求めてツレと共に出向いていった。
 しかし、残念ながらトラフズクとの出会いはならなかった。その代わり、フクロウを見られたのは大収穫だった。
 そのあたりを含めて庄内緑地レポートをしたいところなのだけど、もう眠たくて力が残っていない。今も何を書いているのか、半分ハラヒレホロ状態なので、今日のところは写真だけ並べて終わりとしたい。明日、コメントを書き加えることにする。写真だけならなんとかやれそうだ。

 と、ここで昨日はダウンした。今日はその続きを書いていこう。

庄内緑地風景-2

 庄内緑地は、名古屋の北西の端っこにあって、名古屋駅のちょうど北に位置している。だから、高層ビル群がおっと思うほど近くに大きく見える。夜に訪れたことはないけど、公園周囲の土手から見る名古屋駅方面というのはなかなかよさそうだ。
 都市公園では近年、ユリカモメが数を増やしている。名古屋でも知らない間に多くなった。一昔前までカモメなど海のものという思い込みがあって、初めて公園でユリカモメを見たときは何かの間違いかと思った。今では当たり前の風景として見ている。
 エサをやるとギャーギャーうるさく騒いで取り合いをするユリカモメも、ここでは餌付けされていないようで、人を見ても無反応だった。みんな寒そうに固まって体を丸めていた。

庄内緑地風景-3

 ここのところ名古屋も冷えている。確か5日連続で氷点下まで下がったと言っていた。
 この日も冷たい朝で、庄内緑地の池も氷が張ってた。久しぶりに池が凍っているのを見た。近年は温暖化で池も氷を張らなくなっていたのに。
 日陰の芝地では霜柱ができていて、歩くとザクザク音がするあの経験も久々に味わった。寒さゆえの風情や情緒というのもある。

庄内緑地風景-4

 渡りのカモたちもそれなりにいる。マガモ、オナガ、ヒドリガモなどが中心で、特に珍しいやつは見かけなかった。
 ここは鳥までの距離が遠いところなので、300mmの望遠レンズ(480mm換算)ではまるで届かない。フォーサーズ規格の600mm換算でも物足りないくらいだから、ここで鳥撮りを仕様と思えばデジスコに走るしかない。実際、鳥の人のほとんどがデジスコ組だった。
 鳥の種類は豊富で、名古屋市内では屈指の鳥スポットとなっている。

庄内緑地風景-5

 ここはカワセミ確率の高いところで、この日もしっかり見ることができた。鳥の人たちはみんなカワセミ好きだから、自力で探さなくても鳥の人が集まっているところへ行けば、たいていカワセミがいる。
 このときは自力でも見つけたし、鳥の人にも教えてもらった。二度目は、金属の手すりの珍しいところにとまった。池の上を人が歩いてもわりと平気だ。カワセミはいったんとまるとじっとしているから撮るのはやさしい。それほど警戒心が強い方ではない。

庄内緑地風景-6

 更に近づいても逃げることはなかった。4、5人がデジスコのスコープで狙っていても動じないところをみると、かなり人に慣れている。もちろん、近づきすぎれば猛スピードで飛んで逃げてしまうのだけど。
 カワセミの魚キャッチシーンとホバリングをいつか撮れる日が来るだろうか。

庄内緑地風景-7

 今回の目的は、トラフズクに会いにいくことだった。ネットではまったく情報が出てこなくて、今年はまだ来てないのだろうかと思いつつ行ってみた。自力での発見はほとんど不可能なので、デジスコを持った鳥の人に訊いてみたところ、いるにはいるけど奥に引っ込んでいてなかなか出てこないとのことだった。その代わりフクロウがいるという。それはぜひ見たいものだ。
 いつもいるポイントを教えてもらって行ってみると、鳥のお仲間が3人ほど集まっていた。訊ねてみると、さっきまでいたのにどこかへ飛んでいってしまったらしい。しばらく待っても戻ってこないので、いったん離れることにした。
 しばらくしてもう一度行ってみると、さっきの人たちが上を見上げている。どうやら戻ってきたらしい。私たちもいる場所を教えてもらって撮ることができた。運がいいことに、ほぼ全身が見える位置にとまってくれた。風が強くて枝と葉がワサワサ揺れる中、なんとか顔まで撮れたのがこの一枚だ。
 残念ながら目は開かなかったものの、ここまではっきりと野生のフクロウを見ることができたのは感動だった。花鳥園でも見てはいるけど、天然ものはありがたみが違う。
 しかし、まさか名古屋市内の公園にフクロウがいるとは思ってもみない。その事実にむしろ驚いた。いるところにいるもんだ。
 鳥の人はみなさん親切で教えたがり屋さんが多いから、思い切って訊ねてみるのがいい。
 ふと周りを見渡すと10人以上のギャラリーが集まってきていた。けっこうな騒ぎになっているのに、フクロウは知ってか知らずか眠り続けていた。

庄内緑地風景-8

 ツレが作ってくれたロールケーキ。紆余曲折を経て、この完成型で落ち着いた。制作を試みた名古屋ロールは完成品に至らず、幻となった。
 ジャムバージョンも申し分なく美味しかったけど、いつか幻の名古屋ロールを食べてみたい。

庄内緑地風景-9

 日差しは暖かいけど、風は冷たい一日で、ときどき猛烈に寒かった。
 それでも子供たちは全然平気で、サッカーなどをしていた。
 もう菜の花も咲き始めている。いよいよ春は近い。

庄内緑地風景-10

 春の花と思われているタンポポも、1月にはもう咲き始めてくる。今年は例年より早いようだけど、狂い咲きというほどもでもない。花も春を待ちきれないのだろう。

庄内緑地風景-11

 あ、オオイヌノフグリ。これも今年は早い。2月くらいになればどこかで咲いてないかと探すものだけど、1月の終わりにもう咲いてきているとはちょっと意表を突かれた。思っている以上に季節の歩みは早い。
 冬来たりなば春遠からじ。年を越すことを新春という。一年で一番寒い大寒も過ぎて、初春はすぐそこまで来ている。2月4日はもう立春だ。

 今回の庄内緑地も、なかなか収穫の多い訪問となった。いつも言うように、ここの駐車場が無料ならもっと頻繁に訪れているのにと思う。半日も過ごしたらけっこう高価な娯楽施設になってしまう。有料にするにしても、30分まで無料で、1日500円とかでいいじゃないか。なんでこんなところで儲けようとするんだ、名古屋市。
 まあそれはともかくとして、一つ心残りは、やはりトラフズクに会えなかったことだ。3年連続とはならなかった。今シーズン中にもう一度くらいチャンスがあるだろうか。現れたという確実な情報が出てくれば、そのときはまた行ってみたいと思っている。中日新聞に載れば確実なのだけど。
 近所の方はぜひ、フクロウを見に行ってみてください。




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